水槽の脳
岩橋藍璃
第1話
水槽の脳
一
「やあ、カレン。今日はいい天気だね。学校楽しんでね。」
「こんばんは、ジョン。今夜は彼女とデートだろ?雨が降っているから気を付けて。」
「おはよう。エース……。」
そこまでが限界だった。私は深く息をついてその場に座り込んだ。
「もうだめだ。こんなことをしていては頭がおかしくなる。帰る。」
背後で「了解しました。」と声が聞こえた。私は立ち上がって部屋の出口に向かった。
出口の前で私は振り返って、部屋中に人の脳が入った水槽が置かれた、この異様な部屋を見渡した。動いているものはすべて機械、人間が一人もいないこの場所が、私が一生過ごさなければならない場所だということに、吐き気を覚えた。
長い廊下を歩く、エレベーターに乗って三十階に向かう。エレベーターが開いてまた長い廊下を歩く……。自室までの道のりにも人間はいない。冷たく窓もない密閉された暗い廊下に、私の後をついてくる秘書ロボットと私の足音だけが響いている。
自室の前で私は秘書に手を振った。秘書はロボットとは思えないほどなめらかに「お疲れ様です。」と言いながら頭を下げた。その動きも人間そのものだ。
自室に入ってベッドに飛び込む。何もしたくない、何も考えたくない。そんな気持ちに襲われて、それを振り払うように眠りについた。
空腹ですぐに目が覚める。食事の時間は決めておらず、腹が減れば飯を食う生活なので、最後に食事をとったのはいつなど覚えていない。
食事をとるために自室を出ると、近くの長椅子に座っていた秘書が立ち上がった。
「お食事ですか?」
私は秘書の問いかけにうなずいた。秘書はかすかに微笑むと黙って私の後ろについた。そして私たちはまた長い廊下を歩き、エレベーターに乗って、今度は一階に向かった。
一階には食料生成システムがある。これで大抵の料理は作れるが、原料がすべて合成素材のため、お世辞にもうまいとは言えない。一階には小さな畑と養鶏所があり、保存食をおいている食糧庫もあるが、私が一人で生活するようになってからは、ほとんど利用していない。一応、管理ロボットを置いているので、畑の作物も鶏も問題なく育っているが、調理するのが面倒くさいので、処理しなければならない状況にならない限り、そこで作られた合成でない食物を口にすることはない。食料生成システムは原料タンクをセットし、画面でメニューを選ぶと、数分で料理が作られる。これはとても楽だ。料理ができるのを待っている間、秘書は私を手伝うこともなく、ずっと私の後ろに佇んでいる。調理場で卵を焼いている間も、彼女は私をただ後ろから見つめている。きっと、彼女は私がここから抜け出さないように監視しているのだろう。
私の父は、おそらく彼女に殺された。三年ほど前、私は父と一緒に食糧庫に向かった。いつもは一緒に食糧庫に入るのに、その日だけは扉の間で待っているように言われた。秘書は私についていてくれるのかと思えば、父と一緒に食糧庫に入っていった。私が見た最後の生きた父の顔は、自分の後をついてくる秘書を怪訝そうに見つめた顔だった。しばらくすると、秘書が父を抱えて戻ってきた。父は意識があるようには見えなかった。近くによって見てみると、首に注射痕のようなものがあった。何があったのか、父は生きているのかという私の問いに、秘書は父を医務室に運ぶということしか答えなかった。医務室に父を運び、私は部屋に戻って泣いた。気が済むまで泣いて部屋から出ると、長椅子に座っていた秘書が暗い目で私を見つめながら、父が死んだことを告げてきた。お前が殺したのではないかと涙を零しながら言う私に、機械のくせに私と同じように涙を零しながら秘書は否定した。しかし、食糧庫には父と秘書以外いなかったのだ。首に注射痕のようなものがあったのだから、誰かに殺されたことは確かなのだ。お前が殺していないのなら誰が父を殺したのだという私に、秘書は涙を零しながら答えた。
