第8話 店を見てみた
「さてと、とりあえずクエストを進めてみるかな」
アンバーと分かれた俺はパチンと右手の指を鳴らす。すると、メニュー画面が出てくる。『クエスト』と書かれた箇所をポンっと触れると、現在受注中のクエストを見ることが出来た。メインクエストとサブクエストと分かれており、サブクエストには何も書かれていない。メインクエストのところには『セフトの街の領主であるカストロに会え』とある。やはりあの門番のセリフはメインクエストの一部だったようだ。
「しかし、メニューを開くにも色々な動作が設定できるんだな。口笛を鳴らすとかならまだしも、スクワットとか腕立て伏せとか、ゲームでそんな動作するなんて有り得ないよな。まあ、『Lunatic brave online』の時から変わったところのある運営だと言われてたくらいだから致し方ないといえばいいのか……」
俺はアンバーと同じく、指を鳴らす動作をメニュー画面を開く動作に設定したが、その時に様々な方法があることを知った。簡単な動作から、なかなか重たい動作まで様々だ。バーピージャンプ100回なんて、間違えてメニューを閉じてしまった時の絶望感なんか半端ないだろう。とりあえず共通して言えるのは戦闘中に開くのはなかなか手間もあるということ。つまり、モンスターと対峙している最中にメニュー画面を開いて装備を変えたり、アイテムを使用したりは出来なくないけど、無防備になる瞬間はあるように思える。
回復薬を使用するとかならまだしも、出来る限り戦闘前に準備は整えておく必要があるだろう、と俺は思った。
「ここが、領主の館か」
俺はメニュー画面からマップを開く。今いる場所から一度大通りに戻ってから、その大通りを真っ直ぐ進むとカストロの館に着くみたいだ。大通り沿いには雑貨屋、調合屋、鍛冶屋と書いてある場所があるようだ。
「カストロの館に行くついでに店も覗いてみるか」
と、俺は大通りに向かった。
「まずは雑貨屋かな」
入口の一番近くにあるのは雑貨屋だ。俺は『ソロネ』と名前が浮かんでいる中年のおばさんに声をかけた。
「売るのかい? 買うのかい?」
すると、ソロネの返事とともに、目の前に画面が現れる。『購入』『売却』とメニューが分かれており、それをタップして決めるようだ。NPCとは基本的にこういうシステムで進んで行くのかもしれない。あくまでプログラムされた動作しかできないのだろうから当然と言えば当然か。
『購入』と書かれた方をタップすると、売っている物のリストが現れる。ざっと見るが、回復薬や強化薬がメインだ。この辺は『Lunatic brave online』の時と変わらない。ただ、当然、今はお金を持っていないので買えないのだが……売るものも持っていないので『売却』をタップしても意味は無いので今回はパスだ。
「次は調合屋だな」
次に俺は雑貨屋の隣にある調合屋に立っているエルフの女性に声をかけた。名はアンネというらしい。まあ、NPCだし名前に意味なんかあまり無いんだけど……
「いらっしゃいませ」
アンネがお辞儀をしながら返事をすると、『調合』と『分解』と書いてある画面が現れる。実際素材が無いので今は試せないが、調合に関しても変わりはなさそうだ。素材を集めて手数料を払えば様々な薬を作り出せる。雑貨屋で売っている物はここで作ることができる。素材を集める手間がある分、調合屋の方が安い。そして薬を分解すれば素材に戻せる。こちらも手数料がかかるのと、必要な素材と同量しか戻らないので需要は多くないが、他の調合の必要な素材が少し足りないとかでお世話になることはあるだろう。
「最後は鍛冶屋か」
俺は大通り最後の店である鍛冶屋の椅子に座っているドワーフの親父に話しかけた。こいつの頭上にも御丁寧に名前はふわふわと浮かんでいる。バルフトって名前らしい。
「何か用か……」
ぶっきらぼうな返事と共に、三度画面は現れる。今度は三つ『鍛冶』『修理』『合成』だ。俺の見慣れたこの三つ。『Lunatic brave online IV』でもこのシステムは健在だったようだ。『Lunatic brave online』には他のMMORPGに無かったシステムがあった。それが『修理』と『合成』だ。『鍛冶』は普通に素材を集めて装備を作るだけなので、他のMMORPGにもある。
だが、『Lunatic brave online』は装備にも耐久度があり、それが無くなると壊れてしまうのだ。この『修理』のコマンドを見る限り、それは踏襲されているだろう。『修理』は作るよりは安く、かつ使う素材も少ない。装備は使用することによって壊れてしまうので複数持ったり、この『修理』のコマンドで直したりする必要がある。ただ持てるアイテムの数も限られてるから、きちんと考えて持たないといけない。
最後に『合成』だ。これは好きなアイテムの見た目、攻撃力や耐久度、特殊能力などを組み合わせることが出来る。夢のようなコマンドだ。が……高い。というか
「ま、ざっと店はこんなもんかな。さて、カストロの館に行くか」
大通りにある主要な店に目を通した俺は、大通りの突き当たりにあるカストロの館へ向かった。
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