第8話 反政府軍
「西方のエリアで野宿してたんです。」
「でっ、そいつらは何をしてたと言ってるんだ」
外から話し声が聞こえてきますよ。
なんか偉そうなので、リーダーさんですね。きっと!
「女はガイド、男は旅行者だと言ってます。砂漠をラバで横断する体験ツアーだと言うんですが、…。GPSすらも持っていないし、街を結ぶルートとはずいぶんと外れた場所で野宿していました。」
「確かに怪しいな。」
リーダーさんも、上品とはとても言えない荒くれこしゃべりですね~。
リーダーというより、やっぱ盗賊の頭っぽい!
「しかも男は東洋人なのに、流暢にザウラクの言葉をしゃべるんですよ!」
「ますます怪しいな。」
話し声がだんだん近づいてきますよ。
パターン!
お頭が入って来た。
体格のいい30代くらいの男の人です。
Tシャツが破けそうなほどの太い腕。
しばらくそっぽを向いて考え事をしてると思ったら、 keiたちのほうに振り向きました。
なんか割と顔立ちは好青年という感じ。
反政府軍のリーダーって言うから、なんかヒゲでも生えている四角い顔にもみ上げの怖そうな顔の人かと思っていました。
「こいつらか!」
「剣を持っていましたが、銃などの火器のたぐいは持っていませんでした。男は言うには冒険気分を味わうために、剣を持っていたと。」
「たった2人で剣を使って、なにか企てていたとは思えないな。」
「しかし、なにを考えているのかわかりません。」
「そうだな!」って感じで頷いてますよ。
リーダーは椅子にも座らず、いまはkeiたちの前に仁王立ちで立ってます。
上から目線(-。-;
イリーはずっとうつむいたまま。
「keiたちの冒険とおじさんたちは無関係なんだから、盗賊じゃなかったら早く返してちょうだい。」
「なんだその甘ったれた喋り方は!」
keiっリーダーににらまれ怒鳴られた。
この際、話し方なんて関係ないと思うんですけど(ぷんぷん)。
「お前男だろ!しゃきっとしろ。」
「怒鳴らないでよ!」って、心で叫んでやった。
「今の時代に、男の人がどうとか、女の人がどうとか、なんて言ってると誰にも相手にされなくなるよ!」
keiでも、イラっとすることもあるのね。
「どこのも者だか知らないが、ここでは男は男なり、女は女なりに生きているんだ!」
そこがどこであっても、keiが正しいと思お。
「じゃぁ男は男の人なりっていうのはどういうの!?」
「男はなぁ!たくましくあってだ。家族や仲間を守るために生きているんだ!」
「 keiだってそういう風に生きているよ。」
イリーがうつむいたまま頷いてくれた。
「じゃあ女の人は?」
「女はだなぁ。。」
リーダーさん、いきなりシャキッとしなくなったw
「女は?」
もう一度、聞き返してやったー!
朝ごはんを持ってきてくれたおばさんも、リーダーをチーってみてるよ。
「女の人は家を守り、家族や地域の安全や調和を育む。って言う感じゃないですか!」
keiがそういうと...
「そうだ!そんな感じだ!」
リーダーは逆上してる感じww
そして今度はイリーを観察し始めました。
リーダさんは何かに気づいたみたい。はっとした表情になった(・_・;
フードを被ったイリーの顔を覗き込むと、人差し指と親指でイリーの顎をつまみムリヤリ顔を上げさせました。
女スパイさんが捜査官に観察される感じ。
「おいおい、お前ら気がつかなかったのか!」
司令官さんはきょとんとしてるけど、おばさんはため息をついてる。
「こいつはイリア姫じゃねーか!」
「なんでこんなところに! 」と司令官さんはビックリ顔。
イリーはやっと口を開きました。
「だから言った通り友人とラバに乗って砂漠の冒険をしていただけよ。」
イリーったらリーダーを睨みつけてる。
しかもいつもと違う低い強い声になってる。
喧嘩をうってますね(・_・;
「イリーに無理を言って、砂漠の冒険に連れてきてもらったの、ごめんなさい。」
「お前はうるせえ!黙ってろ。」
「剣豪イリア姫さまが、剣を持って我々のすぐ近くで野営をしていたとなると...。」
えっイリーって剣豪たの!?