「貴方のお父様はここから逃げ出そうとしたのです。私はそれを止めなければならなかった……。」
どうしようもできなかった。外気を一切通さないこの建物から、外の世界に出ることは許されない。外の世界に出て、外の空気に触れると、人間は長くは生きられない。外の世界で死なれると処理ができないから、それを止めた秘書の判断は正しい。でも、殺すまでする必要はなかったはず。秘書にそう言っても、黙ってうつむくだけ。どうして殺してしまったのか、一切教えてくれない。
私はずっと、外の世界に憧れている父の姿を見ていた。だから、危険だとわかっていても、父に少しでも外の世界で生きさせたかった。父は禁忌を犯した。父を殺した秘書の言い分は理解できる。だが、理解はできても、感情は追い付かないものだ。私は秘書に複雑な感情を抱えたまま、彼女と接していた。この建物には、彼女しか私と話してくれる人はいないから。
焼いた魚と卵の質素なメニューを食堂に運んだ。食堂はとても広いが、無数に置かれている机も椅子も飾り気がなく、たくさんの人と一緒に食を楽しむための場所というより、たくさんの人の食事を一気に済ませるための場所と言った方が正しい場所だった。
自室に戻る間も秘書は私の後をついてくる。自室のドアを開けて、振り返って秘書を見る。
「入って。中で話をしたい。」
何かを察したように秘書はほほ笑んで「かしこまりました。」と言って部屋の中に入った。
人間がいない、会話のないこの塔で暮らしていると、どうしてもさみしくなってしまう時もあるし、ひどいときには会話の仕方、声の出し方を忘れてしまうこともある。そのため、私は時々、秘書を自室に呼んで業務連絡やら他愛のない会話をするようにしている。
秘書は機械だが、本当によくできている。彼女は女性の体を完璧に再現した人形を、秘書ロボットに改造したものだ。背丈も私より少し低いくらい、女性特有の体の繊細さとやわらかさを持ち、肌の触り心地も人間のそれとほとんど変わらない。話し方もなめらかで、人間の女の子と話しているような気持ちになれた。
秘書以外の誰かと話したい気持ちは、いつも心の奥底にあった。たくさんの人に囲まれて、話したり、遊んだりしてみたいと思ったことは数知れない。だが、叶わないのだ。ここには私しかいない。この建物から出ることは許されない。その事実は変えられない。一生孤独に生きていくことに、絶望を感じながらも、その絶望から目を背けるように、秘書と人間らしい語らいの時間を過ごす。父を殺した憎き秘書だが、この絶望から逃げるためには、そうするしかなかった。
私はすべてを諦めていたのだ。
秘書を帰したあとの部屋は、いつもより空っぽでさみしかった。
椅子に腰かけて、深くため息をついて、今日の仕事を始める。
私は、たった一人で、この建物、一切窓のない閉ざされた塔で、水槽に密閉された脳の管理をしている。「水槽の脳」と呼ばれるこの脳たちは、確かに生きている。しかし、適切な管理をしてやらないとすぐに死んでしまうのだ。
この世界の人間はみな、閉ざされた建物の中で外気に触れないように生活している。外の世界は人間が住めるような世界ではないのだ。私が住んでいるこの塔のような建物は、他にもいくつかあるらしい。私が住んでいる塔は、人間がたくさん住んでいた形跡が残されている。私こそ一人ぼっちだが、他の塔にはたくさんの人が住んでいるのだろう。そして、その中には、私のように水槽の脳を管理する職に従事している者もいるだろう。
なぜ人間は狭い建物にたこ詰めになって生活しているのか。なぜ外の世界は人間が住めない危険な環境になってしまったのか。なぜ人の脳が水槽につめられて保管されているのか。なぜその理由は千年前ほどまで遡る。
数百年前、世界には人がたくさんいた。技術が非常に発展していたため、驚くほど精密な機械や人工知能があらゆる分野で人間をサポートする。人と機械が一緒に生活しているにぎやかな世界であった。そんな世界がひっくり返るようなニュースが流れた。
