【短編小説】キャンドル★オーディション

Yusuke Eigo

1章:オーディション

/ 美咲 オーディション会場へ移動中 /


美咲「オーディション会場は・・・あった、この会議室か。すーはー(深呼吸)・・・。よし、頑張るぞ」


/ ノックする音 /


寺田「どうぞー」


美咲「失礼します!」


寺田「こんにちは、荷物をあちらのテーブルの上に置いた後、中央の印の場所に立っていただけますか?」


美咲「は、はい!分かりました!・・・よいしょ」


寺田「・・・」


美咲「えーと、印の場所・・・よし。初めまして!美咲です、よろしくお願いします!」


寺田「はい、よろしくお願いします。私はキャンドル プロデューサーの寺田といいます。こちらは映像監督の尾上です。よろしくお願いします」


尾上「尾上です、どうぞよろしく」


美咲「よ、よろしくお願いします!」


寺田「ふふ、緊張していますか?」


美咲「は、はい。とても緊張しています」


寺田「大丈夫です。肩の力を抜いて、リラックスしていきましょう」


美咲「はい!ありがとうございます」


寺田「ではさっそくですが、自己PRをお願いできますか?」


美咲「は、はい!私は高校2年生の17歳、美咲です!ダンスと歌が好きです。アイドルになる夢があり、今回のオーディションに参加させて頂きました。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」


寺田「はい、ありがとうございます。」


尾上「・・・」


寺田「次は歌唱審査ですが、好きな曲を一つ歌ってください」


美咲「はい!」


寺田「何の曲を歌われますか?」


美咲「カントリーロードという曲を歌います」


尾上「なるほど。有名な曲ですね。ちなみに選んだ理由は何ですか?」


美咲「歌詞がとても前向きで、たったひとりでも恐れずに挑戦し、生きていきたいと思ってているからです」


寺田「良いですね。分かりました。ご準備ができましたら始めてください」


美咲「はい!ふぅ・・・よし」


寺田「・・・」


美咲「ひとりぼっちー、おそれずーにー。生きようとー夢見てたー。カントリーロード、このみーちー、ずっとー、ゆけばー、あの街にー、続いてるー、気がするー、カントリーロード・・・はい、以上です」


寺田「とても素敵な歌声ですね。表情も良かったです」


美咲「ありがとうございます!」


寺田「では続いて、当日課題の内容をお伝えします」


美咲「えっ?当日課題?」


寺田「あれ?事前にあることはお知らせしていましたが、聞いていませんか?」


美咲「えーと・・・すみません。きっと私が見落としていたんだと思います」


寺田「大丈夫です。それでは改めて内容をお伝えしますね」


美咲「はい!お願いします」


寺田「今回のオーディション当日課題は、そちらの収納袋の中身を組み立てていただきます」


美咲「これは・・・?」


寺田「テントです。組立式のドーム型です」


美咲「え?・・・テント?ですか?」


寺田「そうです」


美咲「あの、私・・・テントは組み立てたことがなくて・・・」


寺田「今回のオーディション参加者のほとんどの方が未経験ですね。けれど、皆さん勇気を出して挑戦してくれています」


美咲「わ、分かりました!やってみます!」


寺田「お願いします。ちなみに、作業中は動き、表情をカメラで撮らせていただきますね」


美咲「は、はい!」


寺田「制限時間は5分です」


尾上「寺田さん、カメラの準備は大丈夫ですか?」


寺田「えぇ、こちらはいつでも大丈夫です」


尾上「それではいきます。よーい、アクション!」


美咲「えーっと、これ、どうやればいいんだろう、こうかな?・・・あれ?長い棒が・・・上手く曲がらない」


寺田「残り4分です」


美咲「あーもう分かんない・・・こうなったら勢いで、えぃ!」


/ ポールが折れる音 /


美咲「あぁぁぁぁぁ!折れたぁぁぁぁぁ!」


尾上「・・・はい!カット!そこまでで大丈夫です」


美咲「すみません・・・」


寺田「大丈夫です、ちょっと強かったですね」


美咲「申し訳ないです・・・」


寺田「気を取り直して、次の審査に移りましょう。次はそちらにお願いします」


美咲「はい・・・これは?」


寺田「テントを支える5本のペグ、そちらを床面に置いているプラスチックブロックに等間隔に打ち込んでください。ハンマーは横にあるものを使ってください」


美咲「わ、分かりました」


寺田「準備は大丈夫ですか?」


美咲「はい!大丈夫です」


尾上「それではいきます。よーい、アクション!」


美咲「さっきの失敗を挽回しないと、えい!・・・あれ?棒が上手く刺さらない・・・」


寺田「一つアドバイスですが、床に対して垂直に打つと、上手くいきやすいです」


美咲「はい!垂直・・・垂直・・・せーの!えぇぇい!」


/ 天井にペグが突き刺さる /


美咲「あっ、手が滑った!」


尾上「ほう」


美咲「す、すみません!すみません!」


寺田「真上に飛びましたね」


尾上「真上に飛んだね」


美咲「すぐ抜きます!」


寺田「だ、大丈夫です・・・脚立が無いと取れないですね」


尾上「いったんカメラは止めよう、はい、カット」


寺田「はい、止めました」


美咲「すみません、私・・・失敗ばかりで・・・」


寺田「尾上さん?」


尾上「いい、すごくいい」


美咲「え?」


尾上「君の一生懸命取り組む姿に感動した!どう思う?寺田君」


寺田「はい監督、私も同じ意見です」


尾上「挨拶もハキハキできる、歌には伸び代があり、ルックスも良い。さらには天性のドジっ娘特性まで持っている。ぜひ、うちにきて欲しい」


美咲「え!?それってもしかして?」


寺田「監督、私はOKです」


尾上「寺田君、私もOKです」


寺田「分かりました!みささん、今回のオーディション、あなたは合格です」


美咲「ほ!本当ですか!?すごい!ありがとうございます!」


寺田「さて、今後のスケジュールについてですか」


美咲「は、はい!」


寺田「さっそく来週末からの登山およびキャンプ練習に参加していただきます」


美咲「と、登山・・・ですか?」


寺田「そうです」


美咲「あ、あのー。私、あまり体力に自信が無いのですが、大丈夫でしょうか?」


尾上「大丈夫、訓練すればすぐに慣れますよ」


美咲「そのうち、雑誌の撮影もあるんですよね?」


寺田「雑誌の撮影?」


尾上「うちではありませんよ?」


美咲「え?」


寺田「え?」


美咲「あの、途中から気になっていたのですが・・・」


寺田「えぇ」


美咲「今日はキャン&ガールの専属アイドルグループの新メンバーオーディションですよね?」


尾上「キャン&ガール?違いますよ?」


美咲「え?」

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