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水波形
シークエンス0 プロローグ
ユミナ「はぁはぁ……」
ニーナ「はぁはぁ…………」
広い草原を二人の女の子が走っている。
片方はまだ10歳くらいの少女で、もう一人の方に手を引かれて走っている。
しかし手を引いているほうの女の子は、まだ母親というには早いようだ。
ユミナ「はぁはぁ……くっ!」
その広い草原には二人しかいないように思えるが、殺気に満ちている。
ニーナ「お姉ちゃん……私……」
息を切らせながら少女は訴える。
何キロも走ってきたのだろう。
既に足がふらついており、今にも倒れそうだ。
ユミナ「はぁはぁ……止まったらダメよ!」
それでも疲れた体に鞭打って、二人はさらに走る。
ユミナ「(でも、もう体力は限界……
街までまだ数十キロあるのに……)」
手を引く女の子も疲労がまわっており、足取りは重い。
ニーナ「はぅっ……」
ユミナ「…………っ!!」
少女が手をつく。
か弱い力だが、疲労が重なった女の子の体には大きな抵抗だったようだ。
二人はその場に崩れる。
その瞬間を待っていたかのように多い茂る草むらから多数の光線が放たれる。
ユミナ「はぁはぁ……くぅっ!!」
きぃんっ!っと言う音とともに、女の子の足元が光る。
すると、ばちばちと轟音をたて、放たれた光線がかき消されていく。
ユミナ「(さすがに限界ね……)」
女の子は意を決し、少女に言った。
ユミナ「よく聞いてね。
ここからまっすぐ行った所に、街があるの。
ガードは固いけど、抜け道があるわ。
そこまで走りなさい。」
ニーナ「え!?
お姉ちゃんは?」
ユミナ「私は後から行くから。
良いわね?
門が見えたら直前の道を右に曲がって――」
必死に少女に道を教える彼女。
その間も光と音は絶えなかった。
ユミナ「さあ、行って!」
ニーナ「でも、お姉ちゃんは――」
ユミナ「大丈夫だから!
とにかくここから離れて!
そしたら少し休んでも良いから!」
ニーナ「で、でも――」
ユミナ「良いから行くの!
今までもちゃんと後から追いついたでしょ?」
ニーナ「う、うん……」
ユミナ「さ、行きなさい」
ニーナ「絶対……絶対追いついてきてね!?」
ユミナ「うん、約束よ」
ニーナ「……っ!!」
少女は走り出した。
体は疲れて重いだろう。
しかし、止まればしんどいですむ筈がない。
それが分かっている少女は、残りわずかな体力で草原を走っていった。
…………
ユミナ「……ふぅ……」
彼女を見送り、私は構えていた手を下ろす。
同時に足元の陣は消える。
張り詰めた空気はいまだ消えない。
彼女は軽く足を開き、再び陣を展開した。
きぃんっ!
広域に魔法を使うための演算を組み込んだ魔法陣。
ここから少しでもあの子のために時間を稼ぐ。
ユミナ「молния стена(モールニヤ スチナー)!」
詠唱とともに電気の幕が一帯に張りめぐる。
バチンっという音とともに上から小鳥が落ちてきた。
おそらくこの幕にやられたのだろう。
高電圧のこの幕があれば、ある程度は時間が稼げる。
私の魔力が尽きない限り張り続けることができる。
ユミナ「…………っ!」
でも、体力も魔力ももうほとんどない。
ユミナ「ごめんね……今回は…………約束守るの……ちょっと……むり……かも………………」
奥歯をかみ締めながら私は彼女に謝った。
………………………
………………
………
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