・第5集【世界は怪獣を見た~核兵器、宇宙開発、環境汚染、そして怪獣~】
「そんなに革命が好きになったのか、ゲバラー」
(キューバ、革命家フェルナン・カストロが革命怪獣ゲバラに語る記録映像)
1954年。水爆実験の結果、破壊怪獣ガグラが覚醒。核実験に参加した在日米軍エセックス級空母シャンバラを追い、日本に上陸します。
(銀座・和光時計台を食いちぎり、口から爆熱光を放ち戦車隊を蒸発させる、骨棘の背鰭と冷えた溶岩のような黒いケロイドの肌、小さな耳を思わせる角・疑外耳角とケロイド化で引き攣った憤怒の形相を持つ巨大直立恐竜型怪獣の映像)
これにより日本は第二次世界大戦以来の大被害を受け、在日米軍と創立直後の自衛隊は壊滅的打撃を受けました。アメリカの核実験で生まれた怪獣がアメリカの空母を追った結果日本に上陸した事は大きな問題となり反米・反安保運動が大変に高まりましたが、在日米軍が壊滅的打撃を受けたとはいえ最後まで戦闘を継続した事で、辛うじて日米関係の破綻は免れたと、当時の関係者の複数の記録が示しています。
平田博士の発明・原子運動停止装置でガグラが凍結され一旦日本に平穏は戻りましたが、それにより一時的にアメリカのアジアにおける影響力が低下した結果翌年第二次朝鮮戦争が勃発してしまいます。しかし、同年ソ連が行った核実験で出現した氷山怪獣キロギランがシベリアから朝鮮半島に南下し、両軍が蹂躙され戦力を失い済し崩しに再停戦が成立しました。
(済州島沖合に消える氷の棘を生やした背中を見送る途方に暮れた大韓民国軍人の姿。当時の写真)
キロギランは朝鮮半島縦断後日本に襲来し原子運動停止装置を破壊した結果復活したガグラにより倒されましたがこれによりガグラが日本の小笠原諸島に定住、更に宇宙怪獣ガガラン、精霊怪獣マハロア、大空怪獣デモドン、守護怪獣ダドラ、秘境怪獣バルムラーダ、人食怪獣ベルバ、原子猛禽コンダロン、金光星龍ズメルゴ等この後も様々な理由により様々な怪獣が出現します。大怪獣時代とも呼ばれる、怪獣頻出期の到来です。怪獣は核実験などの理由から世界各地に現れましたが、特に日本周辺に多く出現しました。四大公害怪獣など、激しく経済成長する日本の環境汚染が怪獣出現を刺激した可能性が大であると当時から科学者達が指摘し、環境対策を推し進める契機となりました。
(超音速飛行の衝撃波を偏向させて武器とし己を攻撃する戦闘機を逆に撃墜する翼竜ディモルフォドンを巨大化させたような飛行怪獣の映像)
(宇宙船のような無機質な頭部とちぎれた化学繊維やパイプのような襞や触手を全身に纏った怪獣とモスクワ郊外で激突する縄文土器のような呪術的な意匠の甲羅を纏う亀型怪獣の写真)
(ニューヨーク上空で空中戦を繰り広げる、無数の目と嘴をランダムに生やした腫瘍の塊の如き異形の頭部と多数の足を持つ巨大なコンドル型怪獣と、様々な蛾や蝶の特徴を併せ持つ極彩色に光る美しい昆虫型怪獣の映像)
(人間を食い荒らし火事からエネルギーを吸収する、尖った角と二枚の板状の大きな疑外耳角を持つ四足歩行の怪獣の映像)
(チベット・ポタラ宮に迫る手足の間に滑空皮膜を持つ巨大単弓類怪獣の写真)
(富士の裾野に集った数多の怪獣の中心に立つ、他の怪獣の倍は巨大な四足歩行四枚翼の黄金多頭龍の映像)
戦前のアメリカに出現した巨大猿人ギガリラや戦後すぐのアメリカに出現したガボンバリザードは軍隊で打倒可能なものであり、ギガリラを基に作られた改造猿人マンモスギガリラ・マリンギガリラも超人であれば打倒可能なものでしたが、これら怪獣は軍隊では歯が立たない、超人ですら強力な超人でなければ小型の怪獣でも打倒が難しい高い破壊力と防御力を持っていました。実際、これまでの巨大生物と怪獣を分類する根拠は「口径88mmの砲、乃至500kgの爆弾で殺傷できない事(当時の基準)」でした。大量破壊兵器や環境汚染の影響、文明の発達による隔絶した地域との接触などが、これまでにない強さの怪獣出現をもたらしたのです。
怪獣達がしばしば互いに争い合う性質を持っていなければ、また守護怪獣ダドラ、精霊怪獣マハロアが比較的人類に友好的でなければ、当時様々な最新兵器が怪獣退治に投入されては失敗している中、アメリカ国防省が核兵器使用の可能性と偶発的核戦争のリスクを真剣に議論していた事が後世明らかになっている為、後の
しかし、各国で反核・自然保護運動が繰り広げられましたが、核兵器を手にしなければという国家的な恐怖と欲望は止まりませんでした。
「キロギランが最終的に日本に渡り復活したガグラによって倒された事が、我が国の核兵器がアメリカの核兵器より威力に於いて劣っているのではないかという風説を招いているが、断じてそのような事は無いと証明し続けなければならない」
(当時の書類と、それを読み上げるベリヤ第一書記の映像)
それどころかソ連のベリヤ党中央委員会第一書記はこのように発言し、更なる核兵器開発を強行。中国がインドとベトナムに対し「敵対した国家の近隣で核実験を行い、発生した怪獣を敵対国家側に誘導する」という行為に及んでいた事が暴露され一触即発の事態を招き、更にキューバにおいて革命家フェルナン・カストロがメキシコで発見した怪獣に革命怪獣ゲバラーと名付け友情を結び革命に参加させた事で、国家による怪獣の戦力化という概念が生まれます。核兵器と国家怪獣によるキューバ二重危機です。
