第6話 戦闘形態

 タクは、左手に長刀を手にし、甲冑を身に纏っている優奈の美しい姿に見惚れたが、そこから溢れる迫力が増していることにも気づいて、改めてステータスを確認した。

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名前:優奈

年齢:十六歳

職業:精霊巫女

契約精霊:タク

状態:正常 (戦闘形態)

生命力:330/330

呪力:750/750

戦闘力:60 + 180

呪術攻撃力:80

防御力:105

素早さ:108

装備:狼牙剣 (長刀形状)、狼牙鎧

備考:

攻撃呪術 狼牙剣の形状変化、呪力付与、斬撃波、刺突閃

回復呪術 止血、鎮痛、生命力回復 (LV1)、解毒 (LV1)

特殊能力 威圧  

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「なんだ、このステータス……ものすごい上昇じゃないか……呪術や能力も豊富だ……」


 彼は呆れるように呟いた。


「……タク様は初霊なのですね。精霊巫女が真価を発揮するのは、戦闘形態になったときです。通常の能力では、呪具を武装した男性の戦闘員に劣ります。しかし精霊巫女が呪力を使用してその形態を変化させたとき、一時とはいえ、遥かに強力で、かつ特殊な攻撃能力を身につけるのです、また、防具が発現したことからも分かるように、体は強固になり、そして痛みもあまり感じず、戦闘に集中することができるのです。それに、回復呪文が使用できるようになることもあります……具体的にどのぐらい強くなったかは、精霊様であれば確認していただけるとは思いますが」


 巫女達の教官である茜がそう説明した。


「それじゃあ、他の巫女……ナツミやハルカも強くなれるのか?」


 タクがそう言うと、彼女達はお互いの契約精霊と目を合わせて頷き合い、呪文を唱えて戦闘形態へと瞬時に変化した。

 ナツミは、黄金色を基調とした細身の甲冑に黒のラインが入っていて、豪華で格好いい印象だ。

 大きな弓を手にし、背には矢筒を背負っている。

 ハルカは、全体的に青っぽく小柄な甲冑で、やはり小柄な彼女によく似合っている。

 左手に、長い杖を持っており、その先端には巫女鈴が付いていた。

 それぞれのステータスを確認する。


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名前:夏美 

年齢:十五歳

職業:精霊巫女

契約精霊:凛

状態:正常 (戦闘形態)

生命力:290/290

呪力:690/690

戦闘力:48 + 130

呪術攻撃力:75

防御力:90

素早さ:90

装備:金狐弓、金狐鎧

備考:

攻撃呪術 金狐弓の大型化、呪力付与、狐火付与

回復呪術 止血、鎮痛、生命力回復 (LV1)、解毒 (LV1)

特殊能力 幻惑、火炎球


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名前:春花 

年齢:十三歳

職業:精霊巫女

契約精霊:雪愛

状態:正常 (戦闘形態)

生命力:240/240

呪力:1050/1050

戦闘力:33 + 60

呪術攻撃力:100

防御力:60

素早さ:75

装備:水竜杖、水竜鎧

備考:

攻撃呪術 水流壁、水弾、水流爆、氷結、氷弾、氷壁

回復呪術 止血、鎮痛、生命力回復 (LV2)、解毒 (LV2)

特殊能力 水毒、濃霧

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 ナツミは火炎系と幻惑系、ハルカは水系の呪術が使えるようで、特にハルカの呪力が際立っている。

 また彼女だけレベル2の回復呪文が使えるのも、タクの目には凄いように映った。

 改めて優奈のステータスを確認すると、攻撃力や生命力が高く、武器も接近戦用なので、確かに茜が言う通り直接攻撃に特化したタイプのようだった。


「優奈、君は近距離で直接敵と戦う事になりそうだけど、大丈夫か?」


「はい、元々私は武士の娘で、長刀や剣道は習っていましたので多少は心得があります」


 おしとやかで礼儀正しいイメージがあったのだが、意外と怖い物知らずのようだ。

 他の巫女も、それぞれの精霊から優奈のステータスの説明を聞いているようだった。

 ちなみに、精霊巫女や元巫女では、ステータスは見えないらしい。

 一通り確認が終わったところで、模擬戦をやってみよう、ということになった。

 ここで模擬戦について、茜から説明を受ける。


「精霊様は、契約巫女の戦闘力や呪術攻撃力の上限を変化させることができるはずです。それは本来、精霊様と巫女の主従関係を明確にするためとも言われますが、このような訓練においてそれはとても役に立ちます。戦闘力や呪術攻撃力を五分の一に制限すれば、全力で戦っても命に関わるような大きなケガは負わないからです」


「……なるほど、確かにそれなら比較的安全かもしれないな……」


 タクは、模擬戦と聞いて心配していたので少し安堵する。


「それで、今回は優一人に対し、ナツミ、ハルカの二人で戦ってもらいます」


「……えっ?」


 それを聞いて、タクが困惑の声を上げた。


「理由は二つあります。一つは、限られた区画内での中・近距離戦闘戦とするため。もう一つは、優がナツミとハルカの手の内を、見学していたので知っているからです」


「……いや、そうだとしても、それは流石に……」


 タクは躊躇したが、そこでキツネ型の精霊であるリンから指摘が入った。


「タクさん、模擬戦などの訓練では、少し厳しめの方が良いんですよ。だって、実戦では魔物や妖魔達は手加減なんかしてくれないのですから」


「実戦って……いきなりそんなのに駆り出されたりするんですか?」


「はい、もちろん。一回生でも、三つ星ぐらいまでの魔物ならば戦わされることがありますよ」


「三つ星? それってどのぐらいの強さなんですか?」


「そうですね、前世で言えば……トラや熊ぐらいでしょうか」


「トラや熊!?」


 タクは思わず声を上げた。いくら武装しているとはいえ、少女達が弓や長刀で戦うのはあまりに危険だと思ったからだ。


「まあ、頻繁にあるわけではありませんし、さすがに単独では無くチームを組んで、という話になりますが……それを考えれば、模擬戦など優しいものです」


「なるほど……分かりました。優もそれでいいんだな?」


「はい、私も精霊巫女になったらどれだけ皆と勝負できるか、ちょっとワクワクしていたんです!」


 優奈、以外と戦闘好きなんだな、と、タクは少し苦笑した。

 条件:戦闘力、呪術攻撃力を五分の一に制限。生命力の残りが三分の二まで減るか、「降参」したらその時点でその者が負け。

 このルールで、一回生同士の模擬戦が開始された。

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