竜族の姫様と強制結婚させられた件。貞操逆転した異世界に召喚された俺は、交際0日で姫様と番(つがい)になりました。童貞なので心の準備が……
クエル
第1話 アプリで約束したのにすっぽかされた件
「ふう……ギリギリ間に合ったか」
駅前のカフェの前で、俺は息切らしていた。
マッチングアプリで、デートの約束をした女の子と待ち合わせだ。
なんとか遅れずに到着できた。
先にあっちが来ているかなと思ったけど、まだ来てないみたいだ。
俺は待った。
待ち合わせの時間は、18時だ。
今は18時15分だ。
アプリを開くと、
《ごめん(><)少し遅れます!》
メッセージが来ていた。
……女の子は男よりも、いろいろ準備が大変らしい。
ここは余裕のあるところを見せないと。
《大丈夫だよ!ゆっくり来てね!》
すぐに既読になって、返信が来た。
《Ryuさんって優しい♡今向かってます!》
俺のアプリの名前は、Ryuだ。
デートの約束をした女の子は、Miaちゃんだ。
女子大の2年生らしい。
俺は、Miaちゃんの行きたいと言っていたダイニングバーを予約して、美容院で髪を切って、新しい服を買った。
今月のバイト代を全部使った。
Miaちゃんは、アイドルみたいなかわいい顔している。
ゆるふわの茶色の髪と、セーターから胸が大きく膨らんでいる。
写真を見た瞬間、俺は「いいね」してしまった。
俺みたいな陰キャ大学生が、こんなキラキラした女の子には相手にされないと思っていた。
即ブロックされるかも……と思っていたが、Miaちゃんからメッセージが返ってきた。
――あの時、めちゃくちゃ嬉しかったな。
Miaちゃんは見た目は陽キャぽっいけど、アニメやラノベが大好きなオタクらしい。
俺と趣味と合うから、めちゃくちゃ話が楽しかった。
……時計を見ると、18時45分だ。
あれから30分だったのか。
俺が再びアプリを開くと、
《このユーザーは退会しました》
は……?
俺は我が目を疑った。
もしかして、Miaちゃんにブロックされた?
《退会》と表示されているが、これはいわば運営の「優しさ」で、俺がMiaちゃんにブロックされたことを意味する。
どうやら俺は、リアルで会う前から振られてしまったようだ。
はあ……いろいろ気合入れて準備したのにな。
お店の予約もしたのに。
きっと俺よりスペックの高い男と、マッチしたんだろう。
俺はただの「キープ」だったんだ。
どうせ俺みたいな陰キャは、リアルで会っても振られるだけだよな……
俺はうつむきながら、とぼとぼ駅に向かって歩き出した。
ドンっ!
「おわ!」
「どこ見て歩いてんだ!てめえ!」
ぼんやり歩いていた俺は、人にぶつかってしまった。
ヤクザ風のイカつい男が、俺を見下ろしていた。
「あ……すみません」
「くそったれが!」
男が拳を振り上げた。
ヤバイ!殴られる!
腕で顔を覆ったその時――白い光に包まれた。
◇◇◇
「……姫様、召喚に成功しました」
「フレア、よくやったぞ」
頭がガンガンする……
俺はあの男に殴られたのか。
さっきの眩しい光のせいで、目が見えない。
「さあ、姫様。
誰かの声がする。
女の子の高い声だ。
「うん……つ……」
俺の唇に、柔らかいものが当たる。
ねっとりして、熱い……
これは……まさか?
「起きろ!私の番。初夜の儀式を始めるぞ」
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