・断章①【1945年5月14日、伯林】
「は は は は は は は は は は ! !」
「くうっ……独裁者め!」
東西ヒーロー連合空襲によりベルリンは真っ赤に燃えていたが、尚激しく抵抗を続けていた。
中でも
KABOOOM!!
「ザーイカーッ!?」
そしてまた、連合国側ヒーローに悲鳴が上がる。
【
「テスラーの人形! もう一先ず後は君だけだぞ!」
ヒューマンライト、ウォーデングリフ・タワーを思わせる笠のように広がった兜が特徴的な機械の鎧を纏う人造人間。嘗ての火星人襲来時に防衛兵器として天才ニコライ・テスラーに製作されるも起動せず、後に暴走するもアメイジングマンに止められる事でその仲間となった最初期のアメリカン・スーパーヒーローに対し、【
「そうだとしても、正義として勝つだけだ!」
ヒューマンライトは猛然と電撃を放って攻撃した。アメイジングマン達は太平洋で戦っている。ソ連軍は壊滅的打撃を受けつつある。ベルリンに強襲空挺降下した他のアメリカン・スーパーヒーロー達は、ここまでの戦いで戦車超人ヴァイスマンを倒したとはいえゲルマンニンジャ【
「勝てないよ! 君は! ボクに!」
「ぐあっ、ごはあっ!?」
しかし砕け散った鉄骨や兵器の残骸を避雷針めいて使って【
「何故なら、ボクこそは人の夢だからだっ!」
「人の夢……だと!?」
装甲に罅を入れられ、全身から火花を散らしながらヒューマンライトは呻いた。混乱する。戦前の平和を砕いて、それが人の夢だと?
「憎い奴を叩きたい、悲しい、恨みを晴らしたい、やり返したい、誰かが幸せになれば誰かは不幸になるという事を忘れた奴等に思い知らせたい、勝ちたい、栄えたい、誇りたい、仰ぐに値する信じるに値するものを持ちたい、誇りを持ちたい、生きる意味が欲しい、その為なら死んでもいい、皆がそう思っている。それが人類の脳構造的習性なんだ。ボクは人の心を操っているんじゃない。人の願いを聞き入れているんだ。皆の願いを束ね背負い叶える為に戦っているんだ! ボクが、皆を救うんだ!」
「それは人の律すべき欲望だ、願いなんかじゃ、ぐわああああっ!?」
BLATATATATATATA!
その場に落ちていた重機関銃を、己こそが人の理に沿い人の世を担う側であるからだ、皆の為に負けられない英雄なのだと浪々語りつつ連射しながら【
「君は何の為に作られた? 火星人から人類を防衛する為だ。本懐を果たしていない、もう果たせない君が言うのも滑稽だが、だから人間同士の争いや感情なんて下らないと? だが言おう。君、火星人と戦って人を生かすという事は、それはつまり人類には火星人を殺してでも生き延びる値打ちがあると信じるが故だろう。命とはそういうものだ。愛という名の優先順位、絆という名の派閥、どれを生かしどれを殺すか。君もその取捨選択を、生殺与奪をしに来たのだろう! 君達の言う正義も公正も自然法も、結局の所その天秤に乗せる分銅を巡って相争うものでしかない。この星は狭く有限で、殺さなくても人は死ぬ。未来を作るには、未来を与えたいもの以外を切り落とすしかないんだ!」
「っ……!!」
GASYAN……SYBA!ZDDN!
GASYAN!SYBA!ZDDN!
SYBA!ZDDN!
咄嗟に電磁防壁を展開するヒューマンライトに、【
電磁バリアと装甲を破壊されながら爆炎の中、ヒューマンライトは呻いた。所詮アメリカンヒーローの正義も全体主義の戦争も、取捨選択し生殺与奪をする行為に変わりは無いという言葉を噛み締め食い縛る。
「ああ、そうだ。俺は目覚めるべき時に目覚める事も、戦うべき時に戦う事も出来なかった、助けられた側のポンコツだ。だがな……」
だがと言う。立ち上がる。食いちぎろうとする。その言葉を。
「
ヒューマンライトが立ち上がった。人の世の光たらんと、今がそうだとしても、今を肯定したお前ではなく、より良き明日が訪れる可能性が勝たねばならんのだ、例え今の戦士でしかないこの己の命を燃やし尽くしたとしても。
機械の鎧と機械の体が燃え上がるのも構わず最後の電力を集束する。
二つの、人の願いの為に作られた人造の魂がぶつかり合う。光を信じる唯一つの至純なる魂の輝きに、数多の魂の器は目映げに目を細め。
そして、戦いの末。
戦後、己の今をこそ正しいと信じる者達の冷戦が始まる。
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