削りかすと乳化

親指にささくれとかは一つもなくて、せめて小指が二枚爪なら

ツナマヨのマヨがあんまり好きじゃない油が音を立てるみたいで

まばゆくて遠かったから遮光板を通さなくても見ていられたのに

触れないで終わるくらいの距離感を保って歌を歌って生きる

白線を一緒に跨いでくれなくていいからずっと背中を見せてね

急停車するときとかの金属音に歯を砕かれて死んでしまった

外国の言葉でわざと綴っては書き直したりもするラブレター

百年も前の夜空は今よりも暗かったことおぼえていない

眠る 起きたら君がもう僕の墓に入っているといい

香水をたくさん嗅いで咽せるのが可愛らしくて大瓶を振る

ゆで卵と玉ねぎドレッシングを混ぜるとマヨネーズになるらしい

源泉に溶けた硫黄の結晶をあつめて眠る いつかしぬため

長生きをするとだんだん軟化していくまでの角に恋をしていた

吐き出したトニックウォーターの甘さで地球の一部が溶けてしまって

ぐるぐると回る環状線のドアは開閉ばかりでうみがみえない

ベルーガの頭に呑まれ僕たちは世界の果てへもいけなくなって

消えかけたポスカの色を重ね塗りするとなくなるうつくしい日々

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る