灯々の向こうには
@shou_asu
第1話
じんわりとにじむ汗に支配される。テレビでは連日最高気温三十九度だの叫んでいるのだが勘弁してほしい。ただでさえ暑いのに数字を叩きつけられると余計に暑い。扇風機やエアコンの力にあやかりたいのだが、あいにくエアコンは夏の到来とともにその命を絶ち、扇風機は熱風を顔に打ち付ける機械と化している。僕はベッドの上でただ時間が過ぎるのをじっと待っているしかない。スマホを眺めながら怠惰に過ごしていると、通知が来た。父さんからだ。
――お盆は帰ってくるのか?
ポンと投げられた一文に、分からないと気のない返事をした。父さんとのやり取りは億劫になって、つい薄めた飲み物をさらに水で薄めるがごとく内容のない文章を送ってしまう。
僕が中学生のころから片親だから父さんはなんでもないメッセージをよく送ってくる。この前なんてゴルフのコンペが自分の雨男体質のせいで三度目の中止を食らったと嘆いていた。大学一年生にいちいち話すようなことかと思ったが、無下にもできないのでその時は適当にあしらったような気がする。とにかく夏休みはひたすらバイトをしようと考えていたのでお盆に帰るのかは一旦保留にしておこう。まだ八月八日だし。
あー、時間がとける。なぜだか分からないけど気づいたら八月十二日になっていた。お盆に帰るのはやっぱり無理かもしれない。別に何をしていたわけでもないけれど、何もしないことすら今の僕には精いっぱいの「すること」なんだ。
ピンポーーン。
どうでもいい言い訳をしていたら呼び鈴が鳴った。無視したいけど大事な連絡の場合だったら困る。よろよろと起き上がりけだるげに返事をしてドアを開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。男はこの暑い中スーツを着て、顔には張り付けたような笑みがあった。なんだ、なにかの勧誘か商売にでも来たのか。誰か確認してから出るべきだった。迂闊だった……。
「突然、申し訳ありません。私はこのような商品を売っている者でして」
そう男が言うものを覗くとたわし、洗剤などの細々した雑貨やお供え物用の落雁や線香などこの時期らしいものが入っていた。これは面倒なことになってしまった。僕は押し売りに捕まってしまったというわけか。
「たわしや洗剤は普通のものなのですが、今回お勧めしたいものはこの蝋燭なのです」
男は普通の白い蝋燭を取り出した。
「は、はあ。いや僕は蝋燭なんて……」
「まあまあそう言わずに。なんとこの蝋燭はかの有名な法師の祈祷が込められた霊験あらたかな蝋燭なのです」
僕はあまりのうさん臭さに言葉が出なかった。二十一世紀のこの時代にこんな押し売りの人間がいるとは、天然記念物かもしれない。いや、脅してきてはいないからただの営業販売になるのか。そういろいろと話しているうちにも営業の男は説明を続けている。
「というわけで、この蝋燭には素晴らしい効果があるのです。詳しくはこの紙に書いてあるのでよく読んでください」
「いや、僕は買う気が全くなくて」
「そういうお客様のために今回はスペシャル価格でお届けします!」
テレビショッピングばりの流れの良さに僕はまたも圧倒されてしまった。
「通常は四本で千円なのですが……なんとお盆価格、四本五百円でお届けしましょう!!!」
そう男は押し付けてきた。僕はこのような押し売りは一度買ってしまうと何度も何度もやってくると相場が決まっていると知っていた。なんとかこの男を追い返そうと思ったが、少し変な気が起きた。ポケットを探るとちょうど五百円玉が入っていたのだ。一体いつ入れたんだろうかと考えているうちに男は催促をしてくる。
「お客さん、今を逃すと本当に損ですよ」
そう言われると本当に買わなきゃいけないという気もしてきたので、
「じゃあ、これで」
薄汚い五百円玉を渡してしまった。僕の手元には男から渡された蝋燭が四本あった。
