第3話
「あなたが犯人ですね」
そう言って犯人を指すと、彼は一歩後ろに下がった。
「ち、違う。私は犯人じゃない!」
「しらばっくれんなよ」どすの利いた声で容疑者が犯人につかみかかる。
「探偵がお前を犯人だって言ってんだ。お前が犯人に決まってんだろうが」
「おいおい容疑者ちゃん。暴力はやめてくれ」探偵が間に割って入る。「そんなことしなくても、僕が今から推理で彼を追い詰めるから大丈夫だ」
「あ、やだ、ウチったら」容疑者の声が突然女の子らしいものに変わった。そして犯人から手を離す。「ごめんな、探偵」
上目づかいで見つめてくる容疑者を片手で制してから、探偵は犯人に向き直る。
「ふん、私は犯人じゃないぞ。だいたい、犯行時刻に学校に入ったのはその容疑者だけだって、守衛が言ってるじゃないか」
「その件に関してはもう解けています」
「うお、マジかよ。さすが探偵!」またもや上目づかいを駆使する容疑者。
探偵は気にせず推理を続ける。
「あなたは、守衛さんに気付かれないように学校に侵入したのですよ」
「そ、そんなことできるわけない」食い下がる犯人。
「いいえ、できるのです。昨夜試してみました。守衛さんは、僕に気付きませんでした」
「くっ……」犯人は膝から崩れ落ちた。「そこまで気付かれているなんて」
「改めて問います。あなたが、犯人ですね」
「……そうだ」食いしばるように犯人は認めた。
「おっしゃあ! 解決だぜえ!」今まで静かに見ていただけだった目撃者が立ち上がり叫んだ。「さっすが探偵だ! その推理、俺が確かに目撃したぜ」
「だよなだよな」容疑者も彼に同調して盛り上がり始めた。「今回も超絶かっこよかった」
「ところで容疑者ちゃん」盛り上がる容疑者に探偵は聞いた。「どうしてあんな時間に学校に来たんだい?」
「えっと……、それは、その……」さっきまで騒いでいた容疑者が急に大人しくなった。声の大きさも犯人に掴みかかっていた時の半分くらいしか出ていない。「教室に課題を忘れちゃって……」
「真面目」探偵と目撃者の声が重なった。
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