第12話
不思議な現象が起きているのはたしかだ。
けどそれが何なのかわからない。
ミラネルは顎に当てていた手を戻し俺達に言った。
「ここで考えてても仕方ないか。どうだろう、森で迷った者同士この森から出るまで手を組まないか?」
たしかにこのまま二人で歩いていてもラチがあかない。
それだったら一緒に行動してこの状況を打開する方法を探ったほうが早くここから出られる気がする。
「そうだな。俺達もどうしようか途方にくれてたし協力するよ。いいか?レティーナ」
「はい! 私達だけじゃ魔物が出たとき少し心細かったので」
「まぁ、魔術師二人ではな。よし! とりあえず進みながら考えようじゃないか」
俺達はミラネルさんを加え3人で森を進み始めた。
「そういえばまだお前達の行きたい場所を聞いてなかったな」
「あぁ俺達はこの先にあるマナの木を目指しているんだ」
「なんだお前達もマナの木へ行こうとしていたのか。実はあたしも丁度この先のマナの木の様子を見てくるように言われて王都から来たんだ」
この人も俺達と同じ場所を目指しているのか。
まぁ世界樹とマナの木を管理する人たちっていってたから当然か。
俺がミラネルの顔を見ると深刻そうな顔をしていた。
「ミラネル? どうかしたのか?」
俺が呼びかけると。
「あぁいやなんでもない。それよりもお前達は何しにマナの木へ行くんだ? 本来一般人が行くような場所じゃないぞあそこは」
そう聞かれ俺は返答に困った。
急に俺達は世界を救うために行く言っても信じてもらえないだろう。
それどころか、変に怪しまれてしまうかもしれない。
そんなことを思っていると急にレティーナが。
「バルトさんがマナを生み出せるすごい魔術を使えるんです! それでこの世界を救えるかも知れないって思って、私が世界を救うために何をすべきか占ったところ、
この先にあるマナの木が映ったので今向かっているところなんです」
レティーナがすべて話してしまった。
一方のミラネルは最初こそ『何を言っているんだ? こいつ』見たいな目で見ていたが最終的に話に興味を持ち俺に話しかけてきた。
「レティーナの言ってることは本当なのか? バルト」
「はい。間違いない……です」
「もしその話が本当ならおおごとだ。今まさに世界がマナ不足を解消する術を欲している。もちろん我々ユグドラシルもだ。
もしバルトさえよければ今ここでそれを見せてもらえないか? 信じていないわけではないがこの目で実際に確認しておきたい」
やっぱりそう言われるとおもったよ。
正直まだあのスキルに関しては未知数なことが多すぎて簡単に使えないんだよなぁ。
またあの村みたいに蔓があちこちに伸びて森を破壊しないとも限らないし。
それにこのスキルが危険だと判断されたら、この先マナの木へ行くこともできなくなるかも知れないし。
俺が弱気なことを考えていると。
「バルトさん大丈夫です!! 落ち着いてゆっくりやればきっとうまく行きます!!」
レティーナからの期待に満ちた熱い眼差し。
何の根拠があるんだろうか。
おそらくない。
しかしこのままそんなことできないと言っても、余計に俺等が怪しくなるだけだ。
まぁ、種を1つだけにして水も数滴にすればそんなに激しく成長はしないだろう。
「わかった。やってみる」
俺は意を決しポケットに入れていたトマトの種を取り出すと地面に落とす。
「種か?これは」
不思議そうに俺の落とした種を見つめるミラネル。
「少し危ないので下がって」
「わかった」
万が一調整をミスった時に備えレティーナとミラネルを種から離す。
レティーナは村でどのくらい成長したか知っているので言う前から数メートル離れていた。
俺は両手を種の上にかざし数滴の水を落とすイメージで念じた。
すると両手がじんわりと熱くなり一滴の水が種に落ちた。
よし! 水のコントロールはできた! あとは良い感じに育ってくれれば。
そうおもい待ったが種はまったく何も反応しなかった。
遠くで見ていたミラネルが険しい表情で。
「もう終わりか?」
あきらかに怒っている。
俺は声を上ずらせながら。
「そ、そんなわけないだろ! ここからよ! ここから」
