フラグは回収される物
「いやあ、満腹です~」
「私も大満足! 来年も来よう、絶対!」
「ですね! それで、これからどうします?」
「うん、せっかくだし公園をぶらぶら歩こうかなって。赤木君も一緒に来てくれる?」
「是非一緒させてください!」
まずは一番近くにある「花の丘」をぶらぶらする。
「うわあ! すっごい綺麗ね~!」
「ですね。ごろーんって寝転がりたくなりますね」
「あーそれすっごく分かる!」
あ、もちろん花壇の中は立ち入り禁止になっている。花に囲まれて眠るという夢は叶わない。
「早く201層に行きたいですね~」
「201層……ってなんだっけ?」
「花畑のエリアですよ」
「そんなのあったっけ? ……あ、ああ~思い出した! 人食い花が襲ってくる階層だよね? とっても恐ろしいエリアって聞いたけど……」
「でも、花畑ですよ?」
「うん、私はもっと穏やかなお花畑がいいかな!」
201層~230層は別名『狂気の花畑』と呼ばれるエリアで、人食い花の他に、状態異常を付与する花粉を放つ花とか、ナイフよりも鋭い花弁をマシンガンの様に放ってくる花とかがそこら中に生えている。
この辺りになると、アイテムでごり押す事が必要になってくる(一応RTA走者はノーアイテムで突破してるけど)。そして、それにはお金(リアルマネーではなく、ゲーム内のお金)がかなり必要になる。
すると金策に走る必要が出てくる訳だが、ゲームだと効率がいい金稼ぎの手段が用意されていた。なお、これは裏技とかではなく公式が用意したシステムである。
ただ……、これってリアルだとどうなってるんだろ? 流石に「アレ」は使えないか? まあ、「アレ」が使えるようになるのは100階層以降だし、今は気にしなくていいか。
「あ、先輩! あそこ、写真撮影スポットみたいですよ」
「ホントだ! 私、撮ってあげるね」
「ありがとうございます、それじゃあ無難にピースで」
先輩にスマホを預け、俺は「逢魔湖公園」と書かれた看板の前でピース。
「もうちょっと右に寄れる? うん、良い感じ。それじゃあ、log3の9は?」
「2~ (パシャ!) 高校二年生って対数習うんですね」
「なんで慌ててくれないの?!」
「あはは……。最近習った事を自慢したいって気持ち、すごくよく分かりますよ。あ、写真どんな感じに映りました?」
「そんな冷静に分析しないで?! 恥ずかしいから! あ、うん。写真は良い感じに撮れたよ」
「おお、良い感じ! ありがとうございます! 先輩も撮ります?」
「じゃあお願いしようかな」
「はい、8の3分の5乗は?」
「え、ええ? に、2~? (パシャ)」
「困惑してる先輩の顔が撮れました」
「そんなの撮らないで?!」
「ちなみに、さっきの答えは32ですね」
「騙されたわ!」
その後、普通に笑顔の写真も撮った。
◆
「あ、一周しちゃいましたね」
「あ、ホントだ」
視界一面を埋め尽くす花を堪能していると、いつの間にか元居た場所に戻ってきた。いやあ、心が癒された。
「最後にここにも行きたいのだけど、どう思う?!」
「どこですか? えっと、『願いの泉』?」
=====
・願いの泉
逢魔湖に水を供給する川の一つ「願いのせせらぎ」の源流にあたる湧水です。ここにお祈りをする事で願いが叶うとされており、古くから親しまれています。
=====
パンフレットの説明を読む限り、ここからそう遠くない場所にある泉のようだ。添付された写真を見ると、すごく幻想的で美しい泉が映っていた。
「どこか懐かしさを感じる泉ですね。どこかで見たような……?」
「テレビでも特集されてたからそれで見たのかも?」
「ですかね?」
確かに、こういう写真ってありふれてるよなあ。
で、そういう場所の大半が「パワースポット」とか「願いが叶う」とかって紹介されている所を見ると、人間が如何に単純な生き物なのかっていうのを身に染みて感じるのだ。(←身も蓋もない)
「という訳で、ここに行きたいの! わざわざその為にとっておきのお供え物を持ってきたんだから!」
「? お金ではなく?」
「お金ではなく。とっておきのものよ、後で見せてあげる!」
「そう言われると気になりますね。楽しみにしてます。でもこの場所、距離自体は近いですけど、結構山の奥っぽいですね。先輩、その靴で大丈夫ですか?」
「へーきへーき! まあ多少は起伏があるかもだけど、迷宮で鍛えてる私達からしたら余裕よ!」
「そうですかね? そのセリフがフラグにならないと良いのですが」
◆
「はあ、はあ。ご、ごめん。ちょっと休憩させて……。はあ、はあ。え? きつくない?」
「ええ、時間は幾らでもありますが……。もう諦めて帰った方がいいのでは?」
「うう……。でもぉぉ~、せっかくここまで来たのにぃー!」
やっぱりフラグって回収されるんだなあ。高を括ってると、大抵こういう目に合うのだ。
「もう帰った方が良いですよ。まだそこそこありそうですし……」
「でも……。ねえ、何とかならないかな?」
「……そんなに行きたいんですか?」
「うん……」
「えー。じゃあ、肩貸しましょうか?」
「いいの?」
「俺は構いませんよ」
「じゃあ、お願いしてもいい?」
◆
「「着いた~!」」
どうにか先輩と一緒に泉に辿り着けた。
「綺麗ですね!! 苦労して来た甲斐がありますね」
「ね~!」
さて、何の願い事をしようかな?
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