ソウルアビリティ revenge of the losers

ただ仁太郎

第1話 剣豪将軍

 時は1565年。


義輝よしてる公!お覚悟!」


火矢の放たれた御所は燃え広がり、1万の敵が御所を取り囲む。


その御所の一室で懸命に長刀なぎなたを振るう男がいた。その男の名は足利義輝あしかがよしてる。室町幕府第13代征夷大将軍その人であった。


キン、ガキーン、ザッシュ・・・・・ブン!ドサ!


「エイ、ヤーーーー!アーーーーーーー!」


 その男、御所内の一室にて多くの襲撃者に取り囲まれるが、長刀なぎなたを振るい一合の間に2,3人を斬り続ける。その姿、鬼神のごとく勇猛果敢。正面の敵を斬り伏せたとき、背後から別の男が義輝に突きを放つ。


とっさに手の長刀なぎなたをその男めがけて投げつけ、その男もろとも長刀なぎなたは御所の庭まで飛んで行った。敵達は義輝の勢いに後ずさる。


その時、義輝は事前に側近たちに武器庫から運ばせた代々将軍家に伝わる数多くの宝刀を床に突き立てた。そして彼は腰にあった太刀を抜き放つ。鈍く輝く冷たい光はそれを名刀と物語る。


抜刀するやいなや敵の首や小手が宙を舞う。横からの攻撃を体裁きでかわし、疾風のごとく敵の銅を両断する。


「この刀はもうだめだな。」


そうつぶやいた瞬間、その太刀は敵とともに床へ叩きつけられた。視線を別の床にうつすと数多の太刀が突き立てられている。


そのうちの一本を抜き放ち、銅を、胸を、小手を、首を斬り続ける。そしてまた太刀を捨て、新たな太刀を床から抜く。それからどのくらいたっただろうか?次々と太刀で敵を斬っては捨て、斬っては捨て続ける。


共にいた30人の側近や護衛たちはすでに事切れている。彼らと共に200人の敵を斬り続けたが、ついに義輝にも疲労の影が表れる。


杖のように床に突き立てられた太刀は義輝の体重を支えている。体勢を整えようと正眼に構えたその時、御所の庭から妻の悲鳴が聞こえる。


「おのれ、卑劣な!女子おなごにも手を出すのか!」


そして激高した義輝は敵を蹴り飛ばし、妻のそばへ駆け寄る。


「すまない、お前には苦労をかけた。私が至らぬばかりに・・・」


「いいえ、あなた様はご立派です。武家のおさたる凛々しいお姿。私は幸せでした。」


・・・・義輝の腕の中には先ほどまで生きていた妻の亡骸があった。


そして、再び太刀をとり、八相に構える。敵に取り囲まれたが、まだ戦意を喪失した訳ではない。


武家の棟梁にふさわしき最期を飾ろうではないか!


わが剣はかの剣聖塚原卜伝つかはらぼくでんより治めた鹿島神流かしましんりゅうであるぞ!


三方から、敵が面を斬りかかるが、その剣激をはじきがら空きになった敵の胴に一太刀打ち込む。


しかし、先ほどからの疲労もあったのか、体勢を崩してしまう。起き上がろうとした刹那、畳を三方から体に押し付けられ、身動きが取れなくなった。


そして、畳ごと槍や剣で四方八方から貫かれ、そこで世界は暗くなった。


 その日、一人の武士が死んだ。彼は応仁の乱以降、弱体化した幕府を立て直し、再び世の中の安定を取り戻し、民たちの笑う世の中を作るために、各地を転戦した。


しかし、その最期は私欲にくらんだ幕府大名の襲撃をうけた壮絶なものだった。征夷大将軍足利義輝…享年30。


そしてその事件は本格的な戦国時代の到来でもあった。


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 はじめまして!作者の『ただ仁太郎じんたろう』です!読んでいただきありがとうございます。今回、初投稿作品となります。もし、よければコメントなどいただけると今後の励みとなります。☆などいただけたら、飛んでよろこびます。今後もよろしくお願いいたします。




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