いよいよ11層へ!

「今日は15層を目指そう!」


「おおー!」

「お、おおー?」


 今日のメンバーは七瀬さんと宮杜さんだ。とは言っても三人だけで攻略という訳ではなく、俺達の周りにはクラスメイト同士で作ったパーティーが何組もいる。合同パーティーって感じだな。

 ちなみに、ボスは4人までという制限があるので、残念ながら全員でレイドを組んで戦うことは出来ない。



 さて、俺達が居るのは無限迷宮の11層だ。10層まではだだっ広い草原だったのに対し、ここは山の中である。木々が生い茂っているため視界は悪いし、高低差があって歩き辛い。運動が苦手な人からしたら、辛いフィールドかもしれない。まあ、一年後にはみんな楽々突破できるようになっていると思うが。


「そうだ、攻略を始める前に、記念撮影でもしないか?」


「いいわね! 私は賛成。宮杜さんは?」


「も、問題ないです!」


「おっけ、それじゃあ……柏木、撮ってくれるか?」


「おう、いいぞ。後で俺らの分も撮ってくれ」


「勿論だ。じゃあ……そこはどうだ?」


 丁度、少し開けた場所があった。まるで「さあ、ここで休んで下さい」とでも言っているかのように。


「いいね! じゃあ……どうする? ピース? 敬礼? どんなポーズがいいかな?」


「ジャンプとかどうだ?」


「いいねいいね! インステ映えしそう!」

「で、ですが、上手く撮れるでしょうか……」


「動画で撮影したらいいんじゃないか? それで、後からいいフレームを切り出せば」


「な、なるほど。そうですね」


「じゃあ、柏木。頼む。 (あ、そうだ。……という訳なんだ。よろしく)」


「……了解だ。じゃあ撮るぞ~」 ピコン


 動画が回り始めた事を確認し、二人の元へ向かう。


「じゃあ、せーのでジャンプね?」


「オーケー! ジャンプ中のポーズは拳をつき上げる感じで――」


 と適当な事を話しながら俺は魔力感知を使う。うん、やっぱり来てるな。


「じゃあ、早速。私がせーのって言うね?」


「あ、ちょい待ち。二人とも、ちょっと向こうを見てみて」


「「? ――きゃああああ!!!」」


 二人が目にした物は、巨大なトゲトゲの球体だった。俺の身長ほどのサイズがある巨大な玉が猛スピードで二人に迫り……。



 バキン!!



 二人にぶつかる直前に、俺がこっそりと張っていたシールドにぶつかった。そのまま俺の魔法で一刀両断する。



「という訳で、11層に出てくる魔物の一種、『ビッグり』だ。突然転がってきて挑戦者をびっくりさせるビッグなくりだ。とげが刺さると痛いらしいから注意な。こういう開けた場所で一定時間留まってたら、転がってくるから要注意だ」


 と説明しながら、腰を抜かしている二人を引き上げる。


「あ、赤木君……? 分かってたの……?」


 フラフラと立ち上がりながら、七瀬さんが俺を睨む。


「あはは、まあな。スマン、まさかここまで驚くとは思って無くって」


「赤木君って割とSなんだ……。宮杜さんなんて半泣きじゃない! 赤木君、どう落とし前を付けるの?」


「ほんとすみません! orz」



 その後、何とか仲直りしまして。では改めて。


「んじゃ、改めてこの階層に出る魔物について確認しておこう。前の魔物学の授業の復習だな」


・ビッグり:突然転がってきて挑戦者をびっくりさせるビッグなくり。

・角兎:角が生えている兎。突進してくる点でボクサーチキンと似ているが、ボクサーチキンよりもすばしっこい。

・モモンタイガー:黄色と黒のストライプが特徴的なモモンガ。飛んできて噛みついてくる。なお、モモンガのくせに、滑空するだけではなく羽ばたいて上昇する事もある。

・雷稲荷:雷をまとった狐。近距離アタッカーにとって天敵とも言える存在である。


・茨のカーテン:所々に生えている薔薇。触ると怪我を負う。なお、魔物に分類するべきかは微妙な所。


「茨のカーテンの中には薔薇が咲いている物があって、その薔薇は香料に使われるから、採っておけば高値で買い取ってもらえる。こんなところかな」



 バチ!


  バチ!


 バチ!



「お、雷稲荷じゃないか。宮杜さん、やっちゃってくださいな」


「行きます! 『アイスアロー!』 あ、避けられた!」


「おっと、『カッター!』 宮杜さん、避けられても焦らず次を撃とうな」


「は、はい。すみません……」


「謝らなくていいって」


 こんな感じで雷稲荷は遠距離から狙えば簡単に倒す事が出来る。接近すると感電させられるので七瀬さんには他の魔物に対処してもらう。お、ちょうど角兎が現れた。


「あ、角兎! 私がヘイトを集めるね!」


 七瀬さんが身体強化をかけて角兎に急接近。メンドリサックで殴りつけようとする。


「っ! はあ!」


 角兎はそのスピードを活かして七瀬さんをひょいと避けた。そのまま七瀬さんを攻撃しようとするが、七瀬さんはその突進に合わせて拳を突き出した。


 キュー……


 頭を殴られた角兎はそのままダウン。兎肉(通常ドロップ)を残して消えたのだった。


「どうだ? ここに来る前は『兎を殴るなんて……』って言ってたけど、平気そうか?」


「うん、大丈夫そう。というか、あれって本当に角兎なの? 前に見た物と全然違うんだけど……」


 前に見たというのは、第一回の魔物学の授業時に見た角兎の事だな。


「ああ。野生の角兎はなんていうか殺気が溢れてて可愛くないよな。テイムされた奴は、何故か一気に可愛いくなるのに」


 テイムされたからと言って見た目が大きく変わる訳ではない。ただ、ダンジョンにいる角兎は魔物としての本性が出ているのか、全然可愛くないのだ。


「そうそう! なんていうか、今日見た角兎は『らなきゃられる』って感じがした!」


「だな。おっと」


 バキン!


「ビッグりも転がってきたことだし、先を進もうか」


「そ、そうね。びっくりしたあ……」




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