第1話 大好きな幼馴染と朝

「うとうと、うとうと……す~す~」


「風花ちゃん、寝ちゃダメだよ! 髪セットするから、風花ちゃんは歯磨きね!」

 風花ちゃん―高田風花ちゃん。誕生日は3月25日、趣味はお昼寝と甘い物を食べる事。あと、甘える事。私服はパーカー大好きで、パジャマはもこもこ羊さん。

 150センチ中盤くらいの平均ぐらいの身長に、もちもちましゅまろボディとえくぼとくりくりおめめがトレードマークの、無邪気で天然でほわほわ天使な美少女。


「す~す~……す~」


「風花ちゃん! 起きて! 起きないと置いてくよ! 学校、一人で登校してもらうからね……それはそれで、俺が寂しいけど」

 3月20日生まれの俺とは、文字通り産まれたときからの幼馴染で、何をするにも常に一緒で、どんな時も二人で思い出を共有してきて。


「う~、悠真君に置いてかれるのヤダ、風花も一人は寂しい。悠真君と一緒が良い、今日もぎゅってしながら登校したい……でも、風花、ねむい……す~」


「風花ちゃん、寝ないで! 髪も乱れちゃうよ、俺そんなにセット上手くないんだから! ていうか、ねむいのわかってるんだったら、昨日あんなに遅くまで起きてちゃダメじゃん、風花ちゃん」

 風花ちゃんと離れ離れになった機会を探す方が難しいくらいに、ずっと風花ちゃんと一緒に成長してきて。


 学校の行事とかでも、常に同じ班で離れたのは……多分中2のあの体育祭事件の時だけかな? 

 あの事件の時以外は、本当にずっと一緒だ、俺と風花ちゃん。ずっと一緒で、ずっと仲良しな幼馴染。


「む~、だって昨日は悠真君が、夜中までずっと激しくて、風花の事ねかしてくれなかったから……風花、寝たかったのに、悠真君が激しくて、いっぱいするから……ぷわぁぁ」


「嘘つかないで、昨日は風花ちゃんがおねだりしてきたんでしょ! 風花ちゃんがいっぱい欲しがって、おねだりしてくるから。俺だって疲れて眠たかったのに、ずっと風花ちゃんとシてたんでしょ!」


「ふぇぇ、悠真君ごめんなさい……だ、だって、風花、マリちゃんのの色証欲しかったんだもん……色証金マリちゃんを、チョッキ抜き抜き型でセグレと一緒に使いたかったんだもん。でも風花、スパイスなかったから……うとうと」

 そんな俺と風花ちゃんだから、高校1年生の冬になってもずーっと仲良しで、毎日起こしに行ったり、一緒に遊んだり、本当に色々する仲で。

 大好きな風花ちゃんとずっと一緒に過ごして、その大好きがより一層加速して。


「あ、ごめん風花ちゃん。怒ってないよ、別に怒ってないよ。俺も楽しかったし、なんかシャリタツのイカの色違いも出たし……よし、風花ちゃん髪のセット終わり! 歯磨き終わった、風花ちゃん?」


「えへへ、ホント? 悠真君が怒ってないなら良かった、悠真君も嬉しいなら風花もはっぴー。またマルチバトルしようね、風花ハイダイさんの色違い持ってるから……え、歯磨き? 歯磨き歯磨き……えへへ、忘れてた。よろしく、悠真君」

 ……ホント、無邪気で可愛くて。


「……も~、しょうがないなぁ、風花ちゃんは。ほら、いーして、いー」


「いー……いひひ、ひひひ」


「はい、次はあー、して。あー」


「あー……あへへ、へへへ」


「あー、って笑わないで風花ちゃん。歯磨きできないでしょ」


「あへへ、だってぇ。悠真君にお口の中しゃこしゃこされるの気持ちいいんだもん、朝から、悠真君に歯磨きしてもらうの、すごく幸せな気分になって、笑顔が止められないんだもん。えへへ、仕上げはゆ~まくん! 風花のお口、最後までキレイキレイして!」

 ……ちょっと子供っぽくて、甘えん坊で。でもそう言う所が、最高に可愛くて。


「わかった、わかった。ほら、歯磨き続きするからちょっと大人しくね、風花ちゃん」


「わかった、すん……えへへ、ふへへ」


「も~、笑わないでって、風花ちゃん」


「えへへ、だってぇ、止められない、ふわふわ……えへへ」


「もう、風花ちゃん……はい、OK。それじゃあぐちゅぐちゅ」


「ぐちゅぐちゅ」


「ぺっ」


「ぺっ……ふ~い、スッキリ! お口すっくり、はっぴー風花ちゃん! ぬへへ、ありがとね、悠真君!」

 ……笑顔も、どんな表情も可愛くて。すべてが天使で、何もかもが愛おしくて。


「どういたしまして、風花ちゃん。それじゃ、朝ごはんだよ、もう出来てるって言ってたから、おばさん」


「えへへ、やった! 朝ごはん、楽しみ! ありがと、悠真君!」

 ……本当に、全部全部大好きな幼馴染だ! 

