念願の異世界転生をしたのに、3日後に世界滅びるってマジ

@gagagaman

第1話 

「残念じゃが綾川瞬。おぬしは今しがた死んでしまったのじゃ」

「え?」

突然そんなことを言われ俺は困惑していた。

真っ白な空間に座る俺の前に、白黒のバイカラーでひらひらのついた服を着た幼女が立っていた。

膝あたりまで伸びた栗色のロングヘアーに、透き通るような蒼い瞳。

そして俺が座ってもほとんど顔を見上げる必要のないくらい小さな背丈。

おそらく1メートルあるかないかくらいだと思う。


俺は威厳もへったくれもない幼女の頭を撫でながらこういった。


「お譲ちゃん。なんのコスプレか知らないけど初めて会う人にいきなり死んだとか言っちゃだめだよ」

すると幼女は頬を膨らませ俺の手を叩き落とし、顔を真っ赤にして大声で言った。

「誰がお譲ちゃんじゃ!! おぬしのような小童に子供扱いされとうないわ!」


突然叫んだからなのか幼女の息があがっている。


「まぁまぁ落ち着いて。ほら飴ちゃんあげるからさ」

幼女は俺の言葉に再び憤慨したのかまたもや叫んだ。

「だ・か・ら! わたしを子供扱いするななのじゃ!?」


さすがに疲れたのか肩で息をしながら小さくこういった。

「はぁ~今までたくさんの人間を見てきたが、おぬしのみたいにいきなり失礼を働く小童は初めてじゃ」

「まさか俺、褒められた!?」

「褒めておらん!!」


先ほどまで顔を真っ赤にして怒っていたエリルだが、落ち着こうとしているのか一つ大きな深呼吸をして話し始める。

「さて、おぬしのせいで話が脱線してしまったが本題に戻るのじゃ。私の名前はエリル。ここで死んだ人間達が転生できるか冥界へ旅立つかを選定しておる選択の女神じゃ」

「女神ってよくゲームとかで、不思議な力とかくれるナイスバディな人のことだろ?」

「かなり偏見が強いようじゃが……概ねその通りじゃ」

「君がその女神?とてもそんな風には見えないけど」


俺がエリルの身体をまじまじと見ながら答えると。


「どこを見て言っておるんじゃ!! スタイルがいいから女神というわけじゃないのじゃ!!」

「そうなのか。まぁ100歩譲って君が女神だとしても、俺が死んだって言うのは理解できないんだけど」

「無理もないのじゃ。おぬしは1週間もの間ろくに睡眠も取らずゲームをし続け、死んだように眠りにつきそのまま息を引き取ったのじゃからな」


両目を閉じ両手を組みながらうなずくエリル。


俺は自分の死因を聞いてますます信じられずにこういった。

「いやいやたしかに俺は大学の講義もそっちのけで、新作の【ファンタジークロニクル】をやってたけどさ。そんな簡単に人間は死なないでしょ?」

「どうしても認めたくないのはわかるのじゃが、すべて事実じゃ。過度な睡眠不足に偏った食事そして長時間に及ぶ同じ体勢でのプレイで、おぬしの身体はボロボロじゃった。

そしておぬしが眠りにつき意識を失っている間に、どこかの血管が詰まってしまったんじゃ。そしておぬし自身も気づかないうちに死んでしまったのじゃ」


理由を聞くととてもアホらしい死までの経緯だ。

たしかにファンクロをしてる最中、途中で何度も睡魔に襲われていた。

だが最後の2日くらいは覚醒したかのごとく睡魔が消え去っていて、不思議と自分はどこまででもプレイできる気がするほどだった。

けれどゲームでやれることをすべて終わらせた瞬間、今まで味わったことがないくらいの睡魔に襲われた。

俺はそのあと倒れるように意識を失ったのだと思う。

だとしたらこのエリルという自称女神が、言うことも間違ってないのかも知れないと俺は思った。


「まだ信じられないけどとりあえず夢かもしれないし」

俺はそういうと自分の頬をつねる。

「いででででで!痛みがある夢じゃないのか」

「ほらじゃからいったじゃろ。本当じゃと--っていたたたたたたたた!!」

俺はドヤ顔するエリルの頬をつねった。

エリルはつねる俺の手を払い、バックステップを踏むと大声で言った。

「なんてことするんじゃ!! わたしの柔肌をつねりおって」

