第21話 桜

「花子」が旅立って4ヶ月経った頃の夕方、

宿題の途中で犬たちのご飯を準備していた


玄関先で「桜」にご飯をあげ、他の子たちにもあげた後、

普段は食べ終わるまで宿題をして待ったりするのだが

その日は何となく「桜」の近くにいた


水を替えたり庭の掃除をして食べ終わるのを待っていると

突然「桜」が倒れた


急いで駆け寄り、喉の辺りをさすったり背中を叩いたりした


しかし幾分フードが出てきたものの

完全には取れずそのまま腕の中で息を引き取った


私は泣きながら母を呼んだ


嗚咽混じりに何とか母に説明をすると


「もう桜も年だからちょっとこのフードも食べづらかったのかもね」


そう言って母は私の腕から「桜」を抱き抱え玄関に入った


涙が止まらなかった私に

「そんな泣いてたら桜も安心できないよ?」


そういう母も涙を浮かべていた


翌々日、みんなと同じペット霊園で「桜」を見送った


平成25年6月のことだった

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