お部屋事情

 謎のヤンキー系に、助言をもらったあと。リンは風呂から上がり、団長室に来ていた。


「さて、君の部屋だね」


 そう。リンが寝泊まりする部屋だ。


「今日は色々あったし、寝たいんだけどなぁ………」


 マロンと森に探索に出て、Cランク冒険者との戦闘。ランクアップを果たしてギルド加入。


「これを一日でやったんだから普通に疲れたわ」


 ということで部屋を教えて欲しい気持ちでいっぱいだったのだが。


「それについては、伝えなければいけないことがある」


「伝えなければいけないこと?」


 このタイミングで伝えなければいけないこと。王道なものは


「部屋が、足りないのか?」


「遠からず、近からず、かな。部屋が無いわけじゃ、ないんだ」


「じゃあ、なんだ?」


 無いわけじゃない。つまり、その部屋に問題があるということ。


「実は、うちでは主にルームシェアをお願いしてるんだけどね」


「ああ」


「ルームシェアのために空いてる部屋があと一つしかないんだ」


「つまり?」


「君は相手を選ぶことができないってことさ」


 相手を選べない。強制的に今空いてる相手と同じ部屋になる、ということだ。


「まあ、それくらいならいいんだけどな………」


「まあ、君ならそう言うかもね」


「ん?じゃあ俺は問題ないのか………」


 それでいて、困った問題。


「相手が、拒否してるのか………」


「まあ、そういうことだね」


 一応、リンは曲がりなりにもクロムが認めた人間。それを拒絶するということは、クロムのことも信頼してないのと同じだ。全力で警戒するにしても、ある程度関わってからにするべきだとリンは思ったが


「一応細くすると、相手は君のことを認めていないわけじゃない」


「そうなのか?」


「ああ。それに、相手もレベル58のCランク冒険者だ」


 つまり、リン程度がなにかしようとしても、返り討ちにできる、ということだ。


「じゃあ、なにが問題なんだ?」


 クロムは少しの間黙ると、意を決して言った。


「相手は、女性なんだ………」


「………なるほど」


 それは、難しいだろう。結婚してもいない。ましてや付き合ってすらない男女が同じ部屋で過ごすのだ。


「普通に、ダメだろう」


 倫理観がダメすぎる。

 それは相手も拒否するわけだ。


「ちなみに、エルフの女の子なんだけどね」


「高潔な種族じゃん」


 リンが祖父に聞いた話では、エルフ種は高潔な種族で、認めた相手としかまともに会話もしないとか。


「しかも年齢は15歳だね」


「歳は一緒かよ………」


 聞けば聞くほど、ダメになってくる。


「………どうするか」


「態々宿の契約を打ち切って来てもらったのに、追い返すわけにもいかないしね。取り敢えず、今日はこの部屋で寝ていいよ」


 さすがに団長室には、他の団員にも見せられないような重要な書類があるからずっと入り浸られるのは困る。


「今日はもう遅い。解決策も見つからないし、取り敢えず明日に備えよう」


「………そうだな」


 折角加入したギルド。でも、先行きは不安でしかなかった。


────────────────────


クロムも、部屋状況までは把握してないのです

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