Episode:04-3 Please Please Me
夜の20時。
女性二人はソファや床に寝そべってテレビを見ている。
『ヒューイニュースのお時間です。明日の天気、13時21分52秒から雨が降り始めるでしょう。傘の用意をしたほうが良いですね』
その情報だけを受け取ると
『今夜のオールナイトフガクは!』
『マイマイ運送マイマイ~遅くとも~確実正確安全に! 0123~』
『来週の機動騎士アルビオンは~?』
いつもは綺麗で凛々しい
そんな第一印象を破壊するほど、今のだらけた姿は衝撃的だった。
「二人共、風呂沸いたぞ」
「先に入ってていいわよ。仁義なき闘争見てるから」
――女の子ってもっと真面目でキラキラした一日過ごしてると思ってたけど、実態はこうだもんな……。
そんな事を考えていると、エデン本部から
それは仙台国際タワーで大量の死者が出るAクラスの知らせだった。
「18分後、か。こりゃまた随分と急だ。しかも仙台って……」
髪をクシャクシャにしながら了承した。
そして、だらけている二人に呼びかける。
「二人共、本部から
その言葉を受けて、二人はすぐに支度を済ませた。
「仙台ってここからだと500km以上ありますよ?」
『問題ない。
所長は軽く答える。
「しかし、この距離の
それは文字通り一瞬で目的の座標まで飛ぶ
しかし、長距離の
『そこで彼女のもう一つの
その力には思わず
「すごいな……」
『時間がない、現場に急いでくれ!』
残り15分。
「皆、掴まってて!」
「あっ、どこ触ってんの。別にいーけど」
その言葉に
「むーーーーー」
慌てて
「誤解、誤解、今は仕事!」
「行くよ……3、2、1、ゴーアヘーッド!」
凄いスピードで走り出し、
電流や火花が
そして、激しい閃光と共に彼らは姿を消した。
後には2本の蒼炎のラインのみが残された。
仙台のケヤキ並木に、閃光が三回生じる。
三回目の閃光と同時に、三人の少年少女が猛スピードで現れた。
周りにいた通行人はその三人に釘付けになる。
「また爆弾解除か……」
――Aクラス……そうだ、以前の事件と同じくらいの死傷者数……。
――なら、どうしてあのビルは真っ暗なんだ?
そう、仙台国際タワーは大量の死者が出るとは思えないくらい、窓明かりもない状態だった。
「HQ、HQ、こちらスタービジョン2号、応答願う!」
『こちら司令室。どうした』
「妙だ、予知で出た映像を出してくれ」
所長は疑問を抱いたまま
仙台国際タワーから黒煙と炎を上げて崩れていく光景だ。
『本当にこんなのを見て意味があるんですか?』
その映像に副長は疑問を投げかける。
「待て、止めて。少し戻して、そこ」
『これですか?これが何か?』
副長は聞く。
何の変哲もない爆発。
「爆発の部分を拡大して」
『これは一体……!』
「……この破片は日帝ジェットフライトの機体だ」
「予知の場所はたしかに仙台国際タワーだ。でも……違う、これは、航空機の自爆テロだ!」
唖然とする本部のオペレーター達。
「この航路を辿る飛行機を絞り込む。それから、ここまでの距離、速力、予知時間の情報から便を割り出す」
監視衛星に接続し、最終確認。
「あった、NJF228便……機体は、超音速旅客機ジェットアローだ」
既にその機体は仙台へと向かっていた。
「今から正確な座標とタイミングを送る、わずかでもズレたら機体にめり込むか太平洋に真っ逆さまだ。頼むぞ」
「うん、飛ぶよ……3、2、1、テイクオフ!」
再び
月夜、雲海の上を飛ぶ超音速旅客機ジェットアロー。
ジェットアローの赤い航行灯が点滅する。
かつて経済的に失敗した超音速旅客機の反省を踏まえて開発された機体。
ダブルデルタ翼、主翼下にターボジェットエンジンを四基搭載、成層圏をマッハ2で空を飛び、新千歳空港から仙台空港を40分で結ぶという。
客席は横四列でファーストクラス並のものが用意されており、機内のおもてなしも一級品だ。
機内は緊張に包まれていた。
円錐形に尖った頭巾に、長いローブの全身黒ずくめの人が数名。
彼らは皆、ソ連の自動小銃で武装をしている。
客席の中央の通路に閃光が三回生じ、三人の少年少女が現れた。
「へぇ、随分と危機的状況のようね」
目の前には武装した黒ずくめ数名。
「アレ、アレをやらなきゃ!」
「えっ、本当にやるの……?」
「彼が言うなら仕方ないじゃない。ま、あーしは全然おけまるーだけど!」
周囲が月夜の採石場に変化した。
「今宵の満月、星の見ゆる空の上」
「愛と絆を貫いて、正義の光がこの世を照らす!」
「特務
二人が手をつなぐと、崖の上から飛び降りて決めポーズをとった。
すると、背景に七色の爆発が発生した。
「って、なんなのよこの戦隊モノの登場と魔法少女モノを悪魔合体したようなバンクシーンは!」
「やっぱりこういうのは必要だなって思ってさ、カラオケで練習したかいがあったね」
その後、すぐに真顔に戻った。
今は敵地の中だ。
「
「む、無茶苦茶な……了解!」
「おい、ケツから脳みそぶちまけたくなけりゃ大人しくしとけ、クソガキ」
目の前の大柄な黒ずくめがライフルを構える。
狙いは
「それはこっちのセリフだ!」
それは引き金を引くよりも早く、ライフルに直撃した。
その正体はヨーヨー。
しかし、
電磁力で糸のように操ったのだ。
「これがコイツの作った電磁ヨーヨーよ。さ、どっからでもかかってきなさい、テロリスト共」
「こ、このクソッタレがぁぁぁぁぁ!」
ライフルを吹き飛ばされた黒ずくめは怒りで我を失って
「PKフォワード・パス!」
黒ずくめは大柄なのにも関わらず酷く
「言い忘れてたけど、これ鉛製だから、当たるとちょーっと痛いわよ!」
集まってきた黒ずくめたちは、その姿に怖じ気づいた様子だ。
しかし、幹部らしき者が鼓舞した。
「
アサルトライフルを一斉に構え、
狭い機内の中、引き金を引いて、不可避の銃弾が彼女を襲った。
「PKループ・ザ・ループ!」
勢いを殺された銃弾は潰れたままその場に落ちた。
「PK犬の散歩!」
地面にヨーヨーを転がし、それが次々と周りの射手を転ばせていく。
「ば、ばかな……」
黒ずくめの幹部は
「短距離の縮地なら使えるってね!」
そのさなか、
そして、耳元でドスの利いた声で黒ずくめに言った。
「その粗末なものを仕舞いな。そんな脅しが通用するのは映画のロス市警だけよ」
黒ずくめは圧倒的な力の差の前に、アサルトライフルを取り落とした。
「バカな……我々はクゥルトゥヌュス・オペペトナチョォス神の加護を得たというのに!」
それを聞いた
「その程度の紛い物の神様でしかなかったのよ」
現状の把握。まず間違いないのは、彼らがQQQ教団という事だ。
疑問点、何故機内にあの武器を持ってきているのかという点。
空港の1000m以内には、絶対武器を持ち込めないくらい厳重な警備が敷かれている。
そう、持ち込んだ時点でバレないはずがない。
であれば連中の中に
否、
飛んでる飛行機に
否、それもほぼ不可能だ。
現在この機内に
一つ、仮説が浮かんだ。
――おそらく弾着観測のように正確な座標を伝達する
つまるところ、他の
QQQ教団、社会に居場所がない者を集めている集団。
社会に居場所がないのは
であれば、教団に
「
「PィィィィKェェェェ、電光パァァァンチ!」
「コイツ……生体電気を! がはぁっ!」
拳を握り、筋力を限界まで強化したパンチが顔にめり込む。
幹部らしき者は機内を吹き飛んで転げ回る。
黒頭巾が取れ、老け顔が露わになった。
彼は鼻血を抑えながら、
「くっそ……おい、なにやってるお前ら、奴を乗客諸共射殺しろ!」
その言葉に周囲の乗客はパニックに陥る。
非道な命令に
「させない!」
その瞬間、
小さな子供がニヤリと笑い、
少年の指先から高速で発射された液体が針のように尖り、強力な表面張力によって疑似固体となったそれは、
そして、
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