「誠にありがとうございました。こちら一応の領収書です。押し売りとかと勘違いされるのはゴメンですのでどうぞ」
呆然としたままメモ用紙に書かれた簡易な領収書を受け取った。
「お買い上げ本当にありがとうございました。そちらの蝋燭はしっかり説明書を読んでから使ってください。それでは」
蝋燭に使い方も何もないだろうと僕は蝋燭に目を落とし顔をあげると男はもういなくなっていた。嵐のような男だった。僕はドアを開ける前によく相手を見なかった自分を憎んだ。
説明書を読んでみろと言われたからにはそれ相応のものが入っているのだろう。とりあえず開封することにした。手で強引に開けることはできず、はさみでシャキリと一発で決める。袋の中には男の言った通り四本の蝋燭と厚く折りたためられた紙が入っていた。破れないように一枚の紙に広げて説明を読んだ。
商品名「諦視蝋燭」商品のご購入ありがとうございます。この商品はお盆(八月十三日~十六日)にのみご利用いただけます。会いたい人(ただし故人に限る)や見たい景色(ただしかつてもしくは存在した景色)を蝋燭の灯がともっている間見ることが出来ます。
そう説明があり、その後には具体的な使用方法が載っていた。始めのところに赤い字でデカデカと「使用時間一時間厳守」とあった。その後に蝋燭を使う際には必ず時計を身につけてから始めてください。
なるほど使用時間を確認するために時計をするのか。ここまでのことを一つも信じていないが妙に納得してしまった。続きは面倒で流し読みした。
――こんな変なものを僕は買ってしまったのか……
どうせこの蝋燭はどこにでも売っているありきたりなものだろうと思ったけれど、説明書がアホみたいに凝っている。注意点も細部にわたって書かれていてむしろ恐ろしい。しかしほとんど変わらない毎日を送っている僕にはいいスパイスになるのではないかと思った。失敗して何も起こらなくても話の種にはなるし、万が一にも成功したらそれはそれで面白い。予定が決まったところで昼ごはんをまだ食べていないことに気がついた。午後と明日のアルバイトを頑張らなければと小さな覚悟を胸にコンロの前に立った。
変わらぬ一日半はあっという間に過ぎ去った。八月十三日午後五時ついにお楽しみの時間となった。家の中で火をつけるわけにもいかず近くの公園へ向かった。ベンチに座り周りに誰もいないことを確認した。蝋燭の説明を読んだところ時刻も指定されており、それがこの五時であったというわけだ。僕は説明書に書いてあることを読み上げ、手順に従った。電子機器は壊れると書いてあり、しぶしぶスマホはベンチに置いておいた。
ライターでそっと蝋燭に近づけた。芯に火が灯ると、不思議な匂いでもするのかと勝手に思っていたがそういうわけでもないらしい。目を瞑り、階段や梯子などの上るものを想像しろとかいてあり、帰りもこれと同様にして戻ってくるようにとのこと。僕は右手の腕時計をしっかり確認すると目を閉じて梯子を想像した。昨日バイト先で電球交換させられたことが記憶に残っていたからだ。
目を閉じて十秒ほど経ったがなにも起こらず、やはり偽物だったかと目を開けようとしたそのとき目の前に梯子が現れた。これはおかしい。だって僕は目を閉じている。それなのに“眼の前”に梯子があるというのは大きな矛盾だ。僕は怪しみながらその梯子をゆっくりと上っていった。木製の梯子で足を乗せるとギシギシとなる。なにかに立てかけられているわけでもないのに梯子は全くバランスを崩すことない。特別運動神経や平衡感覚が良いわけでもない僕が何不自由なく上れている。つまり別の次元にいるのかもしれないと冷静に思った。下を見ると上り終えた梯子は霧で消え、上を見るとこれから上る梯子さえも霧の中に隠れていた。黙々と梯子を上り、次に手をかける段がないところまでやってきた。上り切ると一面塵や砂で溢れている場所に辿り着いた。砂漠とも言えるが、ここは無の世界ではないかと思った。空は青空ではなく真っ白、多分あれは雲ではない。なにもないのだ。次の手順があることを思い出した。このなにもない場所で自分の会いたい人や見たい景色を思い浮かべる、ただそれだけでいいらしい。右腕を確認すると後一時間で変わっていなかった。梯子にいる間は時間が流れないのだろうか。ふとそんな考えがよぎったが貴重な一時間であるためすぐに見たいものに意識を移した。説明書によると会いたい人物、見たい場所はそれぞれたった一度しか蝋燭で覗くことが出来ないらしい。だから今日までに四日間誰と会うべきかをよく考えた。もう二度と会えなかったはずの人たちに四回も会えるとなれば、僕は買い物上手だったのかもしれない。
さて、一日目はあの人に会おう。場所はそうだな……。記憶の中にあるその人の顔立ち、喋り方、どこに立っていたのか、ゆっくりと脳内に再現した。すると目の前の塵が集まり形を成す。空は突然青空になり、そうかと思うと屋根が出現する。何もない箱には棚、机、椅子へと砂が変わり見知った場所へと変貌した。僕は図書館の中に立っていた。僕の地元の図書館だ。僕の会いたい人もそろそろ登場するのではないかと貸し出しをする場所を眺めていると瞬きをした次の瞬間に彼はいた。
「先生!!」
図書館の司書の七里先生だ。小学校の図書館も兼ねていたので僕にとっては先生だった。僕に本を読むことの楽しさを教えてくれて、授業をサボったときもここで匿ってくれた。大学合格を伝えたいと連絡したときに亡くなったことを知ったのだ。
先生は僕の記憶の中の五十代くらいのままだ。ただ正確な年齢はよく分からない。無造作な黒髪や口髭も昔と一緒だ。
「本を借りに来たのですが……」
僕はありのままを全て話した。七里先生ならこんな突飛な話でも受け入れてくれると思ったのだ。先生は何も言わずただうなずいていた。僕の目に七里先生は最初からすべて理解しているようにうつった。この世界はご都合主義の塊のような場所ではないか。だがその方が僕にはありがたい。時間も限られているのだから。まずは大学に合格したことを話し始めた。先生はいつまでもにこにこと笑ってお菓子とコーヒーを用意してくれた。小学校のときは内緒だよと言ってお菓子だけを分けてくれた。なんだか先生に認められたようで少し嬉しい。その後も僕がひたすら話した。中学高校で苦労したこと、小学校の時から本は読み続けていること、手痛い恋愛をしたこと、全て先生は笑顔で頷きながら聞いてくれた。十年近くのことを話そうとし、気づいたら一時間が終わりそうになってしまった。
「先生、今日はありがとうございました」
「また会えたらおすすめの本を教えてくれますか」
先生はにっこり笑った。僕は満足してそれ以上は何も言わず図書館から出た。梯子を想像するとスッと現れた。下の様子は分からないが勇気をもって下りた。時計は六時の五分前をさしていた。間に合ったようだ。安心して下り続けるとあるところで足がついた。また何もない世界に来てしまった。ここで元居た場所を思い出せば終わると書いてあったのですぐに実践する。
目を開けるとそこは公園だった。日は暮れかかり、近くを通る人の顔もよく分からなくなってきている。蝋燭はまだ残っていたが息を吹きかけ灯を消そうとした。しかしなぜか消えない。大量の水をかけたところでやっと消えた。
まだ夢のような感覚に襲われたままだ。先生は僕の想像の中だったかもしれない。けれど無念を晴らせた。それで今日一日は満足だ。
翌日は寝過ごしてしまった……。せっかくの蝋燭を一本分無駄にしてしまった。朝から夕方までバイトが入ってしまったせいで泥のように眠ってしまった。試しに書いてある時間以外でやってみたが何も起こらなかった。ただ幸運なことに今日会おうとしていた人物から連絡が来たのだ。いや、ホラーなどではなく生きていたのだ。今日会うと決めていたのは高校一、二年生の時の友達で三年生になったときに音信不通なってしまったのだ。どんなSNSを使っても何一つ反応がなかったから、てっきりもう……と思っていたのだが今日連絡が来た。だから寝過ごしてしまったことも必然なのかもしれない。明日は絶対に起きていようと固く心に誓い目を閉じた。