「いくら私でもkeiさんと2人で、あなたたちと襲えるわけがないじゃない。」
「そんな事はどうでもいい、十分に捕らえる理由になる。」
「理由をでっち上げて、強盗だけではなく、拉致監禁までするのね。」
イリーっすごい怖い顔!
「拉致監禁?お姫様がいらっしやったんで、お聞きしたいことがあるだけです。ゆっくりされていってください。」
なんか、すごい嫌味な敬語!
「なにをするかわからねぇから、腕まで縛っとけ!」
司令官さんもおばさんも、まぁ!って困り顔してる。
「ゆっくりしていただく前にだ。この男の性根を叩きなおしてやる。」
リーダー自ら、keiの足の縄をほどいたよ。
「外に出ろ!」
「keiさんに何をするの!」
イリーが今までにない大声で叫びました。
「おれ達は政治結社だからな。殺しはしねえよ!」
keiは縛られた手を引きづられていきます。
何をされるのか怖い。って思った!
叩かれたりするのかな?
初めましてイリアです
砂漠では道に迷い、野盗に拉致監禁されるし、 keiさんに迷惑かけっぱなしです。
命に危険が晒し迫るような事態はないはず!
なんだけど、ジェイクさんと別行動にしまったのは予想外でした。
まぁ、この人達は命まで奪おうとする様な人達じゃなさそうから、さして不安はありません。実際にこの野盗が殺人を犯した話は聞いたことがありません。
けれども、そんなことは何も知らないkeiさん、
たぶん怖くて仕方ががないじゃないかと思います。
見た目にkeiさんは、いつもと変わらないようすなんです。
乱暴な目に会わなければいいでんですけれど…。
性根を叩きなおしてやる!ってどういうことかしら、やっぱり乱暴されそうで心配です。
「政府やあなた方王族の方針に従っていて、坊っちゃんは両親を失い1人路頭に迷うことになったんだ。」
あの野盗のリーダーを、坊っちゃんですってw
司令官が昔の話をし始めました。
うっかり口を滑らせて坊っちゃんww
坊っちゃんの家は結構裕福な商家だったらしいのです。
ところが小麦の価格の安定化を図るための政府の政策で、みるみるうちに衰退したらしいです。
経営状態に頭を抱える父親。
そもそも精神的に脆弱だった彼の母親は、病の床に伏せるようになったそうです。
そんなある日、父親は車の事故で亡くなられたそうです。
あとを追うように母親が...
まぁ、それは悲しい話だけれど、悲運の理由を政府や私たち王族のせいにして逆恨みしている!
呆れてしまいます。
そんな話は聞きたくもない!
「すべてを失った坊っちゃんは傲慢な政府や王族に立ち向かい、同じく餓えに喘いでいる貧困と戦うことに誓ったんです。」
「だからそれが逆恨みだというの!ただやるせない自分の気持ちを他人にぶつけているだけのことじゃない!」
貧しい人を助けるなら、いくらでも方法あるし、ほんと盗賊くせに義賊のつもりいるんだから頭にくるわ!
「とにかくリーダーは貧しい者を救うために戦っているんだ!」
「貧しい者を救う、貧しい者のために、そういうの依存心っていうのよ。自尊心を満たすために他人を利用しているんだわ。それに家(国)に貧困はないから...」
おおうおうおうおう
ぴゅうぴゅうぴゅうぴゅう
なんだか外が騒がしくなりました。
「いったい何が起こったんですか?」
keiさんが乱暴な目にあっていなければいいんですけれど…
司令官も席を立ち窓の外を眺めています。
「喧嘩でも始まったか?まぁ、いつもの事。リーダーが止めるだろう。」
と、気にも留めていません。
「外にはkeiさんがいるんですよ!巻き込まれていなければいいんだけれど...。」
「大丈夫だろう。」
そう言われてもkeiさんのことが心配なので、椅子をひっくり返して転がろうとすると、司令官さんが腕以外の縄をほどいてくれました。
「ほんとうに何をするかわからない人なんだな。あんたは姫様といっても捕虜なんだぜ。あまり勝手はしない方がいい。」
そう言いながらも司令官さんは、私を連れて外の様子を見に出ました。
やっぱり!
keiさんは日本刀持たされ、困惑した様子で立っています。
「さて決闘だ!こいつの性根を叩き直してやれ!」
高笑いのリーダー。
まったく、何を考えているのかしら?