『不老不死、実現可能。』
もう千年も昔のことだ。文献はほとんど残っておらず、詳しいことはよくわからない。断片的に残っている情報によると、ある研究チームが細胞の成長やら老化やらを防ぐことができる薬液を生み出したことがすべての始まりだそうだ。その薬液を継続的に投与された小動物は、寿命をはるかに超えて長く生きたと発表された。つまり、その薬を体に投与し続ければ、外からの刺激がない限り死ぬことはない。体が成長することも老いることもない。批判もあったが、不老不死に魅力を感じる者も多かった。それから世界は大きく変わった。
不老不死に賛同するあらゆる分野の研究者が、こぞって薬液の改良研究に参加した。人類の平均寿命の低下が問題視されていた世界情勢も相まって、不老不死の実用化は急速に進められた。不老不死の薬液が大体世の中に出回ったころ、奇妙なことが起きた。
最初に薬液を生み出した研究チームの者たちが次々に死んでいった。それも、全員同じような症状がでて、死んでいったのだ。
すべては頭痛から始まる。徐々に痛みが強くなって、数か月後に視力低下や聴力低下、嗅覚や味覚の異常が現れる。目も見えない、耳も聞こえない。においも味も分からなくなって、最後には歩くこともできなくなって、死んでいく。しかし、不老不死の研究チームはみな高齢だったのもあって、世界は大してその奇妙な死に方に関心を持たなかった。研究チームの中には、不老不死の薬液を継続投与し、老いを抑えられていることをその身をもって証明している者もいた。世界の関心は専らそちらにあった。
研究チームの死因に違和感を覚えたある一人の研究者は薬に使われている成分が人体に無害なものなのか、改めてあらゆる角度から調べてみた。しばらくして、とんでもないことが明らかになった。
薬液に使われていたエタナルーという成分、これが厄介なものだった。空気に触れていなければエタナルーは人類に不老不死をもたらす素晴らしいものなのだが、これが空気に触れたり、熱せられたりすると様々な変化を繰り返し、最終的には、少しの量でも人間を死に追いやる有害物質に変わってしまうものに変化してしまうのだ。
世界中の人々が薬液の開発や改良にかかわった研究者を責めた。だが、批判を浴びせたとしても、もうどうしようもないくらい不老不死の薬液は世に出回っていた。絶望の中、どうしようもない憎しみは国や研究所にあてられた。そしていくつもの国が倒れた。反乱が起きている間にも、有害化したエタナルーは空気中に存在している。研究者をはじめとして、徐々にエタナルーが変化した有害物質による死者が増えてきた。
しかし、治療薬を開発できる研究者は少なくなってしまった。各地で争いが起きる世の中で、治療薬の開発に多額の予算を充てることが難しかった。そこで当時の人々は、まず死の原因となる薬液をタンクに密閉し、これ以上犠牲者が増えないように対策をした。エタナルーは水に溶けやすく、水に溶けた状態のものを密閉すれば害はないことは明らかだったが、空気中あるエタナルーを完全に取り除くことは不可能であった。人々は一旦諦めて、死の危険がある空気の中で国の再建にうつった。
どこの国のどの地域を見ても荒廃していて、民家一つ見つけるのも苦労するような有様だった。家を失った者があまりに多かったため、当時の人々は大きな塔を建て、塔内に空気を清浄する機械を置いて、塔内の空気に含まれるエタナルーをすべて水に溶かして密閉し、そこにたくさんの人を住まわせることにした。世界中でこのような建物が造られ、人が集まって住むようになった。いつしかその建物のなかで支配者が生まれ、国のようなものへと変わっていった。その建物は、いつか外の世界で生きられるようになるまでの仮の国ということで、仮国と呼ばれるようになった。
