魔法剣
「最近、【輝く絶望】の行動がよく見られる。全員、注意してくれ」
朝食の時間、全員の前でクロムはそう言った。だが、
「【輝く絶望】って、なんだ?」
そんなものは知らないリンは、クエスチョンマークを浮かべるだけだった。
「リン、知らないの?」
リンの隣で座って朝食を食べているマロンは意外そうな表情をしている。
「しょうがないですよ、マロンさん。リンはまだ街に来てから一ヶ月も経ってないんですから」
「あと少しで一ヶ月だ。それより、【輝く絶望】って………」
「有名な、犯罪者ギルド、だよ」
それを聞いて、リンは黙った。犯罪者ギルドの活動が活発。ということは
「何かが起こる可能性があるってことだな………」
「そうですね。念の為、今日は迷宮探索を休みにしましょうか………」
メロとパーティを組んでから早二週間になる。その間、休みを取らずに迷宮探索をしていたので、そろそろ疲労が溜まる頃だろう。
「じゃあ、今日は武器の新調にでも行こうかな………」
今使っている、急ごしらえの武器もボロボロになってきた。
「そういえば、以前言ってましたね。急拵えの武器って………てか、なんでずっとそれだったんですか?」
買いに行くタイミングはいくらでもあったのに。
「まあ、壊れなかったからな」
だが、リンが買いに行かなかった理由はそれだけだ。
「じゃあ、私も今日は魔石の交換がありますから別行動ですね」
「そうだな」
別行動。別に、本来なら事細かく報告する義務は無いが、二人が同じ部屋というのが問題だ。
例えばメロが部屋で着替えている時。リンが急に入らないように部屋の前に紙を貼って知らせたり、ノックを3回してから入ったりと、色々手間がかかる。
「じゃあ、また夜な」
「はい」
朝食を食べた二人は、そうして別れた。ちなみにマロンは迷宮探索に出かけた。
二人は用心のためと、たまには休暇が必要だという理由で休んだが、マロンにとって、【輝く絶望】は大した障害にならないが故になんの問題もなく迷宮探索に出かけた。
「俺も………」
それくらい強くなれば、と考えるが、まだ急ぐ時期じゃない。焦っても結果は着いてこない。
「らっしゃい」
久しぶりに武器店に入り、物色していると
「………ん?」
奇妙な武器を見つけた。
「これ、魔法剣か?」
魔法剣とは、特殊な素材を使って造られた武器であり、様々な特殊効果が付いている。ちなみに、魔剣とは別だ。
「店主」
「………ん?」
「この武器、どうしたんだ?」
リンが気になって聞いてみると
「ああ、その武器はガラクタだよ」
「ガラクタ?」
「ああ」
なんでも、武器が気に入らない持ち主だと、なにも切れないなまくらになってしまうらしい。しかも、持ち主を認めても、相手が弱ければ鞘から抜けなくなるという曰く物らしい。
「強力なのは間違いねぇ。だが、使い手がいなければ、武器は廃れていく。だから、ここに置いてんだよ」
たまたま駆け出し冒険者が手に取って面白半分で買っても、そんな冒険者は森の入口までしか入らないので、死ぬことはない。なのでここに置いてるのだとか。
「じゃあさ、この剣。俺にくれないか?」
リンがそう言うと、店主はは?という表情でリンを見てきた。
「あんた、正気かい?」
「ああ。勘だが、俺はこれがいいって思ったんだ」
だから、リンはそれを選ぶ。
「いいよ。どうせ、置いてるだけだ。死にたくないなら、他の武器も一緒に買いな」
「そうさせてもらうよ」
ということで、予備の剣を三本と投げナイフを20本、バトルナイフを4本持って会計に行った。
「こんなに買うのか?」
「ああ」
「そうか。なら、何も言うまい。合計で75万GOLDだよ」
値段は高いが、今のリンなら払える値段なので、躊躇いなく金を払って外に出た。
「買った武器は………投げナイフ2本と魔法剣以外はアイテム収納空間に入れとくか………」
アイテムを収納して、リンは出発するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます