MVFA? 何それ
白亜の森で恐竜と楽しく戦った次の日。俺達は能力研究部へ顔を出した。今日来た目的は、宮杜さんが新しく作った魔法『逆さ
「んじゃ、改めて使ってみてくれる?」
「はい、まずは地面を水浸しにして……。『逆さ氷柱』!」
バキ!という音とともに、水たまりが針山に変化する。改めて見ると、なかなかに凶悪な魔法だなあ。
「
「あ、はい。そんな感じのイメージで魔法を使ってます。凍らせてそれを尖った形に形成して、最後に硬くしています」
「ねえねえ! 凍結と硬化って何が違うの?」
七瀬さんがそう尋ねた。見えている俺はともかく、第三者からしたらこの二つの違いは分からないよな。
「そうですね、凍結では固体にしつつも、本気では固めていません。粘土みたいなイメージですかね? そのあと針の形にして、形が定まったら硬化するって感じです」
完璧な説明である。宮杜さんが自分の能力を制御下に置けている証拠だな。
これは俺の推測に過ぎないが、魔法の習熟度には次のようなレベルが存在する。
1:自分の能力を自覚できる
2:自分の能力を発動できる
3:自分の能力を思い通りに発動できる
4:自分の能力がどのような構成なのか説明できる
5:魔法を構築する魔力の流れを完全に自覚できる
1はフォルテになったばかりの状態だな。「僕/私は○○の能力者だ」と自覚は出来るも、発動は出来ないという段階だ。
2では、自覚した能力を実際に発動できる状態だ。
3では、能力の強弱や能力の内容を指定できる状態だ。例えば桃花先輩は自分の魔法に追跡能力も付与して発動させるなんて事も出来ていた。ただ、それがどのように発動しているのか説明は出来ていなかった。
4が今の宮杜さん。自分の能力がどのように構成されているのか説明できる状態。能力との親和度が高いと、この域に至れると考えている。詳しくは不明だけど。
5は俺の能力だな。この域にありとあらゆる魔法を再現できるようになる。
「となると、やっぱり桜葉先輩がどうなってるか気になるんだよな……」
俺はあの人が複数属性使えるのではないかと疑っている。ただ、それが先天的に複数属性使えるだけなのか、それとも俺のように全属性使えるのかは不明だ。いつか確かめたい。
「? 桜葉先輩がどうかしましたか?」
「いいや、なんでも。それより宮杜さん、さっきの魔法だけど、硬化にもっと集中できる?」
「やってみます!」
◆
「赤木君、お疲れ~」
「今日のニュース観たよ。すごいねー!」
「今度おめでとうパーティー開こうよ~。あ、瑠璃ちゃんが帰ってきてからのほうがいいかな?」
休憩していると、桃花先輩、薫子先輩、金子先輩が俺のところへやってきた。
? 急に「おめでとうパーティー」とか言われても何のことかさっぱりなのだが。
「あれ、本人は知らない感じ?」
「カノジョちゃん達も知らないの~?」
「赤木君がMVFAにノミネートされたってニュースだよ~」
なんそれ? 宮杜さんを見ると彼女も首をかしげていた。
ただ、七瀬さんはその言葉に聞き覚えがあったようで、「ええ?!」と驚いている。
「え、本当ですか? え、ええ?! エイプリルフールとかじゃなく、ほんとのほんとですか?!」
「エイプリルフールじゃないよー! てか、今月はJulyだし」
「ほんとに知らなかったんだ~」
「えーっと、待ってください。MVFAって何ですか?」
「赤木君、知らないの? MVFAは『今年もっとも活動したフォルテに贈られる賞』なんだよ!」
七瀬さんがそう力説する。へーそんなのがあるのか。
「そういえば魔法杯で一年生の部はMVP賞が省略されたけど、それの事?」
「違うよ?! 魔法杯で一番活躍した、とかのレベルじゃないよ! 学生だけじゃなく現役でバリバリ働いている人たちも含めての一番。日本だけじゃなく、世界中のフォルテの中で一番!」
「ええ?! それってすごくないですか?! だって、魔物の巣で新発見をした軍人さんとかを含めての一番ってことですよね?」
七瀬さんの説明に宮杜さんは驚愕の声を上げる。
「うわあ、あんまり目立ちたくないのに……」
対して俺本人は頭を抱える。宮杜さん、さては忘れているのでは? この世界には、ヤバい奴らがいて、虎視眈々と君を狙っているんだぞ? 俺が目立てば、君にも悪影響があるかもしれないんだぞ……。
しかも、だ。これは俺しか知らない事、宮杜さんも紅葉さんも知らない事だろうけど、俺の名前が知られる事にも大きなリスクがあるんだよ。なにせ、この世界がゲーム通りなら……。
と色々と考えていると、薫子先輩が「あれ、本人は全然喜んでないー! なに、そんなに目立つのが恥ずかしいの?」と声をかけてきた。
はあ、まあ決まってしまったものは仕方がない。今更どうこう考えても仕方がないだろう。
「そういえば、ノミネートってことはほかにも候補者がいるんですよね?」
「ええ。だけど、私的には、赤木君が獲ると思うよ!」
「そうなったら、瑠璃ちゃんも玉の輿だねー!」
「いいなあ~。っと、そんな睨まないで。割って入るつもりはないから! あ、でも、サインとか欲しいかも~!」
「サインって。そんな芸能人じゃあるまいし……」
「いやいや、そのレベルのことだよ、赤木君!」
「私もサイン貰っておきたいです!」
「七瀬さんと宮杜さんまで……」
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