「keiさんやめて!」
keiさんの対面に立っている男性も日本人のようです。
やはり、日本刀を持っています
「決闘だなんて、あなたもやめて! keiさんは同郷の日本人ですよ。」
男はニヤニヤしているだけです。
「日本人というのは、学校で剣術や武道を習うそうじゃないか。」
「keiっ体育はおサボリだったので、全然やってないしっ。」
やれやれ!
切り刻んでやれ!
周りの男たちが、ぴゅうぴゅう!と口笛を吹いて、決闘を催促しています。
「keiさん、剣を抜いてはダメですよ。」
「おっと、その手には乗らねぇよ。相手に戦意を起こさせない!弱虫の戦い方だ。どっちにしろ勝負は始まってる。」
リーダーは私を睨んでいます。
「剣を抜こうが抜くまいが構わない、腕の1本も切り落としてやれ!」
ぴゅうぴゅう!
ギャラリーたちの声援が一段と大きくなりました。
男は剣を抜き鞘を放りました。
鞘は3メーターほど先に転がり落ちました。
keiさんはその様子を不安げに見ています。
私もどうしたらいいのか、かわからない。とにかくkeiさんを助けなければ!
2人の間に割って入ろうとした瞬間...
keiさんは刀の鞘を抜いてしまいました。
「あなたは死んでいる。」
と一言、keiさんが…!?
「なんだ、そりゃ!」
ほんとkeiさんったら、なにを言ってるのかしら!?
「もう、勝負はついてるじゃない!」
偉そうなセリフですが、keiさんの声は震えてます。
「はあ?」
男の方はkeiさんの言葉に呆れています。
「なんで俺が死ななきゃいけないんだ!」
ごもっとも!
「勝てる勝負なら、なぜ鞘を捨てたの。刀を戻す鞘を捨てたという事は、刀がさやに戻ることがない。つまーり、死!」
keiさん、一瞬の沈黙。
「あなたは負けを認めたということなんでっす。」
リーダーは大笑いしています。男も吹き出しました。
「じゃぁ、お前はその鞘をどうするんだ!」
keiさんは2-3m走ると、抜いた鞘を地面に置き戻ってきました。
「同じじゃねーかw」
keiさんは何も表情を変えず、刀を握りしめます。
「おー、やっぱり日本人は剣術を習ってるな。」
「keiの花吹雪抜刀流の太刀を受けるといいのね!」
確かにkeiさんは剣道のように剣を構えていますが、いや剣を持っている?
全く隙だらけです。
それに花吹雪抜刀流って何?
言葉とは裏腹。体中が恐怖で震えるどころか、固まってしまっています。
切りつけられても、逃げることすらできない。
やはりここは私が...
ところがkeiさんの走り始めました?
「じゃぁやだやだやだやだやだやだー」
リーダーはしばらく逃げ回るkeiさんを見ていると、腰のフォルダーから銃を抜き空に向けて引き金を弾きました。
パキューン
「逃げまわっていると俺が今すぐ、その足を撃ち抜くぞ!お前を見てると虫唾が走る。」
「だって腕を斬り落とされちゃうんでしょう。困るんですけど~。」
keiさんもリーダーを睨んで怒ってます。
「右も左もどっちも困る!」
「本当に撃つぞ!」
リーダーはとうとう拳銃をkeiさんに向け、撃鉄に指を載せましたました。
keiさんはまた逃げ出そうとして、つまずいた。
ころんで頭を打ったのか、動かなくなりました。
どうしよう!
呼吸はしているようです。脳震盪を起しているのかしら?
「こいつ3日分の食料を持たして、砂漠に捨ててこい!」
「それはまずいです。」
司令官さんが止めに入りました。
いまがkeiさんを助けるチャンスかもしれません。手近に武器を探しました。
ところが…
keiさんがすっくと立ちあがりました。
股を開き、剣を持ち、前かがみにリーダーを睨んでいます。
その姿はなんとも武将のようにサマになっていて、ちょっとびっくりしました。
いきなり、その場の空気も変わってしまいました。
「撃ち殺されても仕方がねぇ。久しぶりのチャンバラ、さっさと始めるか!」
えっ!
そして日本人の男のほうに向きかえります。
「その構えなら、肘はもう少し前だ。剣ももっと前に傾けて、剣先を下に構えろ!」
男は首をかしげてます。
「そのまま隙だらけの構えでいいのか、こちらから行くぞ!」
その瞬間!目にも止まらぬスピードで、男の剣がはじき飛ばされました。
男は驚きのあまりに立ちすくんでいます。
「さっさと鍵を拾え!」
リーダーも驚きのあまり席を立ち、keiさんを凝視しています。
盛り上がっていたギャラリーもしんと静まりました。
剣を打ち合う音だけがあたりに響いています。
あれが本当のkeiさんなの?
私の剣術では足元にも及びません!
「ほら、わきが甘い!今度は正面から行くぞ!」
この喋り方って、keiさんでは無いみたいです。
日本人の男は、肩で息をし始めました。
暑いのが弱いkeiさんも、ポタポタと汗があごから落ちています。
でも、息を切らしているようすはありません。
その時です!
keiさんの胸のあたりが、ピコンピコンと光が点滅しはじめました。
「せっかく面白いとこなのに、もうあまり時間はないな!とどめを刺すか。」
少し後ろに下がり刀を握り直した瞬間、keiさんは風が舞うかのように男の右脇を通りすぎました。
刀を持って立っているkeiさんの様子からすると、男のお腹を切り割いたようです。
男はうつ伏せでその場に倒れました。
沈黙が続きます。
私も恐怖で震え出しそうです。
「何も殺すことはないだろう!」
「 keiだって腕を切り落とされると言われたんだ。腕を切り落とすのと、殺すのとどれだけ違う!」
「腕を切り落とせなんて、冗談だ!」
リーダーも悲しみなのか、怒りなのか、恐怖なのか?
歯を食いしばり震えています。
「安心しろ、みねうちだ。そのうち目が覚めるだろう。」
リーダーはほっと胸をなで下ろす仕草をすると、椅子に腰掛けうなだれています。
「この男、筋はいいなぁ。楽しかったと伝えてくれ!」
そう言うとkeiさんは、へなへなとその場に座り込みました。
寝たの?
日本人の男は仲間に支えられて、どこかへ運ばれていきました。
ギャラリーもリーダーも疲れ切った様子で、座り込み沈黙を続けています。
keiさんは私の膝枕で、ただ幸せそうに眠っています。
ムニムニ。
「ベットに寝かしつけましょう。」と、司令官は声をかけてくれました。
keiさんって、解離性同一性障害?
多重人格者なの?
さっきのkeiさんは、計り知れない殺気に満ちていました。
けれども、その殺気を戦闘力にして、精神を安定させてもいたようです。
殺意を持ちながらも冷静なkeiさん、とても怖くて逃げ出したいような気分にさせられました。
頼んで助けてにきてもらっているのに、行く末が怖くなってしまったんです。
リーダーがやってきて足元の方から、keiさんをじっと見ています。
「縛りつけておきますか?」
「目が覚めたら牢に放り込んどけ。おやっさん拳銃持ってるかい?」
「いいえ」
「これを持っておけ、このイリア姫も剣術試合じゃ負け知らずの剣豪だ。気をつけろ!」
司令官はkeiさんと私の様子を見ながら、銃のロックをはずしていました。
「何が旅行だ!」
そう言い放つと、その場を立ち去りました。
司令官はリーダーの姿を目で追いながら、外した銃のロックをまたかけ直しています。
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