三日目は何とかして起きていなければならないとコーヒー、エナジードリンクでカフェインを摂取した。そのせいで午後になっても目が冴える。一応、作戦は成功だ。午後5時に近くなると一日目のように公園へ向かった。ベンチに腰を掛け深呼吸をする。ライターのオイルが切れたのでマッチを擦った。手際よく火をつけ、今日も梯子を想像した。
二回目でもこの無の世界は慣れない。とても寂しい。まるで空っぽの冷蔵庫のようだ。あるべきところに何一つない。あるのは塵だけ。空虚な空間に心が支配される前に会いたい人――いや今回は動物――を想像した。すると塵に川が流れ僕の立つ場所は川沿いの草原になった。この太陽の位置、おそらく時間は昼の十二時頃だ。ここは地元の川沿いだ。舞台はこれで整った。後は待つだけ……。見渡していると遠くから一匹のラブラドールレトリバーが駆けてきた。
「ソラ!!!!」
叫んだ。僕はかつて飼っていた犬に会いたいと思ったのだ。人以外は大丈夫かと心配していたが、よかった……。今でも僕の家にはソラが産んだ犬が住んでいる。
ソラともう一度一緒に走り回ることを夢見ていた。亡くなる前の数年はすっかり年を取ってしまい歩くこともままならなかった。だから今日は一番元気だった時のソラを想像した。ソラは僕に気づくとはしゃいでとびかかってきた。僕も気分が高まりひたすら遊んだ。顔をわしゃわしゃと撫でて、このために持ってきたボールで遊んだ。どうやら自分の体に接触しているものはこの世界に持ってくることは可能らしい。ソラと走っていて分かったことなのだが、どこまで行っても景色は変わらない。同じ川沿いのままだ。そんなことはこの喜びに比べれば別になんでもないことだろう。
ずっと遊んで疲れ果ててしまった。ソラも一緒で激しく呼吸をしている。そろそろ帰らなければと思った。しかしここには出口がない。外だから仕方のないことではあるが。こんな場所でも梯子は登場するのかと疑ったが、目を閉じて思い浮かべるとすぐに出てきた。下りながら実家の犬を思い出した。長い間会っていないわけでもないのに会いたい気持ちが少し強くなった。
明日でお盆は終わる。そして最後の蝋燭だ。夕方になって現れた金星はひときわ明るく輝き、僕は明日会える人を心に強く思った。
八月十六日僕は目を覚まし今日の予定を脳内に駆け巡らせた。なぜこんな日にバイトを入れてしまったのか一週間前の自分を憎みたい。とにかく五時までには何とかしなければいけない。気合を入れ一日を乗り切るエネルギーを心にためた。
僕のバイト先はレストランなのだが今日は休みの日ということもあってか特に客が多かった。あまりにも忙しく頭で考えている余裕はなかった。ほとんど反射で行動していたかもしれない。午後四時まできっちり働き、蝋燭を持って公園へ向かった。別にあの場所以外でもいいのだが、公園が何となく落ち着く。蝋燭を取りに一回家に戻り、公園にたどり着いたところで大変なことに気づいてしまった。時計を持っていない。バイトで外しっぱなしにしたまま来てしまったのだ。時計がなければ一時間経ったのか分からない。しかし今から取りに戻っても間に合わない。「やめる」「やめない」その二つで葛藤した。悩みぬいた結果、蝋燭に火をつけることにした。早めに出てくれば問題ないだろうし、一時間の感覚も三回目だから大丈夫だろうと考えたのだ。それに最終日の今日会う人は本当にどうしても会いたい人なのだ。
覚悟を決めてマッチを擦った。飛び散る火花はいつにも増して多いように思われた。今日も梯子で向こうの世界へ上る。塵と砂しかない無の世界へ向けて歩みを進める。到達したこの世界はやはり寂しい。ここを調査するだけで人生を一個分無駄にするかもしれない。それだけ広い。
