初動が終わり、中盤戦が始まる

 現在の俺達のポイントは660点。人数が多いからな、前に部活で模擬戦をした時とは点の入るスピードが文字通り桁違いだ。


 ちなみに他チームの点数はこんな感じ。


3組:660点

1組:245点

2組:125点

4組:60点


 4組が出遅れているのは、俺達「対4組部隊」が4組を本気で倒しにかかったからだな。というのも、事前情報では4組はそこそこ優秀と聞いていたんだ。だから、最初から本気で潰しにかかった。

 なかなか強力な魔法が飛んできて、俺も楽しかった。今回はギリギリのところで全部バリアで防げたけれど、下手したらこちらに被害が出ていたかもしれない。


 2組は125点か。1組とやり合った結果だろうな。確か2組は「中央防壁法」を選択したクラスだったよな? だから出遅れているのだろうか。


 最後に2番手の1組。詳しい状況は分からないが、おそらく2組に対して有利に事を運べたのだろう。



 おっと、次の敵が来たようだ。先ほどまで4組と戦っていた場所に、2組のメンバーが16人やってきたのだ。※D地点

 先制攻撃は向こうから。「撃てー!」という声と共に、多くの魔法が飛んできた。


「防げ! 『シールド』!」

「『アイスシールド』!」


「っち。厄介だな。伊藤、雷稲荷を引っ込めたら、遠くにいるオバケダコにも指示を出せるよな?」

「あ、ああ」

「じゃあそうしてくれ」


 伊藤は雷稲荷を謎空間に収納し、代わりにオバケダコを外に出した。俺はそれを受け取って、矢野さんに渡す。


「矢野さん、例の方法でコイツを向こうまで持って行ってくれ!」


「了解だよ~!」


 矢野さんはホバークラフト魔法を起動し、2組に高速接近し始めた。


「な、なんだ? 特攻か?!」

「撃て! 撃て! 死ねーー!」


 2組は急接近する矢野さんを警戒し、攻撃を仕掛ける。しかし……。


「すっご~い! ほんとに当たらない~!」


「あ、当たらない……! なんか上手く狙いが定まらない!」

「どうなってやがる、なんで攻撃が全部当たらない?!」

「まさかそういう能力か!? 敵の攻撃を逸らす的な?」

「いや、逸れてる感じじゃあなさそうだよな……?」


 何故か攻撃は彼女に当たらない。矢野さんはそのままの勢いで急接近する。実は矢野さんに魔法があたらないのは能力ではない。ただ、とあるカラクリを仕込んである。

 大前提として、矢野さんの能力は風魔法であり、ホバークラフトのように空中をスイーと進む事が出来る。彼女には何度も練習してもらって、360度どちら向きにも進むことができるようにしてもらった。その結果、彼女は真正面からずれた方向に進むことができる。斜め向きに移動している感じだな。

 そして、2組はそれに騙されたのだ。彼らは、顔が向いている方向を進行方向と勘違いしてしまっているのだ。それ故に、魔法を少しずれた方向へと放ってしまう。


 もちろん、これだけで完璧に避けられるわけではない。彼女はかなり細かく機体を制御して、迫りくる攻撃を避けているように見える。魔法実習でもかなりの時間を割いて練習していたからな。


 そして、一定の距離に近付いた後、彼女はオバケダコをひょいと敵の中に投げ入れた。


「な、何を投げたんだ? 爆弾か?」

「いや、アイテムの持ち込みは禁止のはず!」

「ってことは……」

「「「魔物?」」」


 オバケダコが地面に接触する直前、伊藤が指示を出す。


「『闇の中への誘い!』」



 バフン!



「爆発したー!」

「可愛い顔して、爆発しよった!」

「目が、目があー!」



 オバケダコを中心に、大量の墨が四方八方に撃ち出された。

 ちなみに、2組は「爆発した」と言っているが、別にこの魔法は爆発する魔法ではない。周辺10メートルを墨だらけにし、自身はその墨の中に潜るという技だ。塗った墨の中に潜ると聞くと某イカを思い浮かべるかもしれないが、あくまでオバケダコはタコだ。だから問題ない。(?)

 ちなみに、墨の中に完全に潜っている10秒間、オバケダコはダメージを受けない。逆に言うとオバケダコは10秒後には無防備になる。という訳で。



「今だ、かかれー!」

「うおおお!」


「3組が来たー! 見えてないけど!」

「だれか、水! 水で洗い落してくれ!」

『レイン!』『シャワー!』

「いったん退散だー!」


 無事2組の人数を大きく削る事が出来た。あ、オバケダコはちゃんと回収され、今は伊藤の頭の上で休んでいるぞ。


 こうして場所は二組の領地内へと移った。(E地点)


◆ 4組視点 ◆


「いや、なんなんだよ、アレ! 3組、強すぎないか?!」

「おかげさまで現在ドベだ……」

「取りあえずこのままじゃダメだよな。リーダー、どうする?」


「そうね……。私としては、3組を避けて2組を倒し、点数を稼ぐのが良いと思うわ」


「な! 3組への復讐は?!」

「このまま負けっぱなしは嫌だぞ!」

「そーだそーだ!」


「それには同感だけど……。勝てる?」


「「「……」」」


「もちろん、一矢報いることは出来るかもね。けど、点数を稼ぐのは厳しいでしょうね」


「「「……」」」


「今頃、3組は2組と戦っているはず。だから、ちょっと回り道をして、こんな風に攻め入るわよ!」


「了解!」

「流石リーダー、冷静だな。それとすまない、俺達冷静さを失ってた」


「大丈夫、まだまだ巻き返せるわ!」


 初動では最下位の4組。しかし、彼らは(というかリーダーは)冷静だった。彼らは3組へのリベンジも中央防壁法もすっぱり諦め、全く違う作戦に出たのだった。

 そしてそれは吉だった。彼らはこの後、2組と戦闘し、多くのポイントを稼ぐことになる。



 一方その頃、菊地や松田の所属する対1組部隊は1組を追い詰めつつあった。1組は慌てて逃げ出し、2組の領地内へと侵入した。(E地点)




 こうして一同は2組の領地内で争う事になった。2組、ドンマイ。




こちら、近況ノートに105話のイメージ図を貼っています。良かったら見てみて下さい。

https://kakuyomu.jp/users/TrueBlueFeather/news/16817330654791676949

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