第18話 冒険者の活動
冒険者登録をした俺たちは、ギルドの偉い人と怖い人と話し合い、ジャパンフォレストに出かける事になった。
ギルドの偉い人とは、ギルドの副長だった。
立派な部屋で立派な机で大量の書類に埋もれていたのでてっきり一番偉い人だと思っていたが、怖い人の方がギルト長だそうだ。
ガタイがすごくデカくて頭は短髪でオデコにキズがあって目が三白眼だったから、こっちの人はギルドのナンバーワン冒険者だと思ってた。
まさかのこっちがギルド長とは!
俺たちのジャパンフォレスト行きには冒険者が同行してくれる。
俺たちをこの街まで案内してくれた4人、彼らは『白雷』という冒険者パーティだそうだ。
『白雷』の4人と、他に単騎の冒険者2人の合計6人が俺たちに同行してジャパンフォレストまで来てくれる。
今回は馬と馬車を利用するのでジャパンフォレストまで1日で着けるらしい。
本来あの草原は『魔境草原』と呼ばれていて、草原に魔物が出現するため馬は使えない。
しかし俺が持ってたクシャの実を急遽加工したので往復分の魔除けとして十分使えるそうだ。
全員が馬に乗れればもっと早くに着けるそうだが、俺たちは馬に乗った事がなかった。
「あの、俺…馬乗った事ないです」
「俺もないぞ?」
「僕もない」
「私も乗馬は未経験だわ」
「僕も無いなぁ。バイクなら乗れるけど」
という訳で馬車を出してもらう事になった。
6人の冒険者は皆、馬に乗れるそうだ。
ふぅむ、魔法の他に乗馬の練習も必要かもしれない。
「ゆうき、森に行ったらクシャの実を摂ってこれるか?」
ギルド長のハンスさんに聞かれた。
「はい。大丈夫です。結構なってたし…」
「どの辺になってた?俺は気が付かなかった」
「えぇと、初日に見つけたから多分西拠点のそば。でも、他でも結構見かけたよ?」
「そうか」
「あの、ハンスさん、どのくらい要りますか?」
「持てるだけ摂って来てくれ」
持てるだけ…?スーパーの袋一杯分くらいでいいのかな?
それからジャパンフォレストの北側も調査したいとお願いしてみた。
もしかしたらライアンやミシェル達のようにお腹を空かせた地球人が北の森にいるかもしれない。
できるだけ早くに北側の森も探索しないと。
「ジャパンフォレスト…の北側?これから向かう森の北側か?」
「そうだ」
「ジャパンフォレストの東がこの街、西がアメリカンフォレスト、南がフランスフォレスト、残る北側の森に行きたいのよ」
「なるだけ早くしないと間に合わないかもしれないしな」
「北側に森はない」
「え?」
「北は断崖絶壁で下は、海だ」
「海?」
「海!」
「断崖絶壁!」
「森は無いのか」
「もっと奥に、北西に行けば解らないが、お前さんらがジャパンフォレストと呼ぶ森の真北に、森は無い」
「この街から行ける森はせいぜい3つだ。お前さんらの話に出る、ジャパンフォレスト、アメリカンフォレスト、フランスフォレスト。それより先は草原の魔物もどんどんと強くなる」
「あ、でも、クシャの実があれば、行けるんじゃ…」
「数年前に試した冒険者は戻って来なかったがな」
「ゆうき、今回はジャパンフォレストだけにしよう」
「そうね。それがいいわ」
「無理して助けに行って俺らが死んだんじゃ意味がない」
「そうだよ、ゆうき」
「う…ん、そうだね…」
そして俺たちはジャパンフォレストへ向けて旅立った。
いや、旅じゃないんだけどね。
あと、もちろんジョリーも一緒だ。
加工したクシャの実の粉をあちこちに擦り付けているせいか、魔物は全く寄って来なかった。
あっという間にジャパンフォレストに到着した。
森の中は樹々の間が狭い場所もあり行けるとこまでは馬車を利用した。
が、どうしても狭い場所が続き迂回も難しくなり途中で馬車を降りて馬だけを連れて移動を続けた。
比較的体重が軽い俺とクラとミシェルが白雷の人にそれぞれタンデムさせてもらう。
ライアンとパチェラは馬車から切り離した馬に跨り、単騎冒険者にそれぞれ引いてもらうようだ。
