第1話② サトシ、6歳の恋(2)
「アイちゃん・・・」
25歳になった僕は偶然、故郷の街角で出会った彼女に向かって呟いた。
幼子を抱く彼女は幾分、疲れた表情をしていたけれど。
僕が6歳の頃から脳裏に焼き付けていた天使の微笑みは消えずにいました。
「サトシ・・君・・・?」
一瞬、ためらうような気配はあったけど、僕だと確信を持った強い口調で言った。
「そ、そうだよ・・・」
僕は興奮を押さえながら、慎重に声を出した。
だって、そうじゃないか。
ずっと夢見ていた天使が目の前にいるのだから。
「いつ・・・帰ってきたの?」
彼女は想いを押しつぶす様に少し目を伏せて聞いた。
「去年・・・ボランティア活動が終わって・・・」
僕は言い訳をするように掠れた声を返した。
言いたいことは沢山あった。
大学が違ったとはいえ。
彼女は僕以外の男と付き合い。
そして、結婚した。
失意の僕は海外派遣のボランティアに。
勿論。
学生時代も彼女を慕い、愛していた。
そのつもりで僕は彼女と付き合っていると、思い込んでいたんだ。
でも。
彼女は違った。
煮え切れない僕の態度が悪かったのか。
元々、彼女にその気が無かったのか。
結局、彼女を忘れられないまま。
僕は海外でボランティア活動をして。
去年、日本に帰ってきた。
でも。
彼女を忘れることはできず。
故郷に今、戻ってきたんだ。
そんな時。
街角で、彼女に出会った。
彼女の子供と一緒に。
「サトシ君・・・」
あの頃と同じような笑顔と透き通る声。
「な、なに・・・?」
僕は6歳の少年の声で尋ねた。
「私、今・・・。
バツイチで、独身なの・・・」
いたずらっぽい笑顔で彼女は言った。
(は、反則だろう・・・?)
僕は、そう思いながら。
頬が、緩んでしまうのでした。
※※※※※※※※※※※※※※※
お終い。(笑)
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