38、開門1

 僕たちの生活圏から出発して1週間。


 今回の旅の目的地である≪しゅ揺籠ゆりかご≫への目印、≪グリザナの門≫が見えてきた。広大な空間の壁面全てが≪種の揺籠≫に続く門になっている。


「ひえ〜、すごいです〜!」


マルが声を上げて門を見上げるが、身体を仰け反らせても上の方を視界に収めるのに苦労していた。


 門のそばに管理棟が建っており、僕たちはそこを目指す。


「門の先に何があるのか、わくわくしますね」


「僕も実際に見るのは初めてなんだ」


「エルさん、嬉しそう」


 ニコニコとする彼女を見て、僕は言った。


「君ほどじゃないよ」


 彼女は走り出す。


「エルさーん、早く門を開けましょう!」


 管理棟の入口の前で彼女が手を振っている。

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