薬液やエタナルーが密閉されたタンクは、どこの仮国でも厄介に思われ、押し付け合いが始まっていた。国のトップが集まって話し合いをして、どの国も必ず一つはタンクを受け入れ、薬液の研究に関与した国は複数のタンクを受け入れることに決まった。
世界の崩壊から数十年たつ頃には、塔の外で生活するものはいなくなった。多くの民が塔の中で生活するようになると、狭い塔の中で生活する場所や快適な生活を求めて争い、最終的には塔の中で階級社会が形成された。階級の高いものは上層階に住み、一つの家族で複数の部屋を使うなどの贅沢をし、階級の低いものは下層階で一つの部屋をいくつかの家族と共有して使っていたそうだ。
その環境と死への恐怖から、世界中にある思想が生まれた。
肉体からの離脱。
ある塔の最高権力者が体を捨て、脳だけになって不老不死の薬液に浸かり、その状態で意思の疎通が成功したというニュースが発端だった。邪魔モノとして扱われていた薬液だが、もともとは不老不死を実現できる夢のようなものであった。今や薬液をつめたタンクは、世界中の塔の地下に一つは必ずある。世界の崩壊前から工学は非常に発展していたため、脳に電極を通して脳波を操作する機械も、逆に脳波を解析してその人の意思を読み取る機械もたやすく造れる。
ならば肉体を捨て、脳だけになった方がいいのではないか。
そもそも塔の中に大量の人間を住まわせつづけることに無理があった。塔は外の世界で暮らせるようになるまでの一時的な居住区として造られた。そこで人が永住し、そのなかで国をつくるために造られたものではないのだ。外の空気を完全に清浄する方法や、有害化したエタナルーに強い体にする方法を見つけ出し、いつかは外の世界で再び国をつくって生活できるようにする。塔はそのための研究所を兼ね備えた、仮住居のようなものだった。生活する場所が足りなくなるのは当然で、最高権力者であっても制限された生活を強いられていた。しかし、脳だけになればその生活から解放される。広い空間での生活も、甘美な菓子も、とろけるような快感も、求めれば機械を通じてすぐに与えられる。これは塔の中の人々にとって大変魅力的であった。
ある最高権力者のニュースが流れた後、すぐに肉体からの離脱を求める声が殺到した。しかし、肉体からの離脱には金も時間もかかる。まず取り出した脳と薬液を入れる頑丈な水槽をつくらせ、脳に脳波を送る機械、脳の細胞に酸素や栄養素を送る機械を購入し、次に脳の摘出手術と摘出した脳に栄養素を送る管を脳が傷つかないように取り付けられる優秀な医者を探す……。事前準備だけでも、一生生活できる額の金を払わなければならない。ざっくりとした説明をしただけでも、肉体からの離脱を求める声は半分以下に減った。しかし、これほど金がかかることを成し遂げれば、自分の権力を表すことができるのは確かだった。そのため脳だけになって華やかな生活を手に入れる目的以外にも、自分の権力を示すために肉体からの離脱を求める者も少なくはなかった。
この『肉体からの離脱ブーム』によって、おおよそ千人もの人が脳だけになった。これが「水槽の脳」である。そして、水槽の脳を管理する仕事が新たに生まれた。生命維持のための管理の大方は機械に任せておけばいいのだが、脳に刺激を与えるためには外の人間の手が必要であった。脳は時に複雑な刺激を求める。広い部屋でうまい飯を食らうシチュエーションを求められたなら、広い部屋に入った時の解放感、うまい飯の香りなど、単純な刺激を組み合わせて、シチュエーションに対応する刺激をつくらなければならない。一瞬の出来事を感じさせるだけでも、何万という刺激を脳に送らなければならない。当然、機械では難しい。脳の相手をするこの仕事は、周囲に気味悪がられるものではあったが、権力者に近づけるという利点もあったので、ひそかに人気の職業となった。
