第21話 エピローグ編① 終末がやってくる?

時間は少し遡り、白い穴のあちら側、地球

ゆうきの妹・華(ハナ)視点




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ポロロン、ポロロン、ポロロン

テレビから突然警告音が流れた。


私は齧ってたトーストから顔を上げてテレビへと目を移した。

テレビにはいつもの朝のニュース番組が映っていたが、その画面の上部にテロップが流れていった。



「華ちゃん、なぁに?今の。地震速報?」


キッチンのお母さんにもテレビの警告音が聞こえたようで、お父さんのトーストが乗ったお皿を持ってダイニングにやってきた。


「ん〜?何かお知らせだってー」


テレビ画面の上部に同じ文言がしつこいくらいに繰り返し横流れしていく。

ニュース番組のキャスターも不思議な顔をしながら割り込んだニュースを読み上げた。


『ええ、スポーツニュースの途中ですがお伝えいたします。本日18時、今日の午後6時に総理よる重要な会見が催される模様です。関係筋…からの情報によりますと、会見は全チャンネルで同時に放送されるそうです。え? ええと、日本全国で同時放映になるそうです。………ええ 国民の皆さんは必ずご覧になっていただくようにとの』


キャスターがディレクターのカンペを見ながら読み上げていると、途端にスタジオが騒がしくなった。


『ええ、自分その時間新幹線の中や。明日早くに大阪で収録があんねん』

『観れる人だけでいいんじゃない?』

『てかさぁ、観たい人だけでいいだろ?俺、政治家の話とか無理。どうせくだらない話だろ』

『せやなぁw』


そのあとすぐにまたスポーツニュースに戻ったけど、画面の上部にはあのテロップがずっと流れ続けていた。


お父さんがトイレから出てきてダイニングテーブルに着くとお母さんから渡されたトーストを齧りながらテレビを見た。


「ん?何だ?何かあるのか?」

「何でしょうね、内閣総辞職とか?」

「いや、そんな事であの音鳴らすか?トイレまで聞こえたぞ。地震速報かと焦ったら出かかってたモノがいっきに引っ込んだぞ」


「オトーサン、汚いー。今ご飯中」


「あ、スマンスマン」


「あれ?お姉ちゃんは?」


「千紗稀は昨日遅かったから、今日は朝はいらないってまだ寝てるわ」


「いいなぁ、大人は自由でー」


「お父さんだって大人だけど毎日キチンと定時出勤だぞ」


「お父さんはいいのー。私もお姉ちゃんみたいにグータラな生活したいなー」


「もう、ふたりとも。早く食べないと遅れるわよ」

「ふむ。夕方6時までに帰宅するのは無理だから、お父さん今日休もうかな」


「ずっるーい! 大人ズルイ! 私も休む!」


「そうねぇ、総理なんて偉い人の話は皆んなでちゃんと聞かないとね。お姉ちゃんにも居てもらって、家族で一緒に観ましょうか」


「賛成! てか、お姉ちゃんいつでも居るじゃん」


「じゃお父さん会社に連絡しよ。華の学校にも電話しようか」


「オトーサン、今時はLAINEで連絡だよ。 電話連絡なんてお父さんの会社遅れてるんじゃないの?」



お父さんはさっさと会社に電話をして朝ご飯をゆっくりと食べ始めた。


うちの一家は緩い。

大事な事さえキチンと押さえていればあとは個人の判断で良し、って感じだ。

お兄ちゃんが、いなくなってから…は特に。



私はスマホアプリのLAINEをタップして、クラスのグループトークを開いた。


○ 先生〜 おはよございます

  山田華、今日は事情によりお休みします


○ おはよう山田さん どうしたの?風邪?


○ いえ 元気です 総理の話を聞くのでお休みします


○ 総理のお話って夕方6時からよ?

  学校終わってからで十分間に合うじゃない


○ 家族総出で聞くので準備が いろいろ




先生の次の書き込みに少し間が空いた。

うちの事情を考えてたのかな。

お兄ちゃんが少し前にイジメで…穴に落とされたから。

総理の話って、あの白い穴についてだと思うんだよね。

あの穴の事、何か進展があったのかも。


○ わかりました。明日はちゃんと学校に来てね。


○ はぁい


○ 先生!俺も休みます あ、佐々木です

○ 俺も休む 中島 祐介の方

○ 中島将も

○ 立花もお休みします

○ 鈴木も休みます


○ ちょっとあなた達! まあいいか


○ さすが綾ちゃん先生 柿本もお休みで


○ 待って、鈴木さんは3人いるでしょ。休むのは誰?



私の「休む発言」のせいで次々とクラスメイトからの書き込みが殺到した。

ごめんね、綾ちゃん先生。



お昼までゴロゴロして、お母さんが作ってくれたオムライスを食べていたらお姉ちゃんが起きて来た。


居間にお父さん、お母さん、私、の3人がいた事に驚いていた。


「何でアンタら揃ってるの?あれ?今日日曜だっけ?」


頭をボリボリ掻きながらぶつぶつと言ってるお姉ちゃんに、お父さんがテレビに映ってるテロップを指差した。


「ああ、なるほど」


お姉ちゃんはすぐにスマホを操作してた。

ソファにどっかりと座りスマホをポチポチしてる。

たまに行く“自称:会社”に連絡してるのかな?


「千紗ちゃんも会社にお休みLAINE?」


お姉ちゃんはチラッとお母さんを見てすぐにスマホに目を戻した。


「うん、職場に連絡。で、仕事の引き継ぎしてる。うちの事情知ってるから気持ちよく休ませてくれたよ」


へぇぇ、けどお姉ちゃんほぼ毎日家にいるからたまの出勤(バイトか?)を休んだらクビになるんじゃないの?




何だかんだであっという間に夕方になった。

総理の放送まであと1時間あったけど、家族全員リビングのテレビの前に揃っている。


白い穴、穴の先が判明したのかな。

解ったのならまずうちに連絡くれればいいのに。

今日の放送前に然るべきところから連絡が来るかもって思ってた。

然るべきところがどこかわからないけど、結局どこからも何の連絡も来なかった。

とりあえずソーリーの放送にかけるしかないか。

ソーリー、早くしてよ。


ポロロンポロロンポロロン


全員がビクっとなった。

あの警告音だ。

テレビにはマイクが並んだスピーチ台みたいのが映された。

パシャパシャパシャとカメラのフラッシュが焚かれる。

そこにゆっくりと総理が歩いて入って来た。


総理が話し始める。

私達は瞬きも忘れて総理の話に聞き入った。





目も口も開きっぱなしになった。

総理の話は白い穴の事ではなかった。


まさかの、まさかの地球の終焉んん?

彗星が地球に衝突ぅ?

人類滅亡?

はぁあ?

ナニソレ。


日本沈没通り越して、地球が、無くなる?

何言っとんじゃ、われぇ。



しかも、地球滅亡まで『あと10日』だとおおお?

もっと早く言えやあああああああ。





--------------地球滅亡まで残り10日--------------

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