 風花ちゃん、大好き! 風花ちゃんの事、大好きだ!!!



 ☆


「うへへ、この鮭美味しい! お味噌汁も美味しいし、お漬物も……う~ん、ご飯が進むちゃん! あむあむあむあむ……ふへへ、美味しい!」

 さて、まだ登校まで時間があるし、もうちょっと俺の隣で朝ごはんを食べる大好き可愛い幼馴染の風花ちゃんの可愛いところを話そうと思う。風花ちゃんの可愛いくて大好きなところをリアルタイムで言おうと思う。


「えへへ、うへへ……えへへへ」

 さっきも話したけど、風花ちゃんはかなりの食いしん坊さん。

 朝からおかわり、なんてことはしないけど、俺のお茶碗の1.3倍くらいある大きなお茶碗で、美味しそうに、もぐもぐ朝ごはんを頬張る。


 そのおてんばな食べ方もあって、お口の周りにはご飯粒がぺとぺと引っ付く。

「も~、風花ちゃんもっとゆっくりお食べ。ほっぺにお弁当付いてるよ」


「えへへ、だって美味しいんだもん……え、お弁当? どこ、どこ? えへへ、わかんないから悠真君にとって欲しいな。悠真君に、風花のお弁当取ってもらいます!」


「ふふっ、そんな良いものだったら嬉しいけど。それじゃ、取るから動かないでね、風花ちゃん」


「うん……んっ」

 んっ、と目を瞑った風花ちゃんが、ぎゅっと唇を突き出す。

 その顔はまるでキスをおねだりする……ああ、もう可愛いな風花ちゃんは! 本当に可愛くて、その⋯⋯可愛いなぁ、大好き!


「も~、風花ちゃん……おいしょ。よし、取れたよ。これからはゆっくり食べる事……このご飯粒、どうする?」


「ぬへへ、ありがと悠真君……ふふっ、そのご飯粒、風花のお弁当だよ。えへへ、風花の、お弁当だよ、それは……にへへ、悠真君のしたいように、していいよ、風花印のお弁当!」


「そっか、ありがと。風花ちゃんのお弁当か、それじゃあそい!」


「うんうん、風花印だからね、風花が悠真君に……あう!? あうぅ……」

 うんうん、と楽しそうに笑う風花ちゃんの大きく開いた口に、指に付いたご飯粒を食べさせる。


 不意を突かれた風花ちゃんは、もぐもぐご飯を飲み込んだ後、そのもちもちなほっぺを風船みたいに可愛く膨らませて、

「な、なんでぇ、悠真君!? 風花印のお弁当だよ? 悠真君食べたくないの、風花ちゃんのお弁当?」


「ふふっ、風花ちゃんのお弁当なら、自分で食べるのが一番でしょ? それに、俺はもうご飯食べたから。だから風花ちゃんの分だよ、それは。ていうかご飯粒だし」

 お弁当、って言ってるけど実態はご飯粒だし。

 それに風花ちゃんのほっぺについてたんだから、風花ちゃんのご飯でしょ、それは。


「うぅ、そうだけどぉ……風花の、悠真君に……あ、でも悠真君が食べさせてくれて、いつもより甘くて美味しかったかも。それに、悠真君の指も……えへ、へ? と、トマトだ、うぇぇ……お母さん、なんでトマト?」