残りの白雷のひとりとジョリーが先頭を進んで行く。
まあ、森には魔物も獣もいないそうなので特に警戒する必要もなく、森の中で楽しく乗馬体験ってとこだ。
ジャパンフォレストの東側から森を進み中央へ近づいた頃に進路を若干、北北西に変える。
すると程なくして東の拠点に到着した。
危険な生き物がいないとはいえ夜の森をこれ以上進むのは危ないので今夜はこの東の拠点で野営をする。
拠点の広場の中央にはやはり物資が山積みになっていた。
冒険者さん達は火を起こしたり野営の準備をしていた。
俺たちは物資の仕分けだ。
以前からよく落ちて来る物資にLEDランプが結構あったので、広場の周辺の木にぶら下げて回ったら結構な明るさになった。
冒険者さん達は驚いていた。
「なぁ自転車持って行けないかな」
ミシェル声に顔を上げると積まれた物資の下敷きになって自転車があった。
「あれ?確か…西の拠点にもあったよね?」
「ああ、でもこれ電動サイクルじゃないか?」
「え?電気自転車?」
本当だ。
普通の自転車と違いガッシリとした車体で、しかも新品のようだ。
すごく高そうなのによかったのかな?
落としてくれた人が後悔してないといいけど。
「ありがたく使わせていただきます」
俺は自転車向かって手を合わせた。
白雷のジェドさんが俺を珍しそう眺めた後、自転車に移した目を見開いていた。
「これは! アーティファクトか!」
ジェドさんが大声を上げたので皆んなが寄って来た。
「自転車です!自転車! アーティファクトじゃないですよ」
「電動サイクルなんだよ」
「アーティファクトって何だ?」
「ジェド!これはすごいな」
「いや、あの、ただの自転車です。こっちには自転車って無いのかな」
自転車を説明したけれど、ジェドさんはアーティファクトである事は譲らなかった。
何でもこの森の空から落ちて来る謎のモノは全てアーティファクト何だって。
とりあえずこの自転車は馬車の屋根に乗せて街へ持ち帰る事になった。
翌日は西と南の拠点と西のテント地を訪れて、街に持ち帰る荷物の整理をした。
それと、新たに街への地図も貼って歩いた。
いや、歩いたというより自転車と馬に乗って貼って回った、が正しいのだが。
馬があればアメリカンフォレストとフランスフォレストの森までそれぞれ1日で草原を渡れる。
冒険者の人達にお願いしてそっちの森にも『街への地図』貼りをお願いした。
ライアンと白雷のリュアデムさんがアメリカンフォレストへ。
パチェラと冒険者のエバンスさんがフランスフォレストへ。
残りの6人とジョリーはここジャパンフォレストで物資の整理と、クシャの実集めだ。
そうして数日後には俺たちは街まで戻ってきた。
アメリカンフォレストとフランスフォレストにはやはり物資は無かったそうだ。
例の、武器の岩みたいのはたまに落ちていたそうだ。
とにかく街までの案内は張り紙してあるので、もしも誰かが落ちて来た場合も助かる確率はグンと上がったはずだ。
クシャの実は大きなリュック三杯分ほど持ち帰った。
実はまだまだ生えているのを発見したが、全部採ると次が生えて来ないかもしれないので適当に残しながら採取したのだ。
持ち帰ったクシャの実とアーティファクトと呼ばれる地球のグッズはかなり高値で買い取ってもらえた。
中でも電動サイクルは驚くほどの値段がついた。
確かに日本でも10万以上はしそうだったけど、電動サイクルの値段でそこそこの大きさの家が買えた。
俺たちはその家で生活しつつ冒険者としての活動を始める事にした。
もちろん魔法の練習も怠らない。
そして俺たちはクランを立ち上げた。
自宅の一階をクラン専用にしている。
クランの活動は主にふたつ。
ひとつは『定期的に3つの森を探索する』
もうひとつは『森に落ちて来た人を助ける』
クランの名前は、『落ち人クラン』だ。
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