第4話
「今度こそ、お前が犯人だな」久しぶりに登場した警部は容疑者を引っ張っていた。
「違う。ウチじゃねえよ。おいコラ離せ」容疑者は暴れる。彼女なりの抵抗だった。「証拠を見せろよ、証拠を。どうせ探偵の足元にも及ばないような推理でウチが犯人だって決めつけてんだろ!」
「関係者でアリバイが無いのはお前だけだ。他の生徒は皆授業に出ていたからな。そして守衛さんが誰も出入りしていないと証言している。つまり内部の犯行だ。そうなると、必然的にお前しかいない」
「はあ? あんなザル守衛を信じるのか。ふざけんな。前も犯人見逃してたじゃねえかよ!」
「怪しい人物を目撃した人もいない」
警部は同意を求めるように目撃者を見やる。
「くそっ!」目撃者は壁に拳を打ち付けた。「どうして、どうして俺はこんな時に限って目撃できてないんだ!」
「気にするな目撃者」優しい声で警部は語りかける。「何も見ていないからこそ、証明できることだってある」
「目撃者が見逃してる可能性だってあるだろ!」容疑者が反論する。
「彼女はこう言っているが、どうかね目撃者。君が見逃すとは俺には思えないが」
「くっ」目撃者は再び拳を打ち付けた。「確かに、俺が目撃に失敗するはずがねえ。目撃者である俺が目撃できないわけはないんだ!」
警部は容疑者を掴んでいる手に力を込める。
「もう、諦めたらどうだ。お前には動機もあるんだ」
「はあ、ウチに動機があるって? そんなわけねえだろ!」
「以前、お前は探偵に捕まえられたいと言っていたそうじゃないか」
「なっ……、どうしてそれを」
「この前の犯人に聞いたんだ。あの漬物石のやつにな。しかし、探偵じゃなくて悪かったな」
「そうだよ、どうせ捕まるなら探偵に捕まえてほしかったのに!」
「それは自分が犯人だと認めたということだな」
「せめて、せめて探偵が来るまで待っててくれよ」容疑者が必至に懇願する。
「そうだ、俺からも頼むぜ」目撃者は警部の肩を掴んで揺らす。「俺はあの探偵を目撃したいんだ」
「駄目だ。観念しろ、容疑者」
いよいよ容疑者は犯人にされようとしていた。
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