警備用ゴーレムを作った

 俺は朝から土を練って魔力を込めていた。たっぷりの魔力の入った土は鉄よりも固く、水のように柔らかに加工できるものになっていた。


「ふぁ……何をしているんですかルード様?」


「ああ、起きたか。なに、この森を二人で守るのは面倒だからな、ゴーレムを作って自動で警備してくれるようにしているんだ」


 そう、俺が作っているのはゴーレムだ。自動人形オートマタでも同じようなことは出来るが、アレを作れるほど俺は器用ではない。シンプルに人っぽい形にすればいいゴーレムの方が手軽だからそちらを選んだだけだ。


「ゴーレムって魔族の作った魔物ではなかったですか? ルード様は作れるんですか?」


 おっと、人間はゴーレムを作れないのか。そういえばゴーレムに頼って攻め入ってきた人間は一人もいなかったな。


「ああ、俺は色々スキルがあるからな。『ゴーレム作成』ももっているんだよ」


 ただ単に魔王時代に小物を追い払う時に一々相手をしなくてもいいよう作るのに慣れてしまい、それが今でも続いているだけなのだが言う必要は無いだろう。人間になってもゴーレムをきちんと作れるところとか微妙に人間に配慮しているな、あのエセ神様は。


「ルード様はなんでも出来ますね!」


「俺だってできないことはあるよ」


 本当になんでも出来るんだったら勇者に負けたりしていないだろう。結局出来ることしか出来ないのだ。


「そうですか、それでこの土からゴーレムが出来るんですか?」


「ああ、後は形を作って魔力を流し込むだけだ」


「形を作る……私も手伝っていいですか?」


「いいけど本当に泥臭い作業だぞ」


「構いません!」


 そう言ってシャミアは喜々として粘土をいじりだした。人の形にするのかと思ったら、小型の猫のような形にしている。ゴーレムの形に決まりはないが、人型にした方がパフォーマンスは高いぞ。


 俺は普通の人型に年度を組み上げ、それに魔力を流し込んだ。あっという間に泥人形は俺に敬礼をした。


「よし、それじゃあ森の入り口を守っていろ」


 それだけ命ずるとあっという間に森の入り口へとゴーレムは走っていった。あの程度の相手を倒せないならこの森に入る資格は無い。門番には丁度いいだろう。


「ルード様! 私の方も動くようにしてください!」


 シャミアが作ったのは歪な猫型の泥人形だった。俺は適当に魔力を流して動くようにした。


「森の見張りをしろ、適切に防衛をするように、ただし人間を殺さないこと」


 シンプルな命令を下して猫方ゴーレムを動かした。木の上をぴょんぴょん跳びながら森の中を駆け回るように動いていった。


「ルード様! 私のゴーレムは何点ですか?」


「三十点ってところかな」


「十点満点でですか?」


「バカ、百点満点でだよ」


 アレでは森への侵入者が弓でももっていれば簡単に矢で射貫かれる程度の俊敏性しかもっていない。俺のゴーレムもその点では同じだが、サイズの差と流した魔力の差で矢を打ち込まれた程度なら自己再生する。とにかくシャミアの作ったゴーレムは小さすぎて保持しておける魔力が少ないのだ。


「じゃあ家に戻るぞ、ゴーレムの視界を映すビジョンを作るからな」


「そんなことが出来るんですか!? 凄いですね!」


 別にゴーレムの向いている方向を映し出す映像魔法なのだが、なんだか貴重な魔法のような扱いをされてしまった。


 部屋に入ってから二体のゴーレムの視界を映す映像を流すようにしたのだが、シャミアはぐわんぐわんと揺れる猫方ゴーレムの視界をじっと見ていたせいで酔ってしまったのだった。治癒魔法で介抱してやったが、俺はシャミアにゴーレムの視界を見るのは程々にしろよと言い聞かせておいたのだった。

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