弁当箱に詰める愛はいつでも冷えない
レンジャー
第1話高校初めての関係が上下関係ってあるのか?
(何かしようかなぁ)
今までに彼女がいた経験が1回だけあるこの俺、佐藤光星。
勉強も体力もそこそこで唯一誇れるとしたら中2の時にそこそこかわいい来未(くるみ)を彼女にすることが出来たぐらいだ。だがそれも長くは続かず3か月ちょっとで別れてしまった。
そこからの俺の人生はと言うと流れで、家の近くにある偏差値55程度の高校に入り、クラスのみんなとは表面上の友達として面白くもない平凡な生活を送っている。
「そうだ!ちょくちょく自立の準備でもし始めるかぁ」
そう思った俺は大学こそはこの街を離れてもっと遊ぼうと思っていたのでバイトを始めようかと意識し始めるのだった。
@@@
「飲食系か力仕事かプログラムはできないし…あっ、そういやこの辺りに老舗弁当屋があったなぁ、明日学校の帰りにでも見てみるとするかぁ」
学校帰り
(えっとこのあたりだっとような気がするなぁ、あった、そうそう「恵美弁当」だ、募集ポスターでも貼っていないかなぁ)
『至急!アルバイト募集中 年齢自由 時給1000円~ 朝早くから有り力仕事もあります』
おっ、これいいんじゃね
「すいませーん。佐藤光星って言います。 ここでバイトしたいんですけどー。 誰かいますか?」
「おやぁ、もしかしてバイト希望の子かい。その制服は南高校の子かね、しんどいと思うけどそれでもやりたいかい?」
「自立のためにやってみたいです。親にはもうバイトをしたいと伝えているので大丈夫です。無理はしないのでどうでしょうか」
「おぉ、親にはもう伝えているのだね。じゃあわかったよ明日、水曜日の午前5時半に来れるかい?」
「はい。行けます」
「それじゃあ、これからもよろしくねぇ」
かくしてなんとなくバイト先が決まるのだった
@@@
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピッカチッ
(今日から人生初めてのバイトかぁ、緊張するな、まっ、頑張るしかないか)
「じゃあ行くか」
(どんなことするのかなぁ)
深呼吸してから入ろう
スー、ハー
「おはようございまーす。 昨日の佐藤でーす。」
「もう来たのかい。時間ピッタリで偉いなぁ。それとして真琴(まこ)はまだかい」
(?、真琴?、 誰だろう)
「おはよう、おばあちゃん 今日も真琴はギリギリセェーフ。いやー、危なかった~」
「もう毎日ギリギリなんだから。じゃあ作業の前に今日からバイトの佐藤光星君だよ、これから二人で弁当の詰め作業よろしくね。じゃあ私はもう戻るよ」
「....えっ、佐藤君?」
「高見真琴か?なんでお前がここにいるんだよ」
「え、だってここおばあちゃんのお店だからだもん。それにしても偶然だね!。まっ、じゃあこれから佐藤にバイトの先輩として詰め作業をビシバシ教えていくわよー!」
「て、手加減もよろしくお願いします。」
@@@
キンコンカンコーン
「佐藤返事しろー」
「はーい」
「佐藤が寝てるなんて珍しいなぁ。でも、寝るんじゃないぞ~」
(はぁ、疲れた、しんどい )
絶対これは朝が原因だ。
あの後も朝早いってのに力仕事ばっかり任せてきてもう体力ないぞ、高見のやつ懲らしめてやりたいよ。
まぁ、久しぶりの力仕事も少し楽しかったし、いいとするかぁ。
それよりも、あのおとなしくて優しい学級委員長の高見があんなところで働いてるとは思いもしなかったなぁ。
それも学校ではあんなにおとなしいのに、家ではあんなにテンションが高いんだなぁ。
高見は今まで先生たちの言うことを破ったことがなく常に周りの人たちが困っていないか見回っている、言わば真面目な性格なのだ。
でも、1つ抜けているとしたら勉強が苦手な所ぐらいだろう。
@@@
今日は木曜日。
恵美弁当は平日のみの営業なので、あと2日したらもう休みなのだ。
「おはようございまーす。本日もお願いしまーす」
「おはよう!今日もよろしくね!」
「あれ、おばさんは?」
「あ、言ってなかったか。おばあちゃんは前日に弁当の中身を作って置いておくだけだから基本的に朝はいないの。」
「そうなんだ。じゃあ俺たちは詰めていくだけってことか。てことは今まで詰め作業は一人でやってたのか?」
「うん、そうなの。だから佐藤君が来てくれてすっごく楽になったんだよ」
「う、うん」
「あれ、もしかして照れちゃったww。佐藤君も案外かわいい所あるんだね」
「い、いいからもう仕事に戻ろう」
「ハーイ! これからも一緒に頑張ろうね!それから、これから二人の時は光星君て呼んでもいい? その代わりに私のことも真琴って呼んでいいから!」
「別に俺はいいけど、高見の方はそれでもいいのか?」
「うん!別にいいよ。それと ま・こ ね」
@@@
このようにして。今まで本当の友達が居なかった俺はバイトの先輩と後輩という特殊な形で名前を呼びあう事になったのであった。
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