銃のない世界で【銃弾作成】って死にスキルすぎません!? 〜ゴリ押しでどうにかできますか?〜
赤井錐音
第1話 おじさまってかっこいいわよね(脳死)
「…ん?なんだここ…」
見渡す限りに広がる平野…じゃなかった後ろに仰々しい神殿があるぞ?
…え?
さっきまでいた部屋じゃない!?
確か俺はさっきまで…
「ようやく目を覚ましたようじゃな」
神殿の方から声が聞こえた。
神殿の中から出てきたのは何か心優しそうと言った印象を受けるような、老齢にしては壮健そうなおじいさんだ。
見たことない人だった。夢の中…にしては記憶がなさすぎるし、腕を見てみれば毛穴が見える。
嫌だろ?毛穴の見える夢なんて。だから俺は夢と思うことはやめた。
「お主はなぜこんなとこにいるか覚えているのか?」
そう笑顔で問いかけてくるじいさん。
そうださっきまで俺は…
「魔術理論を完成させてから術式組み立てに取り掛かったよな。それで組み立て終わっていざ発動させた…はずだよな?」
「よう覚えとるのお主は…普通は断片的か直前の記憶は吹っ飛んでるはずなのじゃが…」
「それで俺の魔術は成功したはずだ!!霊脈だって見つけたし魔術理論の基礎のためにたまたまだけど手に入れたタイムマシンで過去に行ったし、そこで時間神殿ソロモンにいたソロモン王に魔術だって習った!あの人が言ってたの半分デタラメだったからあんま意味なかったけど!!」
「ワシの知らないところでタイムマシンを使わないでもらえるか?」
「しょうがないじゃん!?たまたまヤフ◯クで人知れず出品されてたんだから!」
「おい誰だ技術横流してるやつ」
「それで!!俺の魔術は成功したのか!?」
トテツもなく話が脱線しているじゃまいか…
「そうじゃな、結果だけをいうならお主の【召喚魔術】は成功…いや大成功じゃ」
それに…と老人は続ける。
「魔術理論は拙いながらも満点近くの合格を出せるレベルじゃったし、魔術式だって神代のものとほぼなんら変わりもない」
「じゃあなんで…!?」
こんなところにいるのか。ここはどこなのか、自分は生きているのか、
…死んでいるのか。
「だが、聡いお主は…いや聡すぎるお主はひとつだけ根本的なルール破りをしてしまったんじゃ」
聡すぎてダメだった?何が?
「お主は魔術を完成させたな?そして行使したな?…してしまったな?」
すごい剣幕でじいさんが詰め寄ってくる。
「あ、ああ」
思わず一歩後ずさる。
「あの世界はもう神なんてものは存在しないんじゃ。まぁ、神がいるっていう信仰は辛く言うと偶像崇拝みたいなもんじゃな。化学が世界を解明するにつれて魔術の不可能性も露呈していき西暦900年以前ほどから魔術を扱うことはお主の住む地球ではありえなかったのじゃ」
前提としてそもそも魔術魔法なんて存在しない世界となっているってことじゃな。
俺がカトリックなら発狂してるで?その話。…もう神は存在していないと言うことは昔は存在していたということ。けれどもう神の存在が否定されて、消えてしまった。だから地球ではもう魔術が使えない。
いや、これは因果が逆だ。
その事実に気づいた途端、嫌な汗が背筋を撫でてきた。
「ま、まさか」
「少しづつ理解してきたようじゃな。魔術…広く言えば魔法の不可能性と共に神の存在の否定が確定されたこの世界でお主はたった1人、たった1人で不可能を可能にしたんじゃ。『魔術が不可能、なら神もいないよね』のスタンスだった世界が突然、お主のせいで『魔術が使えるし、神もいるよね』のスタンスに捻じ曲げられてしまった」
「それによってじいさんが地球に現界したってことか?」
生憎、ここは地球じゃなさそうだが。
「ワシの神性に気づくとはやっぱお主は資質に溢れておるの」
いや話の流れで気づくだろって思うところもあるが言っても印象が落ちるかもなので無闇に突っ込みはしない。てかあんま知らないじいさんにツッコミとかできないからな?普通。今現在の状況もあんま飲み込めてない。
「それで世界はお主を排除すると決めたんじゃよ」
「は、排除?」
排除、なのか排他的というか…俺は地球から見たら掃いた敵ってことか。やかましいわ。
「お主は魔術を広めようとしなかったし一応生涯で秘密を守り抜いた」
やっぱ死んだよな、分かってたよ。結構行ったり来たりしてた話題が急にストレートパンチしてきただけだから。
「誰に言っても取り合ってくれないのはわかりきってたからな」
「それのおかげであの世界では存在できなかった上位神たちが入れるようになってしまう事態になったんじゃが、それも被害は最小限で済んだのじゃが…」
上位神…がいるなら下級神もいるってことか?下級…といったら付喪神とかのもののけの類が下級に喩えられてるのか?
