第三章 霞ヶ丘小女子児童自殺騒動15
チャプター30 五時間目開始六分前
「じゃあ、先生がその宗教にお金を貢いでるってこと? それで愛ちゃんを脅してるかもっていう。たぶん良が言ってたんだよね?」
「良? まあ、そうだけど。まだかもって段階。それを今から調べるんだ」
「優しい男には注意しろってママ言ってたなあ」
「それ違うと思う」
くすくすとその場に笑いが生まれた。絵里が笑っている。松司は満足する。自尊心が満たされる。
見たか。良夫。ざまあみろ。お前が変に隠そうとするからだ。
何が見たかで何がざまあなのかは松司の中でも説明が付かない。しかし、最近調子に乗ってる良夫に対する憂さ晴らしが出来た気分だったし、最近いいとこがない自分自身を挽回できたような気分になった。
廊下から曲がった時点で良夫とレンの会話は聞こえていた。崎坂愛が元町に脅されてるか何かされているかも。それには宗教が絡んでいる。このくらいは漠然とでも掴めた。その後、良夫からの説明はあったが、先程の話と食い違っていた。入信を勧められている、なんてものより、先程はもっと危うげな感じがした。隠しているな、と確信した。
だから絵里に話した。
――なあなあ、知ってるか? 元町って……。
と。
謝ろうと思っていたら、絵里がずっと休んでしまっていたのだ。もう一度謝るタイミングを逸してしまっていた。今更あの時のことを持ち出し、頭を下げるのもしたくはなかったし、じゃあ他に何かないかとずっと考えてはいたのだ。ちょうどいいタイミングだったろう。
実際、元町などどうでもいい。
ガラリと扉が開いた。ひゅっと背中に寒風を感じ、松司は振り返った。
そこに、レン、愛、それから良夫が立っていた。良夫と目が合った。
「じゃあ、着替えて行こうか」
「そだね」
何故か居心地が悪くなったが、目の前で頷き合う二人を見てどうでもよくなる。
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