さっきのは水の量が足りなかったんだ。
少し危険だけど村で出した時くらいの感じで」
再び両手をかざし水を出す。
湧き水のように水が流れ種へとあたっている。
このあとすぐ種が光ってたくさん蔓が出て……こない。
いくらまっても種は発芽すらしない。
そのあとも何度か両手から湧き水を出してかけたが、種はビクともしなかった。
「そ……そんなはずは」
俺がスキルの不発に絶望していると、ミラネルがこっちに歩いてきた。
やばいキレられる。
そうおもったが肩をポンと叩かれ笑いながら言った。
「だと思ったよ。そんなすごい魔術を使えるならとっくにユグドラシルが、情報を掴んでいるはずだしな」
「いや、本当に俺は」
俺が反論しようとするとミラネルが真剣な目で俺を見て言った。
「悪いけどそんな茶番に付き合うほどあたしも暇じゃないんだよ。もし次しょーもないことで時間使わせたらさすがのあたしでも怒るよ」
この世界に来て本気で怖いと思った。
次、変なことしたらまじで俺死ぬかもしれない。
俺がミラネルさんの怖さにびびっているとレティーナが走ってきて。
「大丈夫ですか? バルトさん。私が余計なこと言ったせいで」
「いや大丈夫」
本当は大丈夫ではないが、実際スキルが不発になったのは俺の責任だ。
実際にスキルは発動すると思って本気でやったわけだし。
こんな変な森でこんなことさせられて怖い目に会うなんて俺はついてな……。
俺の中で何かが閃いたような気がした。
そもそも俺のスキルが発動しなかったこの場所が変なんだ。
もし俺の仮説が正しければこの森を突破する鍵になるかもしれない。
「レティーナちょっと聞いてくれ」
「どうしたんですか? バルトさん」
俺はレティーナに耳打ちをする。
ミラネルはちょっと先の方から。
「おーいお前等早く進むぞ!」
と呼んでいる。
レティーナにすべて伝えると。
「ミラネルちょっと待ってくれ!」
「なんだ? もしまた変なことだったら」
「いや1つ確かめたいことがあるんだ」
「確かめたいこと?」
「レティーナやってくれ!」
俺がそういうとレティーナは道の脇にある木へ両手をかざしこう唱える。
「疾風よ! その鋭利な刃で標的を切り裂け!! ウインドスラッシュ!!」
だがレティーナの両手からは風の刃はでなかった。
「あれ? どうして?」
撃ったレティーナ自身も戸惑っている。
ミラネルは険しい表情でこういった。
「さっきも言ったはずだ! くだらないことで時間は使ってられないって」
「まぁまぁ怒るなよ。ミラネルこの森に入って魔術は使ったか?」
「いやあたしはほとんど魔術は使えない回復魔術なら少しなら使えるが」
「回復魔術は傷ついた者にしか使えないのか?」
「いや魔術自体は使える。ただ傷はないから少し体力が戻るくらいだが、それがどうかしたのか?」
怪訝そうに見つめるミラネルに俺はこういった。
「レティーナに回復魔術をうってみてくれ」
「何故そんなことを?」
「いいから早く」
「我が母なる地母神マーテルよ。彼の者に癒しと慈悲を与えたまえ! ヒーリング!!」
ミラネルがレティーナに両手をかざし回復魔術を唱えたが一見何もおきていない。
「やっぱりか」
俺が納得するようにうなづくと。
「何がやっぱりなんだ? こんなの魔術の不発だろ」
「レティーナ。ここ最近で魔術を失敗したことあるか?」
「え? いえ昔はよく失敗していましたけど最近はないですね」
「たまたま失敗したかもしれないじゃないか!」
「レティーナもう何回か頼めるか?」
「はい。やってみます」
そのあと何度も唱えてみるがまったく魔術は発動しない。
風以外の魔術も試したがどれも不発に終わった。
「ただのマナ切れじゃないのか?」
まだ疑っているミラネルに俺は言う。
「俺達はこの森に入ってからさっきまで一度も魔術を使っていない。マナが切れるはずがないんだ」
「ってことはまさか……」
ミラネルもようやく気づいたようだ。
「ああ、この森では魔術が使えなくなっている」
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