「いや本当に夢じゃないんかなぁって気になって一応」

「おぬし自身の痛みだけでがまんせい!! わたしを巻き込まないでほしいのじゃ!!」



「まったく……ここまで話を通すのに苦労するのは初めてじゃ」

エリルは心底呆れたように言った。

「俺が死んだのはわかったけど、その女神様が俺を転生させてくれるのか?」

「まだ転生できるとは言っておらん!! 今からおぬしが転生できるかどうか、前世での徳の量を計って決めるのじゃ」

「おー!やっと女神っぽい発言。まかせてよ。俺はいろんな世界を救ってきたんだから、徳も相当積んでるはずだから」

「ほぅ、ならばさっそく計ってみるのじゃ」


そういうとエリルの手が光りその中から1枚のコインが出てきた。


「このコインを数秒握れば、徳の量だけコインの枚数が増えるはずじゃ」

「マジで!? そんなマジックみたいなことが本当に?」

「最近の人間は疑い深くて困るのじゃ。騙されたと思ってとりあえず持ってみい」

そう言われ俺はそのコインを受け取った。

コインにはエリルの服と同じ白と黒の色で半分ずつ分かれていた。そこには黒色にドクロ白色に天使の輪のようなマークが描かれている。

「こんなコイン初めてみた」

「当たり前じゃろ。選択の女神だけが出すことのできるコインなんじゃからな」


そういうとエリルはさらに両手を器のように合わせると、その上に小さな天秤が現れた。

「これは増えたコインを乗せ徳を計り、おぬしが転生するに値するかを計る物じゃ」

エリルは現れた天秤を足元に置き、胡坐をかいて俺の目の前に座る。

「ほれ、はよ徳を計るのじゃ」

「わかってるよ」

俺は右手に持ったコインに力を込め握る。

すると蒼白い光が右手から発せられすぐに消えた。

「な! なんだ今の!?」

「今のがおぬしの徳じゃ。さぁ握った手を開いてみるのじゃ」

「あのその前に一つ質問なんだけど、今感覚的にどうも増えてる感じがしないんだけど大丈夫なの?」

「その辺は心配ないのじゃ。増える場合は手を開いたあとにコインが増え始めるから、今は感触が変わってないだけなのじゃ」

「なるほど」


どうやら今の状態ではコインが増えたかを確認するのは無理らしい。

まぁ俺はこれまでいろいろ徳を積んできたから、さぞかしたくさんコインが増えて片手で収まりきれなくなるに違いない。

いでよ!! 俺の徳コイン達!!!


俺はそういって握っていた手を開いた。


「ん?」

俺が拳を開くと中には黒色の部分だけ残った半分のコインが残っていた。

「1枚握ったはずなのに半分?」

いやいやたとえ拳に残ったコインが半分でも、これからジャラジャラとコインが湧き出るに違いない。

そう思って増えるのを待つが、数秒経ってもウンともスンともならない。

「あのーエリスさん? 」

「なんじゃ? 」

「これってコインが増えるまでに結構時間かかったりします? 」

「いやコインは基本開いた瞬間に増えるはずじゃ。ましてや握った1枚のコインが、半分になってるのなんて初めて見たのじゃ」

エリルは物珍しそうに俺のコインを見つめる。

「じゃあこれってこのまま乗せないといけない感じ? 」

「まぁそうじゃな。増える気配もないし乗せるしかないのぅ」

「あと5分待ってもらえたり? 」

「残念じゃが次の人間も控えておるから、ほれはよ天秤に置くのじゃ」

俺は渋々手の平に乗っているコインを、天秤の上に乗せる。

コインは半分になってたけど、俺は結構徳を積んで来てるからな。

エリルも今まで見たことないって言っている。

それにもしかしたら半分だけど、それだけですごく徳が含まれているのかもしれんしな。

まだ転生できないと決まったわけじゃ--

そう思っているとコインを乗せた方の皿が上がり、何も乗っていない方の皿が沈んだ。

そして目の前のエリスが気まずそうにこういった。

「正直言いにくいことじゃが、おぬしの徳は転生できる量にまったく足りてないのじゃ」

俺はその言葉を聴いてフリーズした。

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