第1話 遅刻と焦り

-- 2022年 12月28日


「やっと仕事終わったわぁ」


ため息が混じりながらそう言った男は、電気すらつけずソファに沈む。


(カチッ)


小さなその音は、静かなリビングを反響した後にテレビがつき、見知った顔の芸人や、よくわからん美人さんが映っていた。

数秒間、男は覇気の無い目でテレビを見ていたがそれをすぐに消し、沈んでいた腰を上げた。


(カチッ)


そして、倒れ込むようにベッドに直入。

布団も被らず、そのまま寝てしまった。


-- 29日


「やべぇ、寝すぎた!」


男はそう言って飛び起き、すぐにスーツを着て、コンタクトを着けて、バッグを持って車の鍵を開けた。


(ブゥゥン)


排気ガスと共に出たその音は、まだ暗い冬の朝を震えさせながら遠のいていく。


「昨日何時に寝たっけ?なんでこんな寝ちまったんだ!」


そう言って自分を責め、アクセルを強く踏む。

だが、やはり焦りというのは良くなかったようだ。

男は信号のない交差点で、右から来ていた車と衝突。

即死だった。





あぁ。やはり、焦りというのは良くない。

だって、今日は出勤日ではないというのに。

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