20層の通常ボス
マロンマロンや噛みつき兎との戦闘を通じて、改めて前衛(七瀬さんと俺)、後衛(宮杜さんと神名部さん)の連携を練習したところで、早速ボス戦に挑むことになった。もちろん、通常ボスの方だ。
「白雪稲荷については、俺達のクラスはちょうど一限目に習ったところだし、復習は要らないかな? 神名部さんも大丈夫?」
「うん。私達は今日の三限目に学んだよ」
「オーケー。それじゃあ、早速行こうか!」
◆
雷稲荷は普通の狐サイズであるのに対して、白雪稲荷の体長は2メートルほどある。体当たりされようものなら、大けがを負ってしまうだろう。
「やっぱデカいなあ」
「すっごいモフモフだね……! あの毛に埋もれたい!」
「尻尾をぶんぶん振ってて可愛いですね」
「でも、あの子が喜んでるのって、私達と言う餌がノコノコやって来たからだよね」
「そういえば、白雪稲荷のドロップアイテムの毛皮って、布団とかコートになってるけど、ぬいぐるみの材料にも出来そうだよな」
「?! それは良いわね! あのモコモコを再現したら、絶対可愛いよ! ね、宮杜さんも神名部さんもそう思うよね?!」
「そ、そうですね」
「? 布団の方が実用的では?」
「あれ、二人とも乗り気じゃない?! 赤木君は? どう思う?!」
「え、いやあ。うーん。確かに妹にプレゼントしたら喜んでくれるかも?」
「でしょでしょ?! よし、狩るわよーー! って言っても近接アタッカーは活躍出来なさそうだけど」
バチバチという音と共に現れた白雪稲荷を見ながら、苦笑を浮かべる七瀬さん。
「うん、まあ。31層~40層は七瀬さんが本格的に活躍できるから」
「楽しみね!」
七瀬さんがギュッと拳を握る。うんうん、七瀬さんの活躍が今から楽しみだ。
「みんな。集中しないと、攻撃されそうだよ」
「ごめんごめん。宮杜さん、攻撃パターンに応じたシールドをお願い」
「分かりました!」
コーン!!
「吹雪が来ますね! 『アイスドーム』!」
かまくらのようなものを生成した七瀬さん。本当は風上だけに一枚の分厚いシールドを張るほうが良いのだが……。ま、大丈夫そうだな。
「吹雪の後、突っ込んでくるタイミングで睡眠、でいいかな?」
「そうだな。その方針でよろしく頼む」
ひょおぉぉ……!
ひょおぉぉぉー!
ひょおぉぉぉぉぉぉーー!!!
ひょおぉぉぉー!
ひょおぉぉ……!
「カウントするから、ゼロのタイミングで睡眠を宜しく。3、2……」
吹雪が止んだ。白雪稲荷が俺達の方へ走ってきた。
「1……」
白雪稲荷がぶつかるまで残り5メートル、4メートル、3メートル、2メートル……
「ゼロ!」「『眠れ』」
完璧なタイミングだったな。七瀬さんは宮杜さんを抱いてその場を退避していたが、神名部さんは俺のカウントダウンと自身の睡眠魔法を信じたのだろう。冷静に睡眠魔法を成功させた。
「ナイスタイミング! 完璧だ、神名部さん!」
「ありがと。赤木君のカウントダウン、凄くよかった」
ボスには異常状態が効きにくいとされているが、タイミングを見計らえば異常状態に嵌める事が出来る。そのタイミングとは「接近した状態である事」「ボスが攻撃中であること」「術者が移動していない事」である。
この三要素を満たす瞬間であれば、ほぼ100%の確率で魔法が成功する。なお、「睡眠耐性」「麻痺無効」というように、耐性を持った敵に対してはタイミングを問わず高確率で失敗するが、今回の白雪稲荷は異常状態耐性を持っていないから心配しなくて大丈夫。
「い、今の良く当てたわね……。怖くなかったの?」
「うん。正直怖かった。けど……」
「けど?」
「いざとなったら、赤木君が守ってくれる。でしょ?」
「え? おう、もちろん。危なくなったらシールドを張るつもりだったし」
「そ、そうなのね」(え、二人っていつの間にそんな信頼関係を築いたの? 宮杜さん、何か知ってる?)
(し、知りませんが……。ああいうの、羨ましいですね)
宮杜さんと七瀬さんがアイコンタクトしていたが、何かの合図だろうか? まあ、それはともかく。
「宮杜さん、どでかい魔法を準備してくれる?」
「はい!」
◆
「「倒しきった!」」
「やった!」
「おお~」
特筆すべき事無く、ひたすら「避ける」「防ぐ」「時々眠らせて、その隙に態勢を整える」を繰り返すだけで、勝利を収める事が出来た。
「よし、帰ったら四人で打ち上げでもしようぜ!」
「いいわね!」
「賛成です!」
「打ち上げ……楽しそう。こんなイベント、参加した事なかったから楽しみ」
みんな乗り気になってくれてよかった。にしても、神名部さんの今までの交友関係って……。うん、深く考えるのは辞めてあげよう。
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