「その上位神?が地球に入ってくるとどうなるんだ?」
「簡単に言えばお主たちの叡智で作り上げた文明が瞬く間に崩壊するな」
スマホとかビジネスが乱立するビル群だとか果てには凱旋門や斜塔とかの遺産とかもな、も付け足す。
「やけに地球に詳しいんだな。さっきまで地球にはアクセスできなくて未知の世界って感じだと思ってたんだけど」
「存在できなかったと言うだけで少し覗くぐらいならできたんじゃよ?例えるなら…教室のドアの小窓から黒板を見てる他科目の担当みたいな立ち位置じゃな」
あんま全体像は見れてなさそうな見られる側はちょっと恥ずかしいやつな。
「じゃなくて、やっぱりあんたって神…なんだよな?」
その質問を待ってたと言わんばかりに力強く応える。
「無論。ワシこそが神界序列13位の【均衡】と【歴史】を司るカルノ・マード・シエラへじゃ」
皆からはカル爺とか魔翁などと呼ばれておるな。と軽く補足を入れてくるあたりの仕草は結構茶目っ気がある。
「魔翁…魔王よりかは魔神とかの部類だろうけどな」
「かっかっ!言えておるな!」
見た目が完全にじいさんだからその渾名はよく似合うように感じる。
「この際、異世界の神だろうがなんでもいいんだがカルは俺の今の状況を説明できるのか?」
神さまだとか今はぶっちゃけどうでもいい。俺のいま立ってる立場が知りたい。
死んでいるのか、生きてるのか、はたまたその狭間の泡沫の夢なのか、
「あ、あー…お主はやっぱり聞きたい?」
「そりゃ聞きたいだろ、自身に起きてることだぞ?自分のことを自分が1番知らないならそれは俺じゃなくて俺がよく知ってる誰かになってしまうからな」
「すごく、わかりづらいかもしれんが一度しか言う気がない。しっかり聞いておくれ」
お、おう。なんでそんなかしこまってるのか好奇心と猜疑心が渦巻いてくる。
「お主は魔術を行使し、成功したから失敗したんじゃよ」
「成功して…し、失敗?何言ってるんだ?」
「魔術的には成功したんじゃ。召喚魔術は見事円環を成して元来地球にありなかった存在を呼び出した。
じゃが、とカルは続ける。
「召喚に応じたやつがワシより序列階位が高い邪神での。本格的に危なかったんじゃ」
本当に出てきたら世界が、というより宇宙が滅んでたかもしれないんじゃぞ?と言われ気づく。
あ、俺は召喚魔術を成功することだけ考えて何を召喚するかなんて考えてなかったんだ…
「そこにギリギリワシの干渉が間に合って式を書き換えて別のモノが召喚されるようにしたんじゃ」
「お、俺は何を召喚できたんだ…?」
「お主が召喚したのは……」
たっぷりの間を開けて俺の目を見据えてくる。
その歳に似合うサラサラの一つ結びの白髪がなびき、エメラルド色の眼力に圧倒される。
無意識に固唾を飲み、呼吸すら忘れる。
「それは、トラックじゃ」
………へ?
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シリアスを返せ(いつもの)
新作です。大量のスキルチートから離れてみようと思います。
明けましておめでとうございます。
今年は3月から投稿できたらいいですね(受験)2023もよろしくお願いします!
え?他の?ボチボチススメマス(・ω・)
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