第12話 宿命

 今日診察に行ってきました。十年前の高校生の頃の出来事を話しました。このことは主治医にずっと十年間黙ってました。恥ずかしくて話せなかったのです。内容はイジメられていたことです。でもなぜかうまく話せませんでした。そしたら主治医が医学的に見て僕にそのイジメは実際に起こっていなくて、90パーセントはあなたの妄想と幻聴ですと言われました。いじめは実際には起こっていなかったのです。


 でも僕はイジメられていたと思っています。でも主治医の意見を聞いてから、妄想かもしれないなと思いました。病院から帰るときもずっとそのことを考えていました。統合失調症の人の過去はその人にとってパンドラの箱です。統合失調症の人にとって過去はミステリーです。すべてはミステリーのなかに包まれています。合理的な理屈では統合失調症の人の過去は解明できないかもしれません。


 なので僕は今後、自分の過去についてなるべく考えないようにします。主治医にも過去のことは考えるなと言われました。


 統合失調症は現実と妄想の区別がつかなくなる病気です。


 僕は今までイジメられていたという妄想の世界に生きていたのです。


 今日このことを主治医に話せて良かったです。


 自分の頭の中身は現実世界と少し違うのかも知りません。


 主治医と話すことであらためて妄想の世界と現実世界の区別がつきました。  


 僕は統合失調症という呪縛から一生、逃れることができないのかもしれません。


 でもそれも運命です。


 

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