第8話 唯唯諾諾の依頼

 しばらく歩くと、小さな村が見えてくる。

 村に足を踏み入れると、村の人達は物珍しそうに僕らを見てきた。

 僕はともかく、カイムは珍しい格好だからね。

 黒い外套に黒い長ズボン。少なくとも昼はだいぶ目立つ服装だ。

 そう思ったところで、1つの疑問が浮上した。

「そういえば、カイムってなんでそんな格好なの? 戦うのなら鎧とか着たほうがいいと思うし、長袖だと体を動かしにくいと思うけど」

「鎧なんか着たら体が重くなっちまう。俺は異世界こっち基準じゃ弱いから、鎧の有無に関わらず攻撃を受けちゃいけないんだ。で、この服は伸び縮みする素材で出来た俺特製の学ランだから、見た目よりは動きやすいんだぜ」

「ふうん……」

 カイムって裁縫できるのか。意外だな……なんて思いながら雑談をしていると、村人の一人がこちらに話しかけてきた。

「貴方達、冒険者ですよね……?」

「まあな。それで、何の用だ?」

「貴方達に折り入って頼みがあるのです」

「なるほど、依頼ってわけか」

「浮浪人みたいなものって言ってたのになんで依頼が来るのさ。それに、あの龍を倒すんじゃなかったの?」

 カイムは僕の質問に答える。

「冒険するからには資金が必要なのはよく知っているだろ。それを現地調達するためにこうやって依頼を受けたり仕事を探したりもするんだ。龍を倒す前に金欠で餓死したら終わりだろ」

「それもそうだけど……」

「不安か?」

「そりゃあね。その依頼で死ぬかもしれないし」

「ガキを連れてる冒険者に死ぬような依頼を頼むと思うか?」

 それもそうだけどガキなんて言い方はないだろう。

「不満げな顔だな。ま、逆に不満を感じるほどの余裕があるってことでもあるか。それで、依頼は?」

 カイムは村人の方に向き直る。

「……西の洞窟にいる魔物を退治してほしいのです」

「オーケー、了解。早速いくぞ」

「ちょ、ちょっと!?」

 僕は引きずられるように連れて行かれた。

 敵の情報も知らないのに。

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