夢の雑音
連続更新四話目です
前話を読んでない方は是非前話から
────────────────────
「なるほど。では、カスタード氏が逃してしまったパウ・ベアーが、たまたまリンくんに襲いかかったと」
「はい。本当にごめんなさい………」
ミカンの取り調べを受け、マロンは再度頭を下げる。
「いえいえ、いいんですよ。
ミカンは優しく言ってくれるが、マロンが逃した魔物が新人冒険者に危害を加えた事実は変わらない。
「それよりもリンくんです。まったく、パウ・ベアーなんて、本来は逃げるべきなのに………」
「あの………その子は、冒険者になってから、何ヶ月ですか………?」
ダメだと思いつつも、マロンは興味本位で聞いてしまった。
「え?まだ冒険者登録をしてから半月ですが………」
「………ビックリ」
迷宮に生息しているはずのスピニード・ハニーを倒し、パウ・ベアーに深手を負わせた人がまさか冒険者登録をしてから半月だと言うのだ。
「あの、一度ギルドに戻らなくちゃいけないので、その子が目を覚ましたらまた後日謝罪に行くって言っててください」
マロンは、そう伝言を伝えると、ギルドの個室から出て行った。
■■■
リンが目を開けると、真っ白な空間に立っていた。
この真っ白な空間に来るのも何度目かわからないので、リンは存外冷静だった。
ここは、夢の世界。現実のリンは、きっとまだ気絶しているのだろう。
気絶する前の出来事を思い出し、眉間にしわを寄せる。
────無様だね
わかってる。
────あの程度の相手に気絶させられてるようじゃ、先が思いやられる
それも、わかってる。疲労していた、とか。そんな言い訳をするつもりもない。
────所詮、君如きではどれだけ努力しても、その程度に収まるんだよ
何度も聞こえ続ける幻聴に、リンは顔を顰めるが、軽く反撃するだけで素直に聞く。
────わかってるだろうな。こんなところで足踏みしている暇はないんだ
────あの熊は、明らかに違う者に注意を払っていた。つまり、今の君は眼中にもなかったってことだよ
そうだ。リンがどれだけ抗おうと、叫ぼうと、あの熊は最後には別の物に恐怖し、逃亡した。
────本当に、そんな無様を晒して物語の英雄になんて到達できるのかな?
そんなものは、わからない。だが、
「それは、俺の義務だ。途中でくたばろうと這ってでも達成する。お前は口出しするな」
リンは幻聴に向かってそれだけ言うと、意識を覚醒させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます