第4章|サクラマス化学株式会社 東京本社 <1>鈴木セブンとの初出動
<1>
――――里菜ちゃん、おっはよー!今日はついに出動だ!鈴木セブンとの初仕事、頑張ってね!
『株式会社E・M・A』から支給されたお仕事用のスマホに、先輩保健師の福島さんから、朝一番でメッセージが入っていた。
ご丁寧に、添付で『ウルトラマン・セブン』の画像も付けてくれている。思わず顔がにやける。
――――鈴木先生ってさぁ、『ウルトラマン・セブン』に、すっげぇ似てね?ほら、見て見て。
福島さん、先日、オフィスでそんなことを言っていた。
「うん……やっぱり、そっくり」
鈴木
スマホ画面を見て、くすっと笑う。昨日の夜から緊張しまくりの心が、ちょっと緩む。
今日は、産業医の鈴木先生と一緒に、初めて契約先企業に訪問する日だ。
鈴木先生、ペア保健師は必要ない、ってずっと拒んでいたのに、ついに承諾してくれたみたいで、嬉しい。
今日の訪問先は『サクラマス化学株式会社』という会社だそうだ。
待ち合わせ場所に指定されたのは、大手町駅から少し歩いたところにあるオフィスビル。迷わないよう時間に余裕を持って、無事に到着した。幸先の良いスタートだ。
(えーっと……福島さんに返信するのに、なんか可愛い画像ないかな)
『株式会社E・M・A』では、お預かりした顧客情報を保護するため、職員個人の携帯電話を仕事に使うことが、固く禁じられている。メンバーとのやり取りも全て、会社支給の携帯で行う。だから、福島さんの個人的な連絡先は聞いていないし、知らない。
顧客企業とのやり取りメールも、必ずccに緒方先生と高根さんのアドレスを入れる決まりになっている。顧客企業のニーズに合わせて、会社として速やかにハイクオリティの対応ができるように、ということらしい。
(あ~、こっちのスマホは、初期設定以外のスタンプ入ってないか~……自分のケータイからだったら、お気に入りのスタンプ、つけて返せるんだけど…………)
無防備にメール画面を見ていたその時、後方から声がした。
「足立さん。おはようございます」
―――あ、鈴木先生だ!
「ぎゃ! お、おはようございます!よろしくお願い致します!」
振り返りながら背中に変な汗をかく。
さっきの福島さんのメール、鈴木先生に見られてないよね??と考えながら、挨拶を返した。
先生は、思ったより近くに立っていた。
(セーフ? アウト? セーフ……??)
けれど鈴木先生は、今朝もいつものように冷静な顔をしている。この様子なら多分、見られてない……と思う。うん、セーフ。
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