善意の糖度

沙雨ななゆ

あの子

花とかが似合うあの子のすぐ跳ねる前髪を繰る指のおぼろげ

凍て緩むまだ白い地へ背のびする茶色いあたまを小指で撫ぜ

花影をちいさく映す空は藍あの子のかおの影もあいいろ

真剣に0.5ミリで走り書くその横顔にわずか陽が差す

あの子が無理にごめんねと笑うから奥歯のキャラメル挟まったまま

すこしでも触れたらこぼれてしまうからすこしずつ飲み下すしあわせ

自転車の合鍵失くしてしまったように僕とあの子に隔たる距離

半透明のリンゴジュース反対側にうつるあの子の親指がすき

にわか雨明けたようだよ鉛色の差し込む光がなんかくるしい

淡色の透けた光に手をかざす少女の瞳に果てなき旅路

理由なく白詰草の花冠あむあの子の指は幼いままで

片耳の青いイヤホン無理に挿しとおい異国の電子音聴く

闇へ燃ゆかすみのはなの残り香はわずかに散る大花のうらなり

野辺にほどく白い彼岸のことのはにうみの向こうの方翼を想う

無垢なめにうつる色は青かれど手を伸ばしても空へはとどかぬ

あの日みた夢はキラキラ星の味今日というひを覆い隠して

交差点雨から逃げるように行く 君と渡ればこわくなどなく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る