(ピッグス湾に立つ、二足歩行の羽毛恐竜や恐鳥類に似た姿を持つ怪獣の映像)
(「怪獣の同志!」というタイトルのつけられた当時のプロパガンダ写真。穏やかな表情を浮かべ寝転ぶ革命怪獣ゲバラーの顔に、両手を広げて満面の笑みのフェルナン・カストロが羽毛にめり込むようにして抱きついている)
これとキロギラン事件がきっかけで大韓民国が魚龍怪獣ヨンムル、朝鮮人民共和国が鋼鉄怪獣ザリグエを国家怪獣として馴致しようとして70年代末期の第三次朝鮮戦争とその結果による両国合併による新国家ユナイテッド・コリア誕生の原因となるのですが……
最終的にキューバ二重危機は、革命前のキューバに利権を持っていたアメリカ企業・エデンフルーツ社が自社所属超人アダムマンによるフェルナン・カストロ暗殺を目論んでヒーロー問題も絡んだキューバ三重危機に発展した後、回転ドアにマントが絡まったアダムマンが介入した秘密結社・【
(回転ドアにマントが絡まった状態で射殺されたアダムマンの写真)
(条約を締結する各国の政府要人の映像)
(
またこの時代、宇宙開発も急ピッチで進みました。195
そしてそれはICBMという兵器における西側の不利というミサイル・ギャップ論争において、1960年代のU-2偵察機による偵察結果で、事実単純な数では西側が
無人人工衛星ヴァンガード計画失敗、無人人工衛星エクスプローラー計画成功、有生物人工衛星ジュピター計画の超猿宇宙飛行士チンパンジー・ベック号の実験失敗による猿恨怪獣ドンパンジー化、有人人工衛星マーキュリー計画成功と、追いすがりながらも常にソ連の後塵を拝していたアメリカ合衆国は、今度こそ「先の成果」を上げるべく有人月面探査アポロ計画を発動します。
「まず私は、今後10年以内に人類を月に着陸させ、安全に地球に帰還させるという目的の達成に我が国が取り組むべきと確信しています。この期間のこの宇宙プロジェクト以上に、より強い印象を人類に残すものは存在せず、長きにわたる宇宙探索史においてより重要となるものも存在しない事でしょう。しかしこのプロジェクト以上に完遂に困難を伴い費用を要するものもないでしょう。が、この星とこの星の外を知るに至った存在として、これほど挑むに値する事も無いでしょう。宇宙空間から地球を見る視座を得る事により、人類は地球に起きる怪獣災害を解決する為の更なる力を得る事でしょう」
「我々が10年以内に月に行こう等と決めたのは、それが容易だからではありません。寧ろ困難だからです。その困難が、我々の持つ行動力や技術を最善といえるものとし、
(アポロ計画を発表するスコット・F・ケネディ大統領の演説)
我々、人類、結集。それらの言葉は、この計画がソ連への対抗であると同時に、国内の人種と超人を取り纏める意図を持つ事も示していました。共に夢を見よう、同じ国の人類として、と。
そして同時に、宇宙開発が人類に怪獣と闘う力を与える、
これに対してソ連は歴戦の超人宇宙飛行士ユリス・ガガーリンによる有人月面探査NL計画を構築したのですが……
「現行の人類の技術では『単に行って調べ、ものを持ち帰る』有人でも無人でも変わらない以上の事は出来ない」
突然そう発表し有人月面探査ではなく無人月面探査と衛星軌道での研究を優先すると発表し、計画から降りてしまいます。
これが、NL計画の失敗による超人宇宙飛行士ユリス・ガガーリンの宇宙怪獣ガガランへの変貌が理由だったことは、ユーリナ・ユリスノワ・ガガーリン亡命事件以前は極秘とされていました。
その結果、1971年、
「これは宇宙にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩である。私にとっては小さな一歩だが、私達にとっては大きな一歩である。私達人類がともに歩んだ、偉大な一歩である」
これら宇宙開発競争は冷戦期の対抗心、長足の進歩を遂げていたロケット・ミサイル技術、そして超人の力が大きく関係していました。
最終的にアポロ13号で非超人による宇宙飛行が成功しますが、続くアポロ14号の頃には
それでもそうして創立された
(アメリカの反ヒーロー的論調で知られる新聞・デイリービューイングが掲載した風刺画。怪獣の足跡の中にぺしゃんこになった架空のヒーローの姿)
強大化する怪獣に対し最新兵器は愚か並の超人戦力でも人口密集地突入前の阻止には攻撃力が不足しており、人類に協力的な怪獣のうち精霊怪獣マハロアは環境汚染により力を失いつつあり、守護怪獣ダドラと革命怪獣ゲバラだけが頼りという状況でしたが、怪獣出現頻度の上昇はその限界を超えつつありました。
(閃光と共に姿を現す、銀色に銅色と金色の太陽を思わせる模様が入った金属色の肌に宝石のような光る目と幾何学的な仮面のような顔を持つ怪獣と同等の体格を有する巨人)
そこに、恒星人ハイパーマンが現れたのです。それは同時に日本における60年新安保闘争の最大焦点でもありました。
(発電所を襲撃せんと可動する三本の角から雷を放って暴れる怪獣に対し、光の壁で雷を払い、白兵戦で打撃を与え、腕を振る事で出現させた三日月の如き光の刃で角を切り落とし、そして両腕を交差させるように振るって発射する十字型の光を打ち込んで怪獣を爆発四散させるハイパーマンの勇姿。その間、僅か数分)
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