僕は急いで想像をする。その人の記憶は薄れてしまって少ししかないが、それでも最大限頭を思い出で埋め尽くす。
世界が組み代わり懐かしい日へと戻っていく。夕方の……ここは実家のリビングだ。気づくとソファに腰かけていた。柔らかく落ち着く座り心地だ。僕はあの人を探した。きっとこの近くにいるはずだ。すると台所に人影を見つけた。
「母さん」
ぽつりと声に出た。僕は母さんに会いたかったのだ。会ってたくさんたくさん話をしたかった。立ち上がり、駆けていく。母さんも気づいたらしくこちらを向いて微笑んだ。
「ほむらじゃない。こんなに大きくなって」
愛し気なまなざしをこちらに向けてくる。僕は思い切り抱きしめたくなったが、子供っぽいところは見せたくなかったのでやめた。とりあえず、この状況を説明した。やはり先生の時と同じであっさり納得してくれた。僕は怒涛の勢いで話し始めた。限られた時間の密度を大きくしようとひたすら話した。母さんはうんうんと頷いている。
話しながら気づいたことが一つある。母さんも先生も自分から僕に語り掛けてくることはないということだ。僕が一方的に話してそれを聞いているだけ。やはり、なんでもというわけにはいかないのかと悲しくなった。それでも僕はひたすら話した。父さんとの暮らしは大変だったこと、二人で頑張ってここまで来たこと、話せるだけ話した。嬉しさと悲しさがごちゃまぜになり泣いているのか笑っているのか分からなくなってきた。そんな僕を母さんは優しくなでてくれた。懐かしい匂いに包まれた。思い出は嘘をついていなかったようだ。ずっとここにいたくなってきた。包まれるやさしさにすっかり僕は時間を忘れてしまった。
ふと家の中にある時計を見ると六時ぴったりであった。とっくに一時間過ぎていることに今気づいた。
「母さんごめん、もう行かなくちゃ」
「ほむらに会えて嬉しかったわ。お父さんと元気でね」
母さんは目に涙を浮かべ僕を送った。感傷に浸りたいのだが時間がもうないのだ。すぐに梯子を想像する。
――出てこない。
まずい、駄目だ。ギュッと目を瞑り梯子を想像する。それでも無理だった。
「どうしよう母さん!」
目を開けて呼びかけるがそこにはもう誰もいない。そこにあった僕の実家も母さんも、もういないのだ。ただ塵が砂が広がっていた。僕は地面を手で掘ってみた。しかしいくら掘っても塵、砂、塵、砂……。終わりがなかった。絶望しているうちにある変化に気づいた。砂がどこかへ落ちていっているのだ。蟻地獄のように地面に穴が開き始めている。本能的にここに落ちてはいけないと思った。走って逃げた。足がとらわれながらひたすらに走った。だが努力空しく蟻地獄に捕まってしまう。ゆっくりと下へ吸われていく。ここで死んでしまうのか。この何もない誰もいないまっさらな場所で。こうなるならもっと鍛えておけばよかったのかもしれない、あの営業を追い返していればよかったのかもしれない、実家に帰っていればよかったのかもしれない。後悔の念で頭の中がいっぱいになった。ついに口の中に砂が入ってきた。むせ返る。ああ、ごめんなさい。そう謝ることしかできなかった……。
目を覚ますと僕はベンチに座っていた。公園の時計は夜七時をしめしている。生きているのか? あの状況でどう助かったんだ?
そこで自分が砂まみれでビショビショになっていることに気がついた。雨が降っている。大雨が降っている。そうか蝋燭が消えたのか。僕はそれが理由ではないのかと思った。ベンチに置いたスマホを見ると父さんからまたあの報告が来ている。こんなときにも送ってくるのかよ。おかしくなった。笑いながら明日実家に帰ることを連絡した。
灯々の向こうには @shou_asu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます