2022年大晦日のサンドイッチ

えんぴつ

2022年大晦日のサンドイッチ

ヘンリー・ダーガーじゃないけれど僕は神で指出毬亜が好きなんだ、といった君は動揺、<Vacillation>、揺れ動き、を隠せない。けれどね、世界は君が思ってるほどヤワじゃない。

指出毬亜は聖母マリアを指で愛撫する様な、そんな響きの美しい名前だけれど、ぼくの名前は根城響。小汚い響きが嫌いなんだ。小綺麗な音は好きなんだ。今度一緒にデートに行かないか。コラプションは避けられないさ、人ならね。でもコリジョンは避けられるし、上手く行けばコレクトをコレクトできるし、人々はコネクト出来るさ、所でコンドームは持ってきたわよね、と今度は別れまいと誓った彼女は小声で言った。僕は「今度持ってくるよ」そう答えた。彼女は笑った。そうなのだ。「雨の木は燃えないさ、決してね。」彼女は言う。彼女は男勝りな性格で強気な口調でそう言った。「今度また会おうよ。次はうまくいくさ」僕はそう答えた。返答はなかった。僕は眠い。なぜなら今日は(昨日は)眠れなかったし、今は午前8時20分。だからね、僕は衰弱死する様な気分で布団に潜り込む。ベンジャミン・フランクリンと同姓同名の作詞家の心地の良い音楽に包まれながら僕は彼女を思い出す。「彼女はauf Wiedersehen、アウフ・ヴィーダーゼーエンと言った、でもこの世界、星からは逃げられないよ!僕と鬼ごっこしよう、僕が鬼で、君が逃げるんだ。捕まえたら、やさしく笑ってね、頬にやさしくキスしてくれると心が温まるんだ」そう言って僕は眠りに落ちる。落ちる、落ちる、叫びながら・・・・

落ちる、落ちる、叫びながら・・・・

もしいま現代にインディアンが蜂起しても驚かないさ、例えボンヴァ族が中央銀行を破壊し、M氏が自決してもね。僕はそう誓いながら眠り続ける。続ける・・・

ナイアシンもイノシトールもセルトラリンもプロパガンダももう無いんだ。

少し経ち、ラジオからゆっくりと、やさしい音が鳴り始めた。

「アメリカ連邦のカリガリ博士はアフリカで珍しい鳥(bird)を発見しました。とても臭いです。とても臭いです。」「ただいま失礼な表現がございました事謝罪致します」「僕はカリガリ博士だ。謝らなくたっていい。人と失敗は切り離せないモノなんだ。帰るんだ。ゆっくりと、落ち着いて、ソレントへ」

温かいラジオだ。

これを聴いて眠り、夢に落ちると、指出毬亜とのやさしい思い出がrefrainする。「核兵器だって、細菌兵器だって、ナパーム弾だってダーティ・ボムだって化学調味料だってザナックスだってリーンだってマンブルラップだってRunningmanだって、人を傷つける為に生まれたんじゃないの、人も、モノも、おんなじ」そうマリアは言った。僕はこの言葉が忘れられない。僕は汚いギャングだったんだ。人殺しの。奴隷使いだったし、人一人の人生を台無しにした、メタファーじゃなくね。でもこの言葉を聴くと安心するんだ。梅雨だけど、蒸し暑くない心地の良い空気に包まれて紫陽花を見ているようなカタツムリになってのったりゆったりしているような、そんな夢遊病のような、ふんわりした感じが。はんなりと、じっくりと。

ピッと僕は少し涙を流してマリアはもういない事を思い出す。とても悲しいけど、万物は永遠じゃないのさ、それに僕が君を覚えている間は君は僕の頭の中に生き続ける、陳腐かな?けれど事実だ。君との思い出は物語にはならないし、させない。

物語は物心が付くまでのせいぜい5才ぐらいまでの、前頭葉がまだ未発達の時に視る幻だ、錯覚なんだ。

そういって僕はまた眠りに落ちる。落ちる、落ちる、叫びながら・・・・

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2022年大晦日のサンドイッチ えんぴつ @EnpitsuToybox

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