第10話 モンスターを狩ってみた

 領主の館を後にした俺は門番のトーマスの所へ向かった。俺の他にも館から出てきた者がいるが、何故か皆頭頂部を触っていたのは気の所為ではないだろう。俺も気になって触ったし……ちなみにトーマスがいる場所は、大通りをまっすぐ向かえばすぐだから迷うことなどない。走って向かう者もいるが、俺は別に急いでなどいないから普通に歩いて向かった。


 街の入口近くにいるトーマスの近くに寄るとトーマスの方から話しかけてきた。


「カストロ様からおいらの頼みを聞いてくれって? さすがカストロ様だ。領民のことをわかってらっしゃる……」


 ウンウンと頷くトーマスはやけにリアルだ。ここがゲームの中だと忘れてしまいそうな程に。


「いや、実は最近セフト平原のモンスターの数が増えて困ってるんだ。おいらはここを離れられない。街中までは入ってくることはないけど、街道にまで蔓延っちゃって旅をするのも大変になるだろうって。良かったら数を減らしてきてくれないか?」


 ここでは別に選択肢はでなかった。まあ、メニュー画面でクエスト表を確認すると『セフト平原でラビィを倒せ』に変わってる。メインクエストを受注できたってことだろう。


「このまま進めばいいのか?」


 俺がトーマスの横にある石造りのアーチを潜ると視界が暗転し、次の瞬間にはだだっ広い緑の草が生え亘る平原に立っていた。


「おお、ここがセフト平原ってところか」


 どうやらフィールドが切り替わったようだ。くねくねと曲がりながら真っ直ぐと進む石造りの街道を、俺と同じように街から移動してきた人たちが駆け抜けていく。


 俺は左手に弓を持っていることに気づいた。どうやらこの『Lunatic brave online IV』ではバトルフィールドに入ると装備している武器が現れるようだ。


「そう言えばアンバーもPvPは出来ないって言ってたし、街中では武器を持てない仕様なのかもな」


『Lunatic brave online』もPvPは無かった。プレイヤーとは直接やり合う訳では無く、スコア等で競い合うことがメインだ。戦うべきは己自身ってゲームかな。


 俺は周囲を見渡すと、所々にモンスターを見つけることが出来た。モンスターにもNPCと同じように名前がフワフワと浮いている。クエスト表にも書いてある『ラビィ』という名もたくさんある。


「とりあえずあれ・・を狩ればいいのかな」


 俺は街道を少し離れた所まで移動してから狩りを始めることにした。見る限り『ラビィ』は兎のような小型のモンスター。そんなに強そうではないし、近くに寄っても襲いかかってくるようなこともない。危険は感じないが、数が多いと街道を歩くのも困難になるという設定なのだろう。


 実際はわからないが、確かにこんなモンスターがいたら馬車とかで街道を移動しにくいと思う。もしくはグチャグチャに轢き殺していくしかなくなってしまうだろう。


「さてと」


 俺は背中に背負っている矢筒から一本の矢を取り出してつがえた。とりあえず近すぎず、遠すぎない距離でぴょんぴょんと跳ねている一匹に狙いを定めて、矢を放つ。


 ドスッ!


 お、命中した。が、当然一発などでは倒れない。『ラビィ』は俺に気づいてターゲットを設定したようで、ぴょんぴょんとこちらに向かってくる。


「次だ! 次!」


 俺は再度矢をつがえて解き放つ。一歩ずつ後退しつつ、『ラビィ』との距離を保ちながら、それを数十回と繰り返した。


「こんなもんか……」


 数十本の矢が刺さった『ラビィ』は身動きを止めてからうっすらと消えていった。どうやら問題無く倒せたようだ。アイテムボックスの中を確認すると『ふわふわの毛』という物が増えている。どうやらこれ・・が『ラビィ』のドロップアイテムのようだ。


「しかし、火力が無い分手数はかかるな」


 一発のダメージは殆ど入ってないのだろう。だからこれだけ倒すのに時間がかかってしまった。恐らく再序盤の弱小モンスター相手に、だ。だが、逆に言えば、手数さえかければ倒せないことはないということもわかった。


 そして俺にとって朗報もあった。これは『Lunatic brave online』から同じ仕様なのだが、弓系統は通常攻撃している範囲であれば耐久度の減りが他の武器に比べて圧倒的に少ない。あと、矢に関しては本数に制限が無い。矢の装備自体は変えられるが、属性だったり攻撃力が上がったり、そういう部分にだけ影響がある。無限に射ることが出来るのはありがたい。


「まあ、『ラビィ』を倒すだけなら問題はないし、とりあえずクエスト達成する為に狩りますか」


 と、俺は矢をつがえて、次の『ラビィ』に解き放った。

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