第32話 アルカナバトラー大集合

「うん……かなりヤバいやつ。多分、この地域の人を全員集めたら、全員連れて空に飛び立つと思う……そうなったら、家族や友達と一生会えなくなるかも……」


 このまま竹乃姫を野放しにしていたら、友達も家族も全員知らない異星まで連れ去られてしまうらしい。


「だいぶヤバいね……急いで竹乃姫を討伐しに行かないと……」


「うん、倒して皆んなを取り返さないとね。所で……和香里のアルカナは何処にいるの?別行動?」


「それが……ゴコは何故かカードの中で眠りっぱなしだし、呪文カードも使えなくなってたんだよ……」


「アルカナと呪文カードが使えない……もしかしたら、世界のアルカナの『平穏な世界』の効果が出てるのかもしれない」


「アルカナ?」


「うん。この空の色もそのアルカナのイラストとそっくりだし、多分それで合ってると思う。『平穏な世界』が場に出た瞬間、既に場に出ているアルカナは全て手札に戻る上に、『平穏な世界』が出ている間は道具以外のカードを場に出す事が出来なくなるんだよ。呪文カードも使えないし、かなり嫌なアルカナだね」


「そっか……だからゴコはカードの中に戻った上に呪文まで使えなくなったんだ……武器や防具、道具は使えたのはアルカナの効果の対象外だっからって事だね?」


「うん。もしこれが竹乃一族の仕業だったとして、わざわざアルカナを封印してきたとしたら……もしかしたら、相手は既に和香里達の事を知ってて、計画実行に合わせてアルカナ対策をしてきたのかも」


「そうだとしたら、相手はかなり頭がいいんじゃ……あっ!おととい、あの武士と同じ顔した人がこっちを見てたんだよ!もしかしたら、前々からあんな感じで見られてたのかな……」


「竹乃武士が偵察……そこまで出来るって事は、和香里がアルカナを手にした時には既に竹乃姫は育ち切った後だったのかも……」


「そこまで分かるの?」


「うん、前に漫画で竹乃一族が出た事があって……」


 和香里と綺羅は竹乃姫についてあれこれ話をしながら、ようやく喫茶店クラッシュの真上まで来た。この辺りの人間は全て運び去った後なのか、周辺に竹乃武士の姿は全く見えなかった。


 武士達が居ない隙に、電線に気をつけながらそっと地面に降り、周囲を確認しながら喫茶店クラッシュにそっと入った。


「失礼しまーす……」


 店内には店主である石英の他に、上咲、オレンジの大きな帽子を被った謎の女の子らしき人、そして店の奥から慌てた様子の鳴が現れて計4名の生存者が。


「みんな!」


 和香里は大喜びでみんなに駆け寄るが……


「誰!?」


「侵入者か!?」


 忍者姿の和香里に対して謎の女子と上咲は驚き、手に武器を取り出して構えた。鳴は驚き固まり、石英は何故かニコニコした様子で忍者姿の和香里達を見つめていた。


「私!和香里だよ!」


「あたしは綺羅!石英さん、久しぶり!」


 和香里達は忍び装束を取って顔を見せた。


「和香里さん!綺羅さん!」


 2人の正体が分かった瞬間、鳴は満面の笑顔で和香里と綺羅に駆け寄った。


「今から和香里さんと綺羅さんを探しに学校に行こうとしてた所だったんです……!2人とも無事で良かった……!」


「翡翠も無事で良かった!」


「皆んな怪我も無くて本当に良かった……」


 3人は無傷で出会えた事を心の底から喜んでいた。



「上咲も無事で良かったよ!」


 和香里はそっと振り返り、席から立ち上がったままの上咲にも声を掛けた。


「才語、まさか初心者でポンコツのテメェも無事だったとはな……」


 上咲はそう発言するが、何処か安堵と喜びが入り混じった顔をしていた。どうやら和香里の事が相当心配だったようだ。


「綺羅、この人は前にアルカナバトルで勝負して以来、私のライバルになった上咲だよ。前にゲンシリュウに追われてた所を助けてくれたりもしたんだよ」


「アルカナバトルで勝負……って、もしかしてこの人もアルカナ持ってるの!?しかもそのアルカナを通して知り合ったって事!?漫画みたいで凄いじゃん!何やかんやで良い人だし!」


 綺羅は目を輝かせながら上咲を見た。


「そんな目で見んじゃねーよ……」


 綺羅に見つめられた上咲は気まずそうに目を逸らした。


「ま、実際コイツはただの『ファッションヤンキー』みたいなやつで、ただ口が悪いだけのビビリだからね!」


 上咲が気まずそうにしていると、オレンジの大きな帽子を被った謎の可愛い女子が会話に割り込んできた。


「あ゛ぁ!?テメェ今何つった!?」


「何?ボクは君がビビリだって言っただけだよ?」


 切れる上咲に対し、オレンジ帽子の女子は更に追い討ちを掛けていく。


「ちょっ!ちょっと待って!今は喧嘩してる場合じゃないって!上咲と……えっと、貴方は……」


「あ、僕はリツだよ。宜しく〜」


「この子は僕の知り合いのリツちゃんだよ。この人もアルカナバトラーでね、休みの日に僕のお店に寄ってくれるお得意様なんだ」


「リツさんは怪我した私を助けてくれたんです!朝、リスタルの絨毯にのって通学していたら突然絨毯が消えて落ちてしまって……あまりの痛みに気絶寸前だった所にリツさんが通りがかって、此処まで運んでくれたんです!」


「そうだったの……ええっ!?鳴大怪我したの!?」


「はい……今はカードのお陰で怪我は消えましたが、学校に向かうのが遅れてしまって……」


「いやいや!そりゃ高い所から落ちて怪我してたら学校行けないって!いや、本当に無事で良かった……リツさん、ありがとうございます!」


「いいよいいよ、同じアルカナバトラーだし助け合わなきゃでしょ!……で、そろそろ外のアレをどうするか話し合いしない?」


「あっ、そうだった!竹乃姫止めないと……そうだ!此処に来るまでに見てきた事を全部話すよ!実は……」

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