第22話 飛騨高山旅行記2話

 名古屋発ワイドビュー飛騨は空席が目立ちガラガラだった。通路を挟んだ反対側の座席に、おそらく定年を迎えたであろう60代の四人組の男性たちが座っていた。おつまみやらビールやらを飲んだり食べたりしていた。楽しそうだった。元会社の同僚たちだろうか。

 窓際の席に座った僕は新幹線で買ったカツサンドを食べる。おいしい。高かったけど買ってよかった。ワイドビュー飛騨は岐阜駅まで後ろ向きに走った。そして岐阜県からまた前向きに走って高山駅に向かった。線路の関係上そうなるのだ。たぶん…知らんけど。

 ワイドビュー飛騨は山の中を走り、高山市内に入ったところで一面雪景色に変わった。見渡す限りの雪。木にも建物にも白い雪。僕は雪が好きだ。美しいから。大阪には雪はない。出来れば雪国に生まれたかったとずっと思っていた。でも雪国には雪国なりの事情があるに違いない。雪国の人には「雪国に生まれたいなんてバカなこと言わないの。だって雪かきしないといけないのよ」と言われるかもしれないが。でも僕はただ漠然とした雪国への強い憧れがあるのだ。

 高山駅に着いた僕は、駅を出て、ただなんとなく駅のそばの観光案内所へ行った。そこでバスの路線図と簡単な地図をもらった。そこで簡単な会話をしたが、当然案内員は大阪弁ではなかった。当たり前だ。ここは岐阜県高山市だ。

 遅すぎるが、僕は旅行に来たことにやっと自覚が持てた。これから非日常が始まるのだ。このあとの夜、僕はホテルの大浴場で、とんでもない非日常を味わうことになるとは、このとき、予期していなかった。

 チェックインの時間まで後三十分ぐらいあるので、僕は高山濃飛バスセンターの時刻表を見に行った。この高山濃飛バスセンターを上手く使うことが飛騨高山旅行のコツだと、僕は思っている。

 僕は高山濃飛バスセンターで漠然と時刻表を見てたら、70代ぐらいの老夫婦が口げんかをしていた。けっこう激しかったが30秒ほどで終わった。終始おばあちゃんが勝っていた。二人はケンカが済んだあとなんともなかったようにたたずんでいた。

 ホテルのチェックインの時間がきたので、ボストンバッグとリュックを背負い、ホテルに向かった。ホテルに着き、チェックインを済ませ、部屋に入った。シングルの喫煙の部屋だった。タバコは吸わないので禁煙が良かったが、予約の際に喫煙にしてしまったのだろう。僕のミスだ。受付に内線して部屋を変えてもらおうかなと思ったが、部屋に入ってしばらく経っていたので、やめた。我慢しよう。疲れていたので、部屋で読書して過ごした。樺沢紫苑著、『アウトプット大全』を読んだ。アウトプットの効果や活用法が書かれていて、とても勉強になった。二時間ぐらいたってお腹が空いてきたので、地元の居酒屋に行くことにした。

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