第10話 飛兎竜文の魔法
松明を作れと言われても、油を塗った布やらを棒に巻き付けるだけでいいんじゃないだろうか。
まあ、魔法の練習を怠るのもよくないんだろうけど。
「まず、木の棒……まあ、熱伝導率だか何だかが低い素材ならなんでもいいかもしれないが、とにかく木の棒をイメージしろ」
カイムに言われた通り、木の棒を頭に浮かべる。
「次に、それを手に持っている状態を頭に浮かべて、現れろとか、顕現しろとか、そんな感じのことを強く念じる」
手に持ってる感じで、現れろ……と念じるが、一向に出てこない。
より一層、強く念じる。
現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ、現れろ――。
「一向に出てこないな」
「言われた通りにやったのに? 才能がないから駄目ってわけ?」
「いや、寝れない時にずっと寝よう寝ようとか考えてるとそっちに集中して寝れないアレと同じで、意識が松明を作ることじゃなくて念じる方に向いてるんだろ」
「よくわからないけど、単に念じるだけじゃ駄目ってこと?」
「念じすぎて逆に棒のイメージが霧散してる感じだろ、多分な。棒に特徴とかを与えたらうまいこといくんじゃねえか?」
「特徴って言われてもな……」
「ま、絵にでも描いてみろ。イメージを固める常套手段だ」
カイムはそう言うと、羊皮紙と黒くて小さい筒のようなものを渡してくれた。
「これは?」
「万年筆だよ。キャップを外して、こうやって書くんだ」
カイムはその万年筆とやらで線を引く。
どう言う仕組みで線を引けるのかは全くわからないけど、すごい技術なのはわかる。ちょっとした疑惑が確信に変わるくらいには。
僕は松明の絵を描きながらカイムにそれを聞くすることにした。
「やっぱり、カイムって異世界から来たの? 上の名前が苗字っていうのもそうだし……」
「そうなるな」
「意外とあっさりだね」
「意外にも魔女狩りやってないみたいだからな」
「なんで魔女を狩るのさ」
「そっちの魔女は有能なwizardだろうが、こっちの魔女は邪悪なwitchなんだよ。ま、雑談はこれくらいにして再開だ。そろそろ描けただろうしな」
カイムに促され、羊皮紙に描かれたものを眼前に映し出すように夢想して、現れるように念じる。
すると、さっきの結果とは裏腹に、火のついた松明が現れて――!?
「待て待て! 順番ってものがあるだろ!」
カイムはそれを慌てて拾い上げる。
燃え広がったら大変だからね。
「あ、で、でも、できた……」
「……ま、まあ、よくやったな。偉いぞ」
褒めてもらえたけど、なんか気まずい……。
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