第26話 暇
26話目
どこか懐かしい。そんな感覚になるのは、神秘の量が日本よりも多いからだろう。
個性を研究しているだけあって、消費している魔力の量が多いのだろうか。もしくは神秘を集める物があるのか。
考えるだけで楽しくなる、空間は久しぶりだ。
「それじゃあ研修がんばってください。」
「そっちも楽しんでいきなよ!」
お姉さんとは飛行機を降りてから直ぐに分かれてた。この後の予定も違うだろうし、お姉さんはこの後待ち合わせしている人が居るんだとか。
僕もイギリスに呼ばれた理由であるヘラクレス学園へ行かなければいけないので行き先が違うのだ。
「さて、どうしようか。」
持ち物は財布にスマホ。後は身分証くらい。洋服などは一切持ってきていないので現地で調達しなければ行けない。まあ、今着ているローブは特別性なので汚れる心配はしなくていいが、それでも日本にいた時に服を選ぶ楽しさに気付いてしまったので出来る事なら何種類か持っておきたい。
それなら持ってくればいいじゃないかと思われるかも知れないが、両手は空にしておきたいという気持ちの方が強かった。
過去に何度も旅はしてきたけど、必要ない物は持っていない方が行動しやすい。もちろん今は違うのかもしれない。治安は良くなっているようだし、突然魔術をぶっぱなしてくる魔術師もいない。
ただ体に染みついていることは早々変える事は出来ないのだ。
「ピノはどうしたい? 昨日旅カタログ見てたけど。」
飛行機の中でずっと寝ていたピノはきょこッとフードの中から顔を出した。
「直ぐに行かなくていいんですか?」
「学園にってこと? 大丈夫だよ。学長には観光してから行くって言ってあるから。」
この一年間ピノに構う事が無かったからこんな時くらいは予定を開けておこうとお願いしておいたのだ。
「それならロンドンと言う所にある世界文化遺産と言う所に行ってみたいです。4か所あるみたいですが……」
「いいね。時間はいるらでも開けれるから早速行こうか。」
「ありがとうございます。」
ピノに先導されて地下鉄と言う物に乗りロンドンへ行くことにするのであった。昨日の今日で何も準備をしていなかったので、道はさっぱりわからない。スマホで調べる事が出来るらしいが、どこを押せばいいのか分からないので、僕一人だと迷子になってしまうだろう。
しかし僕よりもスマホを扱っており、操作に慣れているピノがいるのでその辺は何とかなる。
猫の手で頑張って画面をタップしている姿は可愛いの一言だが、本人は真面目である。僕の肩に乗りながらスマホを操作している姿はイギリスの人たちにとっても珍しいようで、ス美をさしながら笑ったり、写真を取っている。
貶されているわけではない事は分かるので、いくらでも好きなだけしてくれと思っている。
「この電車だと思います。」
「見つけれた?」
「空港からだと地下鉄が沢山走っているので行き先が分かりにくいんです。」
「しょうがないさ。」
「難しすぎて神様にお願いしたいくらいです。」
「はは、駄目だよ流石に。あいつらに目を付けられたら、何が起きるか分からないし。それに、この国の近くにはギリシャ? の神がいるらしいから、求めていた神とは違ってしまうかも知れないしね。」
「そうですよね。ヘラクレスのようにはなりたくありません。」
神様と言うのは自分勝手なので容易く干渉してはいけない。と言うかしたくない。気まぐれで殺してくるし、もし栄光でも与えられたら魔術師をやめないといけないかもしれない。
信仰と言う神秘の上に存在する存在はいつだって理不尽だから、目は付けられたくないのだ。
「お、きたね」
そうしていると電車が来てくれたので乗ってロンドンへ行く。
☆
電車に乗りロンドンへ近づいている時感じるその力は見知ったものであった。存在しているだけで神秘を振りまく……宝具だ。
どこか威圧感があり、気にしないことができない。
制御されず存在の限り放出するその神秘は流石宝具と言えよう。
「凄いね。これ。」
「流石というべきなんでしょうか。」
イギリスと言う場所を舐めていたのかも知れない。個性を研究が盛んだとは言っても、僕にとってはその程度かと思ってしまうし、自然力くらいで激震が走っていたくらいだ。
これなら僕が自分で調べて研究した方がいいのではないのかと思っていたけど、宝具を保持するほどなのであれば評価を変えなければいけない。
そもそも宝具を宝具として認識するのは難しい。なぜなら、神秘を観測できるのは今の人類だと無理だろうし、それを持ち上げて移動させるのはそれこそ伝承に干渉すると言う事。
制御の方法を持たず干渉してしまえば、物語の一部とする為神秘が爆発的に増えるだろう。しかし神秘に干渉する事は魔術の中でも高位に位置しており、宝具の神秘を制御するのは僕が知っている中であれば方て程度しかいない。
そのはずなのにロンドンにあるということは元々あったか、何とかして移動させたと言う事だ。ならどっちなのか?
この神秘の放出を感じ取れば分かるだろう。
「楽しみだよ。何があるのか。」
別に神秘収集を趣味にしているわけではないが、それでもこれほどまでの神秘を放出する宝具はそうそうない。それこそ、伝説の一つとして世間一般的に知れ渡っていなければいけない程。
「今度お願いしてみようかな。見せてもらえないか。」
「無理なんじゃ無いですか? こんだけ神秘を放出しているということは、常人だと近づくだけで影響が出てしまいますよ。」
「まあ、何とかなるでしょ。」
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