もう、この塔にはおそらく私以外誰もいない。あるのは数十体の機械と五体の水槽の脳だけだ。こうなると私は必然的に脳の管理を仕事としなければならなかった。
その仕事内容は、水槽の脳を管理する仕事が生まれた時からみると、少し変わった。当初は、脳波を解析する機械を利用し、脳からこんなことがしたいという要求を聞き、それをしているときの刺激を脳に与えるものだった。しかし、今では脳からこちらにものを伝える機械をほとんど使っていない脳も多い。自分が何者であったのか、自分が何を求めていたのか、どうやって自分の意思を外に伝えるのか、すべて忘れてしまったようだ。それぞれの脳の水槽のわきには、脳波を解析し、脳からの意思を表示する電光掲示板が置かれている。今、それには何も表示されていない。ならば何も刺激を与えなくていいのか。そういうわけでもない。意思を伝えてこなくても、水槽の脳は何かしらの刺激を求めているかもしれない。水槽の脳の本心が誰にも分からない状況では、拒否の意思が伝えられるまでは刺激を与え続けなければならなかった。脳に刺激を与え続けていないと、脳の機能が弱まってしまうという意見もあった。しかし、それが無駄であるという意見もまた多かった。そのため、意思を伝えてこない水槽の脳の扱いに決まりは作られず、幻覚のリクエストをしなくなった脳にも刺激を与えるか否かの決断は、脳の管理者にすべてゆだねられた。脳の親族と相談する人もいるそうだが、私のように塔に誰もいない場合は、私の選択がすべてだった。しかも、この塔にある水槽の脳は、すべてこちらに意思を伝えることを放棄していた。このまま何も脳に刺激を与えないという選択肢もあったのだが、私は水槽の脳に刺激を与えることをやめなかった。
今日の仕事も、主に「脳に適当な刺激を与え、幻覚を見せる仕事」だ。
私は、脳に誰かの人生を体験させるような幻覚を見せている。父がそうしていたので、それをまねている。
図書室で適当な本を読み、その本の主人公が体験していることをそのまま脳に伝える。一からどんな刺激を与えようか考えるより、こうした方がはるかに楽だった。
人の生には刺激が多い。この仕事はとても大変だ。たとえば、晴れた夏空の下を歩く場面一つであっても、目から入るくっきりとした青空、鼻から入る夏のにおい、肌から入るじめじめとした湿気、汗で張り付く服や髪、汗が垂れる、地を踏む感覚を脳波として伝えなければならない。何よりも、私は生まれてから一度も塔から出ずに生活してきたため、夏の空の下を歩く時の感覚など想像でしかない、それが一番難しいのだ。人間が塔の中で生活する以前に書かれた小説や詩を読み漁って、感じるであろう様々なものを想像するが、正解はわからない。
しかし、仕事に集中していると、人とふれあえないさみしさを忘れることができる。正解がわからない、答えを教えてくれる人もいない、報酬も出ない仕事だが、それは大きな利点だった。
気づくと日が落ちていたので、仕事を切り上げて空腹を満たす。階段を下りて一階の食料生成システムを使う気力もなかったので、部屋に置いてある栄養素を集めただけの味気ない液体を腹に入れた。体が汚れるか、汗をかいたときくらいにしか風呂には入らないので、そのままベッドにとびこんで泥のように眠った。
「ケイド様、おはようございます。」
ドアをノックする音と、秘書の声で目覚める。秘書は許可なく私の部屋には決して入ってこない。そのように設定されているのだろう。私は、自室以外のほとんどの場所では秘書にずっと後をつけられている。はっきり言って、いい気はしない。一人になりたいときもあるので、この設定をしてくれた過去の人にはとても感謝している。
「今、行く。」
ベッドから飛び起き、軽く顔をふいて、私は自室を出た。
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