夢からさめる

切り口で変わるトマトの断面に見たり聞いたり話したりする

すきだったアイドルがしんでしまったよ はやく次の推しを見つけなきゃ

手を繋ぐ位置でわかれる街路樹の桜並木はかわらずきれい

読み終えた小説をまだ読んでいる ページを繰るごとに来たるおしまい

新しい事が少しもない僕等 もう何度目に食べた苺パフェ

ラキストを吸えるのがそんなに偉いのか 私も肉じゃが作れますけど

不夜城をまわしつづける人間が左手で姪を抱き上げている

スライスのトマトが今日も食べられないひとに押しつけられる大皿

おなじだけ体温を見てかんがえた 君を信じているかいないか

パスタならぜったいお箸で食べたいよ生まれながらに日本人だし

造詣があるから僕のゴンドラも夏にはなくなってしまうらしい

かさぶたが見えないために触れすぎた人差し指の付け根が痛い

火って君の瞳みたいに青いところがいちばん高温らしい

神様も知らないでいてほしいから日記に書かない歌詞とかがある

遅咲きの桜を僕の手のひらにのせてもすぐに吹き荒れる風

いつまでも再生しないつま先の神経はもう魚の餌に

閉店の音楽を聴く じゃあきょうはもうおうちとかにかえりましょう

この前の大雨とかでじっさいに家なき子になっちゃったんですよ。

構内の喫煙所を見つけられない 違法駐輪で蒸すニコチン

白線の外側にいた雨たちをあつめて早し街の溝川

この街の聖母神様救世主一つ残らず抱きしめても灰

よく冷えたプリンを抱いてねむるなら嘘なんかつかなければよかった

お見舞いの花束を君にあげたい 君は昨日花粉症になったらしい

ガス代がプロパンガスで値上がりをするから切れた電気を買えない

平日のまんなかいちばん夜の日の世界の果ての映画館で待つ

夢 おわってしまったことだけが鈍く光って小指に突き刺さる針

車窓からあまたのチューリップ畑見てとおい場所まで来たねとわらう

ぜったいに消えない街で瞳ごと時間を止めてあげればよかった

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