「ふふふ~、風花には、好き嫌い無くしてほしいからね~」


「う~、トマトやだぁ……お母さんのいじわる……うへぇ」

 ニコニコ笑顔だった風花ちゃんの顔が、お皿の上で隠れていたトマトを見つけて一気に曇る。


「ほら~、頑張れ~! 頑張れ頑張れ風花!」


「う~、トマト。トマト……みおりねさん……うへぇ」

 ご飯を食べるのは大好きな風花ちゃんだけど、昔からトマトだけは食べられない。


 二人で風花ちゃんのおじいちゃんのお手伝いした時の採れたてトマトですら食べられなかったから、その症状は重症と言って差し支えない。

 何が嫌いかはわかんないけど、本当にトマトが食べられない風花ちゃん。


「う~、とまと、とまと……あ、とまと!」

 でも最近、それの攻略法が見つかったみたいで。


「えへへ、最初からいつもみたいにすればよかったんだ……という事で、悠真君、んっ! んっ、悠真君! 悠真君!」

 回転椅子を俺の方にくるっと向けた風花ちゃんが、トマトのお皿を俺に渡して、目を瞑りながら、餌を待つひな鳥みたいに口をパクパクする。


「ふふっ、金魚みたいで可愛い。酸素が欲しいのか、ぐりゅぐりゅ~!」


「うみゅ~、えへへ、悠真君……って、風花で遊ぶな、悠真君! 風花ちゃんがいくら可愛くても、遊んじゃダメ! そう言うのはベッドの中だけ! 今は風花で遊んじゃダメだよ、んんっ! んっ!」


「あはは、ごめんね風花ちゃん。それじゃぁ、ちゃんとするね。ほら、いれるよ、あ~ん」


「みゅ~、悠真君……うへへ、あ~ん、mgmg」


「どう、美味しい? トマト、美味しい?」


「mgmg……ふへへ、食べられたけど、やっぱり美味しくない! トマトやっぱり美味しくない、風花は食べられたけど! 風花は偉いから、ごっくんできたけど、やっぱり美味しくない!」

 その言葉とは裏腹に、風花ちゃんの表情はキラキラ楽しそうに輝いていて。

 ご褒美を求めるわんちゃんのように、ふんすふんすとはしゃぎながら俺の方を見ていて、なんだかもふもふの耳としっぽの幻覚が……ふふふっ、風花ちゃん!


「ふふっ、えらいね~風花ちゃんは! しっかりトマト食べられて偉いよ! えらいえらい、風花ちゃん! よくできました! なでなで~」


「ふへへ、えへへ……わんわん! 悠真君、もっともっと……えへへ」


「ふふっ、朝だから控えめにね。よしよ~し」


「くぅぅ~ん、悠真くぅ~ん……えへへ、悠真君……んふふふっ、風花、これ好き……えへへ、悠真君に頭撫でられるの好き……ぬへへ」

 幸せそうに、とろとろに蕩けた顔の、大好きな風花ちゃんのサラサラの黒髪を撫でながら。その可愛くて、胸が熱くなる表情を見つめながら。


「う、うん、俺も。その、えっと風花ちゃんを、風花ちゃんの……風花ちゃんをナデナデするの、俺も好きだよ。大好きだよ、風花ちゃん」


「うにゅ~、風花も……風花もしゅき、なでなで大好き……うへへへ、風花幸せ……えへへへ、悠真君、もっと……もっともっと、だいしゅきして……えへへ」

 俺は今日も、大好きな幼馴染の風花ちゃんと一緒に幸せを享受する。

 大好きな風花ちゃんに、大好きなことして、俺はもっともっと大好きになっていく。



「あらあら~、幸せそうね~! 悠花ちゃんか風真君、来年くらいにあえるかしら~?」


「僕も早く会いたいな~! できれば、二人ともに!」



 ~~~


「悠真君、風花、鮭も嫌いなったかも! 風花、鮭も食べられないかも! 風花、鮭も、一人じゃ食べられないかも~。ちらちら。ふ、風花鮭も苦手だな~、ちらちら」


「え~、ホント? それじゃ、俺が残りの分は頂いちゃおうかな?」


「え、悠真君……あ~、嘘嘘! 風花鮭大好き、マリちゃんヌメちゃんと同じくらい好き! そ、その……悠真君にあ~ん、してもらいたいだけだから。悠真君にあ~んしてもらったら美味しさ100倍なるから、その……風花にあ~ん、して?」

 ……え、やばっ、可愛いすぎ。

 予想通りなのに、超えてきた可愛すぎでしょ風花ちゃん、好き大好き! ホント大好き、風花ちゃん……んんっ! 


「わ、わかった! そ、それじゃ、あ~ん」


「あ~ん……んふふっ、ふふふっ……ふへへ」


「どう? 美味しい?」


「えへへ、美味しい……悠真君の味も、いっぱい……えへへ、悠真君の幸せ、また風花貰っちゃった」


「⋯⋯俺もだよ。俺も貰った、風花ちゃんに⋯⋯だ、大好きだよ、風花ちゃん」


「えへへ、風花も大好き! 悠真君に、あーんしてもらうの、幸せで大好き⋯⋯えへへ」



 ★★★

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