島春馬の場合

 島は、アクロポリス解体後、埼玉の中小企業で営業の仕事をしている。

 島が入社してから1年後、野久保春樹という男が入社し、島が一から仕事の事を教えていた。その内、野久保は島と打ち解けていき、一緒に食事に行ったりする仲となった。

 そして、普段から仕事熱心な島を野久保は尊敬していた。

「島さんってこの会社の前でどちらに勤めていたんですか?」

 ある日、野久保は聞いた。

「え…。うーん…。なんていうか公務員みたいな仕事してたよ」

 島は嘘をついた。島は自分が8人のスターだった事を上司以外には話していなかったからだ。

「公務員みたいな仕事って」

「いや、公務員ていうか自衛隊みたいな…」

「なんですか、それ」

 野久保は笑った。

「まぁ、とりあえず、そんな仕事なんだよ」

「色んな仕事ありますからねー」

 野久保は大人の対応をした。


 島は焦った。自分が8人のスターだった事をカミングアウトしたら野久保が信じてくれないかもしれないからだった。

 島達8人のスターは、一般人から見たらTVの世界の人間だった。それは、8人のスターは、TVドラマやアニメの題材になり、子供から大人までお茶の間の人気者だったのだ。


 17時になり、社員達が帰る頃、島は帰宅の準備していたが、野久保はやり残した事があるため、残業する事になった。

「野久保、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。まだ終わっていないんで」

「そっか。お疲れ」

 そう言って島は帰宅した。

 島が歩くと1枚の写真が落ちた。

 野久保は、それを拾い、島に渡そうとしたが、島はもういなかった。

 諦めて、自分の席に戻った野久保は、何気に写真を見た。写真には、島と7人の男女が写っていた。


 次の日、仕事が終わり、野久保は島に写真を渡した。

「ありがとう」

 島は写真を受け取ると野久保は勇気を出して

「あの!その写真の人達誰ですか?島さんの働いていた会社の人達ですか?」

 そう聞くと島は考え始めた。そして、野久保を見ると頭を下げた。

「ごめん!野久保!嘘ついた!許してほしい!」

「許すも何もなんですか?」

「俺、実は8人のスターだったんだ!」

「え⁉︎8人のスターってあの?」

「そう!その8人のスター!俺、この会社の前は8人のスターだったんだよ!黙っていてごめん!」

 謝る島を見て野久保は

「なんか自衛隊とかなんとか仰ってたんで、なんだろうと思ったらこういう事だったんですね」

「そうなんだ!」

「まさか、島さんが8人のスターだったなんて」

「この事は黙ってほしい!知ってるのは、部長だけなんだ」

 島はお願いした。

「大丈夫です」

「ありがとう」

 島はお礼を言った。

 それから野久保は島との秘密を守り、働くのだった。

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