10話
4月7日始業式。ついに高校2年生が始まる。桜井や海風は今日が来るまでウズウズしていた。
理由はクラス替えであった。高校2年生のメインイベントと言っても過言のない修学旅行があるからだ。場所はまだ発表されていないものの、4泊5日であるため、班決めは重要案件である。
そして、修学旅行の班はクラスメイトと組むことになっているため、今日のクラス替えを楽しみにしている人は多い。
オレとしても誰と同じクラスになるかは気になるところである。
去年もクラスには馴染むことが出来ていたので、誰と同じになろうと問題はないが、5日も班員として伴にするので、演技が持つかは怪しいところだ。
できれば、疲れないメンバーと組みたいところ。
クラスは朝の8時20分に発表される。それまでは発表されることはないのだが、発表が待ちきれないのか、桜井や海風は早々にアパートを出ていった。
小金澤もつい先程出ていった。早く出掛けたところで待たされるだけであるのに、よく早く行こうと思えるのだろうか。紗絵姉も教師であるので早々に出ていった。
それで現在、アパートに残っているのはオレを含めて3人。翡翠と赤神である。
翡翠は昨日入学式があり、今日は1日休みである。今はのんびりとリビングで食事している。
オレはというと、翡翠の対面の席に座って新聞を読んでいる。
「月波先輩は新聞読むんですね」
「まあね、ネットだと信憑性に欠けるし、情報収集するなら、新聞の方が適してるからね」
「凄いですね。私は新聞に苦手意識があるので」
文字ばかり並んでいるのだから、文字を読むことを苦手としている人には新聞を読むのは酷な話だろう。
オレは小学校高学年から小説を読み始めているので、自然と苦手意識はない。それどころか、小説のキャラクターはオレの演技のお手本になっている。
人気のあるキャラの真似をするだけで、だいぶクラスメイトから話しかけられているからな。これからも多くの人に好かれる存在になるために小説は読み続けるつもりだ。
新聞を読んでいるのは情報を集めるためだ。今のうちから情報を集めておけば、後々こちらに有利な展開へ持ち込むことができる。
「あ、おはようございます。赤神先輩」
『ふわぁ~』と欠伸をしながら、2階へつながる階段から赤神が降りてきた。
「眠そうですね、夜遅くまで起きていたんですか?」
「そうなんd……です。昨日見つけた面白い小説にハマりすぎてしまい、寝たのが4時過ぎでした」
「そんな生活していると体壊しますよ?」
まだ寝足りないらしく、目を擦りながら朝食を食べ始める赤神。男であるオレがいるというのにだらしない格好をしている。今更考えることではないか。この家に赤神が住んでから、毎日同じような光景を見ている。お互い慣れたもんだ。
「僕はもう行くけど、赤神はどうする?」
「いえ、まだ時間がありますので、私はもう少ししたら行きたいと思います」
「そう、じゃあ先に行ってるね」
「月波先輩、いってらっしゃい」
僕は2人を家に残し、学校へと向かった。このアパートから高校まで歩いて10分程度。始業式が始まるのは8時40分であるから最低でも8時半に出れば間に合う。ただ、クラス替えの発表は8時20分に行われるので、それに間に合うようオレは家を出た。
この時間に来たのはまずかったのかもしれない。すでに多くの生徒が集まっていて長蛇の列になっていた。
クラス替えの紙が昇降口に貼られる時間になった。少しずつ列が進んで行くかと思ったが、全く進まない。どうなっているんだと思い、前の方を見てみる。すると、同じクラスになれた、なれなかったみたいな声が聞こえる。
なるほど、仲良しメンバーで列に並んでいてその場で喜んだり悲しんでいるのだろう。そのせいでなかなか列が進まないらしい。
こんなことなら、桜井たちみたいにさっさと家を出るべきだったな。オレは少しばかり後悔をした。その時、携帯が2度ほど震えた。
確認してみれば、桜井からメッセージと写真が送られて来ていた。
『どうせ今頃後悔してるんじゃないかって思って、写真撮っておいたよ』
さすが桜井。付き合いが長いこともあってか、オレが考えていることはお見通しらしい。
もう1枚写真を見れば、クラス替えの用紙全体の写真であった。クラス替えのドキドキ感を味わえるように気遣ってくれたのだろう。どのクラスにオレが属しているなどは分からないようにしてくれていた。
オレは列から外れ、写真を拡大して確認する。「つ」の苗字の生徒は大体出席番号が真ん中らへんだ。その辺りを1クラスずつ確認する。すると、2年F組のところにオレの名前があった。
クラスのメンバーを確認すれば、赤神、海風、桜井の名前があった。ついでに小金澤の名前も見つけた。どうやら同じクラスになれたらしい。
『同じクラスだね、よろしく』
オレが自分のクラスを確認が終えたタイミングで桜井から再びメッセージが来る。先程から絶妙なタイミングだな。
オレも『1年間よろしく』と送ると、すぐにスタンプが帰ってきた。桜井のやりとりをしているときに、小金澤からも連絡が着ていることに気づいた。
『翼、俺と同じF組だったな』
とだけ、メッセージが着ていた。通知をオフにしておいて良かった。容赦なくネタバレをしてくるもんだから困ったもんだ。
オレは『残念だ』とだけ打つと、小金澤から『なんでだよ』と送られてきたが、今度は既読無視した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます