第11話 スキルを確認してみた
『ラビィ』を狩り続けていると、不意に通知が飛び込んできた。
「あれ? コールかな?」
どうやら誰かが俺に通話を申し込んできたみたいだ。画面がポップし、通話を許可するかどうか求めている。ここで、画面ありや無し、拒否なんかも選べる。狩りで手が離せない時とか拒否したり出来るみたい。こういうのは離れたフレンドやクランメンバーに話しかけるのに使われる。
まぁ誰か……というか、可能性があるのは一人しかいないけど……
と、俺は思いながら通話を求めてきた名前に目をやると『アンバー』の名前が表示されている。あの時にフレンドになったし、フレンドはアンバーただ一人なんだから通知が来るのはアンバーしか有り得ない。
俺が許可すると、半透明の液晶画面のような物にアンバーの姿が浮かび上がる。
「おー! アオイ! 今日も楽しんでる? で、どう? 何か困ったことないかい?」
「まあ、楽しんではいるけど、困ったことは特にないよ? まだ狩りもクエストも始めたばかりだし……」
「そっかー! 何か困ったこととかあったら言いなさいよ? ボスが倒せないとか、行く場所がわからないとか、素材集めが大変、とか遠慮なく言ってね!」
「ありがたいんだけど、どうして俺にそこまで構ってくれるんだ?」
「んー……私が『Lunatic brave online』を始めたばかりの時に入ったクランがあるんだけど、そこで初心者だった私に皆が手厚くしてくれたから……かな。だから初心者が困ってるとほっとけないのよ! ま、大昔の話だけどね……って通知来ちゃった! バイバイ!」
プツ! ツー……ツー……
切れてしまった。モヒカン野郎も名前を知ってたくらいだし、アンバーは『Lunatic brave online IV』の世界では有名人なのかもしれない。フレンドも多そうだな。ま、困ったことがあったら聞いてみよう。とは言っても、まずは自分で手当り次第やってみてから、だけどね。
「と、そうそう。クエストは達成してるかな」
そういえばクエストを進めてる最中だった。『ラビィ』を狩ればいいけど、何匹狩ればいいかよく調べてなかったな。
と、思った俺はクエスト表から詳細を確認しようとする。が、その時に『セフト平原でラビィを倒せ』と書いてあるメインクエストの横に『complete』とスタンプがバァン! と押されていることに気がついた。
「あれ? いつの間にか終わってるみたいだな。まあ、いいか。あとは報告すればメインクエストは終了。次のクエストが始まるってとこかな」
じゃあ報告して次のクエストでも始めるかと思ったが、メニュー画面を開いたついでに、ステータスを確認することにする。
────────────────────
Lv:10(+45)
STR:1
INT:1
VIT:1
AGI:1
DEX:21(+20)
Unique Skill
Permanent Skill
《千発千中》《獣の天敵》
────────────────────
おお! レベルも上がってるし、新たなスキルも取得してるみたい。レベルの表記の横にあるのはボーナスポイントかな? これを割り振ることが出来るみたいだ。ということで早速全部DEXにぶち込んでやる! 俺はこれで生きてくと決めたんだ! ま、まあ最悪アカウントを作り直せばいいよね……
で、次はスキルの確認……と……
俺はまずは《千発千中》と書かれたスキルをタップすると画面が切り替わった。
『最終命中率を二倍にする』
これだけ? 俺にこのスキルは果たして意味あるのか? 元々DEX極だから命中率に補正はあるし、その命中率自体も見えるような数値で現れないからなぁ……
そもそも『ラビィ』を狩ってる間は矢を外さなかったし、命中率が二倍になってどうかというと疑問が残る。まあ、回避率高いモンスターと戦う時に効果を発揮するのかもしれない……知らんけど……
で、次は《獣の天敵》と……
『獣族のモンスターに与えるダメージを増加させる。また、受けるダメージを減少させる』
うーん……これもよく分からん。何パーセントとか表記されてないし、どれくらいの効果があるのだろう。そもそも受けるダメージはまだしも、与えるダメージとか増えても元々のダメージが低い俺にとってはあまり意味の無い効果になりそうだな。
「外れかなぁ……」
俺はつい呟いてしまった。獲得出来たスキルは俺の役にあまり立たないように思ったからだ。だからと言ってまだ『Lunatic brave online IV』を始めたばかりだし、DEX極で頑張ってやってみようと思っているのは変わりない。今後はもっと役に立ちそうなスキルも手に入るかもしれないし、やり直すにはまだ早いだろう。
「さて、一旦戻るかな」
初心者の弓の耐久度もかなり減ってしまったし、クエストも達成しているから次のクエストも進行することが出来る。ちょうどいいタイミングかなと思った俺はセフトの街に向かった。
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